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第15話 いざ阿波国へ

「さて、着いたのはよいが……随分と様変わりしたのぉ……」


 あれから時間をかけてたどり着いた二条御所。

相変わらず幕府がいた事を表す豪華絢爛な佇まいをしているところは変わらなかったが、長慶にとって知らない戦闘跡だらけで哀れに変わり果てたと独り言を呟く。


「さて、この目でしかと見納めたところで、阿波国に参るとしようかの……」


 とりあえず見るだけのつもりだった長慶は、直ぐにその場を立ち去った。

そうして、目的の阿波国……現在で言う徳島県に足を運ぶ事に。

京都から徳島県に行くには1度大阪に行ってから高速バスに乗るのが最短だが……大阪に帰った辺りで問題が起きた。


「バスって、どうやって乗るんじゃ?」


 ある程度の公共の乗り物の乗り方は勉強したはずだが、乗り方というより存在の勉強をメインにしていたことを忘れていた長慶は、バスターミナルで乗車券を買えばいいということを忘れてしまっている。


「ええぃ構わん。あの建物がそれらしいものに見えるからいってみるとしよう」


 電車で揉まれた長慶は、そういえば晴元から渡されていたスマホの存在を思い出した。

けど、それを使う前に目の前にあった謎の建物に入ることに。

そこにあったものは、運良くバスターミナルだった。

ここにいる案内人に聞けば全て解決することは長慶も知っていた。

なおここは阪急大阪三番街、大阪の梅田に位置するバス停のひとつで、徳島県から高速バスに乗って大阪にくると基本ここを通る。


「いらっしゃいませー。どこに向かわれますか?」


「阿波く……徳島県に向かいたいと思っておる」


「わかりました〜徳島県ですね〜。バス停はどこでしょうか?」


「バス停……じゃと……?」


 目の前で応対してくれる女性案内人の手に誘われるがままに受付窓の隣に置いてある時刻表と各停車のバス停の名前も記されていた。

しかし、長慶からすればどこに降りれば芝生城に帰れるのか、そもそもどれが徳島県行きなのか全く分かっていない。


「すまぬ、どれが徳島県行きなのじゃ?」


 阿波国と言いかけた言葉を徳島県と言い直したのがまだ残ってたものの、違和感が残る。

そして、案内されてもなおどれがどれなのか分からず聞き返す。


「徳島ですと、鳴門西・板野・道の駅いたの・上板・土成・阿波・脇町・美馬・三好・阿波池田バスターミナル・井川の順番でバスが停車します」


「ふぅむ……。では、三好にて降りるとしよう」


 なぜ三好にしたかと言われれば、自分の苗字だからというのもあるが、地元だからというのもある。


「分かりましたー。片道でしたら4800円ですー」


 値段を言われ、貰った財布から1万円札を取り出し支払いを終えた。

その後、乗車券を貰う。

長慶が乗るバスの時間は、17:30。

最終便1個手前くらいの時間である。


 そうしてバスが来ていよいよ向かうは徳島県。

道中はこの暑くなりうる季節には優しいクーラーが聞いた車内で、長慶はうたたねをしながら、片道約4時間はかかる徳島県に到着した。


「ふむ、ここが三好か。あいも変わらず殺風景じゃのぉ」


「して、この建物は知らぬがなんなんじゃ?」


 長慶が三好で降りた時見つけたもの、ここは高速道路の近くに立てられたパーキングエリア。

名前を吉野川ハイウェイオアシスといい、徳島県由来のお土産や催し事があると真ん中の舞台で阿波踊りを踊ったりもする、ちょっとした休憩スポットである。

出店も行っていて、美味しい北海道アイスが食べれたり徳島名物の祖谷そばが食べれたりもする売店もある。


「ふむ。あそこには遊具が見えるのぉ……。近くには、鮎が泳いでおるじゃと?? ふむふむ、吉野川を再現しておるとな……。変わった場所じゃが、風流あって落ち着けるのぉ……」


「夜でなければ!」


 そう、片道4時間かけてるだけあって実際に到着すればもう21:00過ぎで、そろそろ22:00が来ようとしている時間。

施設は当然閉まっているので自販機での飲み物調達以外は出来そうにない。

そのうえ、街灯があまりない為かなり暗い。

なので、戦国を生きた長慶のような人物だと、奇襲されないか・寝首を掻く輩はいないか等、色々気を配らねばらないせいでまともに落ち着いてられない。


「我が地元に帰ってきたとおもぅたらこのような状態とは……。乗る時間をはやめた方が良かったかもしれぬの……」


 また外での野宿かーとか思いながら、公園に向かい近くの椅子で横たわることにした。


__こんな時、家臣がおれば……。


 長慶は、家臣の有難みを改めて実感するのだった。

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