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第13話☆帰宅

第13話☆帰宅



日がだいぶ高く昇ったころ、自分の部屋の近くまで戻ってきた。

「どこへ行っていたの?」

お隣さんが洗濯物を干しながらぼくに気づいて聞いた。

「東の果て」

「東の果て?そこになにがあるの?」

「階段の終わり。その先に荒野が広がり、もっと先に海が見えた」

「そんなところへ何しに行ったの?」

「朝日を見に行ってきたんだよ」

「なんでそんなことしたの?」

ふあああああ。

ぼくは大あくびを一つ。

「ものすごく眠いんだ。夜じゅう歩いてたし、朝になってからももどってくる間ずっと起きてたから」

「ばかじゃないの?」

「ほっといてよ。とにかくもう眠くてしょうがないんだ。おやすみ」

「あきれた」

お隣さんは、理解できないといったていで、ぼくを見ていた。

ぼくは部屋に戻ると、火を消したカンテラを棚の上に置いて、脱いだ上着をソファに投げ出した。

「おやすみぃ」

ふかふかの布団にもぐりこむ。

やっぱりここが一番いい。

あの荒野を越えて、海を渡るとずっと遠くに異国の世界がひろがっているんだと、新聞に書いてあった。


かいじゅうたちのいる島に渡った少年は、そこで王様になって暮らすけれど、やっぱり自分の家がいいと、帰ってくる。

今のぼくの心境だね。

くう、すう。

寝息を立てて眠る。幸せなひととき。


「なにしてるの?」

見知らぬ女の子がぼくに聞いた。

「作ってるんだ」

「なにを作っているの?」

「階段。始めから終わりまで階段が続く国を作っているんだ」

「なんでそんなことするの?」

「ぼくだけの国。階段の国」

「じゃあ、あなたがこの国の王様なのね?」

「王様?そんなんじゃないさ。ぼくは作る人。お話を紡ぐ人」

「創造主?」

「想像主」

「空想の人?」

「そう。空想からいろんなものを紡ぎだす」

「じゃあ、私もあなたの空想から出来ているの?」

女の子はいつのまにかお隣さんに代わっていた。

「きみはきみ。きみだけの世界観を持って生まれてきたぼくの隣人」

なぜぼくはここにいるんだろう?

ぼんやり思って、きっと、お隣さんといっしょに過ごす時間のためにここにいるんだろう、と結論付けた。


「んー、なんか変な夢見ちゃった」

しょうがない。とりあえず空腹を満たして、仕事の続きを少しでもやっておかなくちゃ。

ぼくは大きくのびをした。


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