第11話☆かいじゅうの話
出版社に行って、書き上げたお話の原稿を手渡した。
「ふむふむ、ふうん」
茶封筒から原稿を取り出して読んでいた担当さんが眼鏡をキラリ、と光らせた。
「きみ、もし怪獣がいたとするだろう?」
「怪獣ですか?」
唐突だな。
「そう、怪獣。なんでもやってくれて、きみの手伝いになる怪獣。欲しくないかい?」
「んー。いらないですね」
「ほう?なんで」
「ぼくは五体満足だし、今のところなんでも自分でできる。手伝いはいりません」
「でも、締め切り間際に、お話をつくるのを手伝ってほしい、って思ったことはないかい?」
「うーんん」
「お話を作ってくれる怪獣欲しくないかい?」
「いらない!」
「なんで?」
「だって、自分の書きたいことが書けないじゃないですか」
言ってから、自分で、そうなんだ、って思う。
担当さんはにっこり笑って、
「今回も良いお話できたね」とねぎらってくれた。
「そんな怪獣、担当さんは欲しいんですか?」
「いいや。だって、自分の存在意義が無くなっちゃうじゃないですか」
「じゃあなんで?」
「最近物語を書く意欲が無くなってきている作家さんがいてね、その人がそういう怪獣欲しいって。でも、乗っ取られるのはいやだって言ってたなぁ」
「ふうん」
「海外でコンピュータにお話を書かせてる国があるけど、いつか乗っ取られるかもなぁ」
「怖いですね」
「怖い怖い」
怪獣にご注意!