目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第4話 長慶、起死回生の兆候?

 長慶が警察に連行され警察署に連れられてからもう16:00を過ぎた頃、ここに来るまでに押し問答があったものの結局留置所に入れられた。

ここから警察が捜査を開始し、身元を特定するまで意外にも時間がかからなかった。

というのも、長慶が転移してきた13時30分頃と同時刻、滋賀県の方でも何か騒がしいらしく……?


「おい聞いたか? 今日はどうも妙な事案が横行しているらしいぞ」


「妙? なにがです?」


「聞いて驚くなよ? 自らを足利義輝あしかがよしてると名乗る犯罪者が突然現れたらしいんだよ」


「……誰かは分からんですが、足利というと将軍家ですよね? 血筋は残ってないはずでは?」


「まあ俺も実は誰かは良くは分からん。だが、簡単に聞くと三好家とやらの家臣に殺されそうになったらしい」


「ふぅんむ……聞いたことないですねその家。で、罪状はなんなんです?」


「登録無しの刀を無数所持として銃刀法違反で逮捕しているとのことだ」


「……なぜそんなにあるのかは知らないですけど、そういうことならーー」


 という警察2人の話が長慶がいる檻の前を通ってそれが噂されていることがわかった。


「なにぃい?! 足利家じゃとぉ? おぉそこのものよ、その話を詳しく申してはくれぬか?」


「ひぃ! びっくりしましたよもぅ……」


 弱腰そうな1人の女性警察官が身体を震わせて長慶の声に反応した。

そのうえで顔をこちらに向けてくる。

もう1人の警察はそうそうに居なくなったらしい。


「それで、なんでしょう……?」


「先程、足利義輝がどうとかいっておったな?」


「えっええそうですけど……。それがどうしました?」


「どうしたもこうしたもあるか! そやつは私が近江国の坂本に追放したはずじゃ!あやつと戦をしたのも弱った幕府に成り代わって強いまつりごとをしく為だったのだ」


「近江国……というと話の流れ的に滋賀県の話ですかね? 足利家はよくここに逃げてくるという話は聞いた事ありますが……」


ーーウチは歴史あんまりなので……。


 そう言って、"それでは……"なんて申し訳なさそうに口にしながら去ろうとする。

しかし、長慶はまた差し止めようと身体を乗り出す。


「まっ待つんじゃおなごよ。ここまでで私の知らぬ事柄が多すぎるんじゃ」


「去る前に、今が何年か教えてはくれぬか?」


「まっまぁそれくらいなら……」


____今は令和7年……つまり2025年ですよ!


「れっ令和じゃと?!私のよく知る 永禄ではない……じゃと? 令和などと聞いたことはないぞ。しからば……」


 ーー未来に来た。

その認識も言葉も出てくるはずは無いものの、自分なりに未知の時代に来てしまったのだろうと解釈した。

文化を大事にしていた文化人ならではの理解の速さである。

……まぁ、分かったところで現状は対抗策ほとんどないけど。


「それじゃあ今度こそ……失礼しますぅ」


 また申し訳なさそうに言ったかと思うと、長慶の前から居なくなった。

身を乗り出した後で気づけば元の床にに座り込んでいた長慶は、こうも見た事がないもの続きであることの理由付けが出来つつあることに、納得しきれないでいた。


「足利のものがまだおるのも変な話じゃが、そもそも私は何故このような時代におるんじゃ?」


「本来なら黄泉にいって今頃地獄にでも落ちてるとおもぅてたが……わからぬなぁ」


 長慶は熟考に熟考を重ねるような人物だったとされていて、何事も慎重に決定を下していたのだという。

理があれば世を正しい姿にできて、それがあればこそ民をも安心させれるという意味を込めた理世安民も、きっとその慎重さから考えられた政策なのだろう。


「じゃが、あの足利家が京に居ないのであれば……、今なら京に戻ればまた政権を取り戻せるやもしれぬ。こうしてはおれん、何とかして牢からでなければ」


 政策に従うと言った手前、脱獄を企てようとする。

しかし、すぐに諦めた。

よくよく考えれば自分のいた時代では無いのだから自分の知識が役に立つはずは無いよな……と。

実際コンクリートで出来た床と鉄で出来た文字通りの鉄格子。

長慶がいた当時の牢といえば、鉄製ではなく木製だったのだから仕方ない。

とするとたどり着く結論は必然的だった。


「……大人しく、放たれるまで待つとするかの」


 無駄にあがかずに解放されるのを待つことにした長慶。

むしろ、見知らぬ時代の物を見て触れて楽しむ方向性に切りかえたのだ。

とはいえ、長慶は先の警察らの会話は好機とも見ていた。


「しかし……あやつらの言ってたことが偽報などではなく誠だとするなら、私は近いうちに放たれるやもしれぬな」


「もし、この日本に私を知るものがいれば……の話じゃが」


 ここまでの過程を振り返り、まぁどうせ居ないんだろうなあとほとんど諦めの気持ちでいた。

しかし、その諦めの気持ちも、留置所に入れられてからわずか3日も経たずに変わることとなる。


「三好長慶さん、でしたね? 釈放ですよ。あなたの身元が分かりましたから」


「待ちわびたぞ、この時を。飯はあれほど美味であったのが惜しい程じゃがまあ良い」


 誇らしげな顔を浮かべながら、部屋の外を出……ようとして鉄格子に顔をガンッ!と思い切りぶつけた。

そう、夢である。


「……まぁ、そんなに私の思うようには進んではくれぬか……」


 頑張れ長慶! 起死回生の兆しは見えているぞ! って応援してくれるものも、きっとどこかにいるかもしれない……。


ーー三好長慶? 誰ですそれ?

ーー学校では習わないし聞いたことない。

ーー徳島に三好市って場所はあるけど知らないなあ。


 今の長慶が聞けば、かなりショックを受けるだろう発言、あと何度聞くことになるのだろうか?

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?