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3時

 3時。

 はい来た、脳がバグる魔の時刻、午前3時。

 もはや理性は退勤してて、魂だけが残業してる。

 このあたりから、俺の脳は「設定ジェンガ」を始める。

 積む。崩す。積む。崩す。もう床が設定のガレキまみれ。

 だがしかし、俺のゾーンがここにある。

 まってました、深夜の創作ハイテンションモード。

 速攻ユンケルを流し込み、脳内BGMは『交響詩篇エウレカセブン』。

 いける。今日は書ける。書ける気しかしない。

「恋愛小説」っていうか、もはや「社内ベンチャー立ち上げ記」みたいになってる気もするが、細けぇことはいいんだよ。愛も起業も、スタートアップだろ?

 気づけば、書きかけのワードにはこんな文章が。

『社内Slackの導入により、ふたりの距離が縮まる』

 ……すごい。エモすぎる。

 え? Slack?

 いやいや、恋愛小説にITインフラ?

「(ハート)おはようございます!(ハート)」って、DMで告白すんのか?

 スタンプ機能のせいで、告白も読みにくいじゃん。

「これは脈ありの絵文字? ただの業務連絡? なにこれ怖い」

 でも、いい。

 だって、仕事も恋も、コミュニケーションが命。

 社内にSlackが導入されることで──

・メッセージのやり取りが増える

・会話のハードルが下がる

・そして、恋が生まれる

 革命だ。

 Slackという名のキューピッド。

 チャット欄がラブレター。

 ステータスが「離席中」でも、心は君の隣に。

 俺は震えた。恋の効率化。まさに業務改革。

 カイゼン is LOVE。

 この作品、Slackに協賛してもらって、セールスフォースと一緒にドラマ化して、主演はもちろん俺(脳内キャスト)、相手役は……こさかな。

 いや、そこだけは譲れない。

 ここまで妄想して、ふと気づく。

「──あれ? 俺、恋愛小説書いてたよな?」

 もはや恋は付加価値。

 主軸が業務効率化になってる。

 どこで俺、道を間違えた?

 けど、止まらない。

「社内恋愛 × DX推進」って、もしかして、次の文学賞のトレンドじゃね?

 ──おい、俺。いまならまだ引き返せるぞ?

 いや、もう遅い。

 この世界線で、俺は“ITベンチャー恋愛作家”として生きていくんだ……!


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