その日は雨が降っていた。
肌寒くて、窓を閉めきり、暖炉の火に薪をくべる。
煙突から煙が立ちのぼり、どんよりとした空に消えてゆく。
ブランケットにくるまって、ぱちぱちはぜる炎を飽きることなくみつめていた。
童話集を読んでいて、気に入っていたフレーズが頭の中に再現される。
赤い布地を買いに行き、何種類もある赤の中からおひさまの赤を探し出すお話。さしずめ今のぼくだったら暖炉の火の色を探しに行くだろう。
少しうとうとしながら、無意識に、今度書くお話の題材を模索する。
ああ、あたたかい。
ホムサ・トフトを知ってるかい?
彼は、いつも電気虫のことを想像してたんだけど、だんだん想像の中の電気虫が成長してでっかくなっちゃって、制御がきかなくなるんだ。
でも、ここぞというときになって「お前なんか最初からいなかった!」って電気虫の存在自体を消しちゃうんだ。
彼はただ空想するだけの人じゃなくて、現実に向き合う強さも持っていた。
ぼくもそんな風にいたい。