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ぼくの夜明け
ぼくの夜明け
星野☆明美
異世界ファンタジースローライフ
2025年04月22日
公開日
1,368字
連載中
カンテラを持って夜明けを見に行こう

ぼくの夜明け

風が吹いていた。


ぼくはカンテラの火を消さないように用心しながら、天窓を閉めると、2階の窓から外へ出た。


階段があちこちに向かってのびている。


お隣さんは、もうベッドに入って寝息を立てている。


カンカンカンカン。


リズムをとりながら、階段を上がり下がり。


建物が密集しているから、地上の道を行くとかえって遠回りになる。


夜の静けさの中進んでいく。


みどりの髪はふわふわで風になびく。自分では見れないけれど、ぼくのひとみは瑠璃色だそうだ。


夜明けを見に行こう。


明日を迎えに行こう。


ぼくの知らない新しいことが待っているはず。


遠くの国では、一日中雨が降り、リウマチの王子はひざに蜂の針を刺して治したと伝え聞く。


ああ、だけどぼくは、この国から出ていけない。


しっくり馴染んだ世界に溶け込んで、新しいニュースが入ってくるたび一喜一憂し、新しい小説を書く。


本を書いて、誰かが書いた本を読む。


優しい本を書きたい。


ぼくを取り巻く世界が優しいみたいに。

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