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第52話 戦果と魔法具と夢

「おぉーい! イグナート!」


 私が馬車の所まで戻ると、既に倒し終えたらしいオクト君がこちらに手を振ってくれた。私も振り返しながら、オーガの角を見せる。


「おっ! お前も角か! やっぱそーなるよな!」


 オクト君も切り取ったオーガの角を見せてくれた。……私が倒したのよりちょっと大きくない?


 劣等感を少し感じながら、二人してリュドヴィックさんに角を提出する。


「二人共倒したか……。角の確認は完了だ。この袋に入れろ」


 そう言われて、私とオクト君が袋を見る。それは革のような素材で出来た、両手で持てるくらいの大きさの袋だった。


「あの……これ、入らないんじゃ?」


 私が訊くと、リュドヴィックさんが教えてくれた。


「これは『魔法具』という種類の道具の一種だ。この中に入れると、本部の『管理部』に転送される。……以前教えなかったか?」


 圧が強いです……リュドヴィック先生。でも、教えられたっけ? 毎日が目まぐるしくて覚えてないです……。


「スミマセン……」


 私が謝ると、リュドヴィックさんはため息を一つ吐く。


「まあいい。……今後はよく覚えておくようにな?」


 『次はないぞ?』という圧を感じながら、私達は再び馬車に乗り込んだ。


 ****


 それから私達は幾度となく、魔物達と遭遇するようになった。

 その度に馬車を降りては戦い、戦果を袋に積めるというのを繰り返す。

 さすがに慣れてきた。……きたけど……こんなに魔物が多いなんて……。


 本当に活性化してるんだなぁ……と嫌でも体感させられる。


「魔物自体は雑魚ばっかだけどよー、こんなに多いんじゃアスケラまで後どれくらいかかんだよー! なぁ?」


 オクト君に話を振られて、私も頷く。


「そうだね。予定してた日数より、遅れそうではあるかな……?」


 そんな会話をしていると、リュドヴィックさんが口を挟んできた。


「間違いなく予定より遅れるだろう。……雑魚だからと抜かるなよ? 侮りが最悪の被害をもたらすこともある」


 冷静に、だけどどこか悲しげに言われ、私とオクト君は口をつぐむ。


 ……確かに雑魚だから……そう思い始めていたかもしれない。その結果を……私は知ったはずだ。なのに……。


 後悔と自分の浅はかさに落ち込んでいると、横に座っていたオクト君が私の左肩を軽く小突く。


「まぁ。俺も、お前もこれからつーことでさ! 頑張ろうぜ!」


 こうやって、元気付けてくれるオクト君が眩しい。


「うん……。だね!」


 そう返事を返すと、私達はまた静かに馬車に揺られるのだった。


 ****


 ……夢を見た。


 焔を纏ったが、数多の魔物達を焼き尽くしていく夢。


 その焔はどんどん強く、熱くなっていく。


 ――そして、俺の身体は……燃え盛る――。


「はっ!!」


 思わず声を上げてしまった。リュドヴィックさんとオクト君が驚いた顔でこちらを見てくる。


 なんの夢だったかわからないけど、凄く……変な夢だった気がするな……。


「イグナート大丈夫か?」


 オクト君が心配そうに声をかけてくれる。


「あ、うん……ありがとう」


 そう答えると私は顔を伏せる。もう考えないようにしよう……。


 ……また夜を迎える。魔物に警戒しながらの夜が――

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