結局一ヶ月かけて、私達はアスケラにようやく辿り着いた。
重厚な門の前で、門番さんにリュドヴィックさんがなにかを見せ、話している。私は馬車から顔を出す。
「なにをしてるのかな?」
訊くと、オクト君が答えてくれた。
「通行証出して、四人分の通行料払ってんだろ。ここはルクバトと違うから、顔パス出来ねぇし」
なるほど。っていうか顔パスって言葉、あるのね……。
私が妙な納得をしていると、話が終わったらしい。リュドヴィックさんが戻って来た。
「無事許可を得られた。中に入るぞ」
そう言って、リュドヴィックさんが馬車に乗り込むのを確認すると、ブリアック卿が馬車を動かし、ゆっくりとアスケラの中へ入って行く。
「ほぁ〜……すっごぉ……」
覗く景色に、私は思わず声を漏らした。
赤レンガの壁に囲まれた町の中、行き交う人々の全てが、いつぞやのアンドレアスさん達のようなとんがり帽子にローブを身にまとっていたのだ。
「さっすが、魔法都市ってだけはあるなー。みーんな魔道士ってわけかよ……」
横でオクト君が関心したように言う。
「ここではオレ達はイレギュラーだ。くれぐれも失礼のないようにな?」
リュドヴィックさんにクギを刺される。……気をつけなきゃな……。私はとくに。だってこの世界のことをあまり知らないからね……未だに。
申し訳なさに苛まれる私を乗せて、馬車は町中を進む。そして、噴水が中心にある大きな十字路を左に曲がり、停留場に止まる。
馬車から降りると、町並みが更によく見える。赤い屋根に白い壁の建物群。大小の違いはあれど、ほとんど同じ形をしていた。
ルクバトと違う町並みが新鮮だな……。
「ルクバトとは全然違っておもしれぇな!」
オクト君も同じ感想だったらしい。……そういえばオクト君はどこ出身なんだろ? 聞いたことなかったな……。ていうか聞いていいのかわからないな……。
そんなことを考えていると、リュドヴィックさんとブリアック卿が私達の近くにやって来た。
「まずは役所に向かう。そこで滞在許可をもらい、その後、魔道士団のアンドレアス殿と合流する予定だ」
リュドヴィックさんはそう告げると、私達を連れてアスケラの町を進み出した。道がわかるってことは、来たことあるのかな?
以外にも早く役所に到着した。どうやら停留場と近かったらしい。
アスケラの役所は、通りに面している……というより、通り全体が役所関連施設等、建ち並んでいるようだった。
なお、役所はシンプルに木製の両開き扉に看板がかかっているだけだった。
リュドヴィックさんを先頭に、私達は中へと入って行く。中は想像より広く、木製のベンチに受付がいくつもあった。
リュドヴィックさんはその内の一つに向かって行く。私達は近場のベンチに揃って座った。
……なんか普通に目立ってるよね……?
アスケラ市民の皆さんの好機の視線に晒されながら、リュドヴィックさんの手続きが終わるのを静かに待つのだった。