ベニーさんだかダニーさんだかに連れられて、私はリュドヴィックさん達が待機している部屋に案内された。
室内に入ると、オクト君が真っ先に駆け寄って来てくれた。
「イグナート! どうだった!?」
開口一番そう言われたけれど……私は戸惑いながら素直に答えた。
「いや……なんか、後から調査結果教えてくれるって。あっ……怪我は大した事なかったよ?」
アンドレアスさんに言われたことを伝えるとオクト君はホッとしたような、それでいてどこか深刻そうな顔をした。
「そっか……そう、だよな……いや、怪我が大した事なくてよかったぜ」
安心してくれたのはホントっぽいけど……えっなに? その複雑そうな感じ! 怖いんだけど!?
私が困惑していると、椅子に座っていたらしいリュドヴィックさんが声をかけてくれた。
「二人とも、座ったらどうだ?」
そう促され、私とオクト君が並んで近くのソファに座る。
そして、落ち着いたところで室内を見渡す。雰囲気も相まってか、会議室って感じじゃなくて、休憩室に近い印象だ。
ベッドはないけど、ソファが壁に沿って何個か並んでて、それぞれに小さなテーブルが配置されている。
私達とちょうど対面する形で、リュドヴィックさんが座っていて、ブリアック卿は更に端っこのソファに座っていた。
「あ、あの~……?」
私がおずおずとリュドヴィックさんに向けて、声をかけると、リュドヴィックさんは飲んでいたお茶から口を離す。
「なんだ?」
「町の状況と言いますか……被害状況は、どう……なったんでしょうか?」
正直訊くのが怖かった。だけど、訊かないといけない気がした。
「そうだな……町は半壊状態。死傷者については、正確な数はまだ把握出来ていないそうだが、相当数いるだろうとの事だ」
……そんな。
たったの数時間で、そんなに被害が……。
私が思わず絶句すると、みんなの空気も重くなる。それからは、誰一人として言葉を発することなく、静かにアンドレアスさんを待った。
そして、どれくらい時間が経っただろうか? すっかり日が暮れた頃に、アンドレアスさんがやって来た。
「諸君、待たせたのである。疲れ……は取れていないようであるが、早速身体調査の報告をさせて頂くのである」
アンドレアスさんの言葉に、全員が緊張した顔をする。もちろん私もだ。
咳払いをすると、アンドレアスさんが話し始めた。
「結論から言うと……イグナート殿は肉体的には一般的なエルフと相違ないのである」
ホッとしたのもつかの間、次の言葉に全員が驚愕した。
「しかし、魔力がおかしいのである。一人の身体に二人分の魔力が混じり合うように……いや、一人分の魔力を吸収する形で内在しているのである」
……はい? どいうことですか?
困惑する私をみんなが見てくる。そんな目で見られましても……。