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第66話 船の食堂にて

 船が出発して、数分後。

 ぐぅ~と情けない音がした。……私だ。


「あはは……。あの、お腹空きましたね……?」


 おずおずとそう言うと、みんなも頷く。あ、良かった。私だけじゃなかった……みたい?


「食堂に向かおう。確か、早朝から就寝時間帯まで開いていたはずだ」


 リュドヴィックさんの言葉で、全員で食堂へと向かった。


「おぉ~……中もすごいですね……」


 私は思わず関心してしまう。

 天井にはプロペラが付いた電球が並んでいて、そこに白い布がかかった丸テーブルとイスが等間隔に配置されていてる。その丸テーブルにはロウソクが置かれていた。


「ここが二等食堂だ。……一等食堂はもっと豪華だそうだ。さておいて、食事を摂ろう。ここはビュッフェ式だからな。席を取り次第、各自好きにするとしよう」


「了解である。では……あそこの席などどうであるか?」


 アンドレアスさんが指さしたのはちょうど中央付近の席だった。


「えぇ、そこにしましょう」


 こうして私達は席に荷物を置くと、荷物番をすると言ってくれたブリアック卿にお願いしながら、食事を取りに行った。


 ****


「うわぁ……すごいなぁ……」


 並ぶ料理の数々に、思わず生唾を飲む。あ、いい匂いもする。

 空腹にこれは効く。っていうか来る。


 けっこう大きなエビのボイルにソースがかかっていて、種類不明な魚のムニエルには輪切りのレモンっぽいもの、貝の多分ガーリック焼きかな? これも多分ハーブ? がかかってたりと、とにかく豊富で美味しそうだった。


 私は大いに悩みながら、一つ一つ選んで行く。だって、いくらかかるかわかんないからさ……。


 そうして、選び終わって席に戻ると、いつの間にやらブリアック卿の前には食事が置かれており……アンドレアスさんの前には超山盛りが!


「えっ……?」


 思わず声が出てしまった。だって……え? アンドレアスさんってこんなに食べるの?


「どうなされた? イグナート殿?」


 不思議そうにアンドレアスさんが訊いてくる。いや、どうなされたって……。


「イグナート。突っ立ってないで席に座ったらどうだ?」


「そ、そうだぜ! ほら、隣空いてるからよ!」


 リュドヴィックさんとオクト君、二人に促され、私は慌てて席に座る。それを確認すると、全員で恒例の食事前の挨拶をした。


 全員でサジタリウス神に祈りの言葉を発し、各々食事を開始した。一神教だと、挨拶は一緒なんだね……。思わぬ発見に驚きながら私は食事に舌鼓を打った。

 あ……めっちゃ美味しい!

 この一時だけは、癒しを感じても……いいよね?

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