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第22.5話 再評価の検討

 長慶が実休より指導を受けながら阿波踊りを必死に練習する傍ら、日本各地では議論が飛び交っていた。

長慶本人の転移といい晴元といい義輝といい……様々なマニアック武将が同時に出現したことが認知されつつあるのだ。

長慶にとってこれは実に好機の兆候だが……?


「各地で戦国武将の名を騙る人物が現れ始めたとメディアでも報じられています」


「そのようですね。しかしながら、なぜそのような非現実的な事が同時に何度も起きるのでしょう? あまりにも不自然じゃありませんか?」


 ここはとある県のとある会議室。

数十名はいるだろう人々は、長慶だけではなく他のもののことについてまで議論していた。

その主題は……


____武将出現会議。


「……私は考古学者です。私だってこのような事態が唐突に訪れてしまい大変興味ぶか……いえ、失礼しました。困惑の意を示さざるを得ません」


「考古学的観点から見ても、三好長慶や細川晴元、足利義輝と名乗ったもの等は本物と見て差し支えないでしょう」


「後になって出現が確認された三好実休についても述べた通り本物です」


「異議。どうして本物だと断定できるのですか? 遺伝子検査をした訳でもあるまいて」


 憶測が憶測を呼び、各分野の専門家が集いこの場で議論という名の討論を行っている。

考古学者に医学、量子力学者や果ては神話学などスピリチュアルな分野のものまで駆けつける始末。

それだけ、異常事態だと言うのだろう。


「失礼、考古学的観点で見ると、住民票による筆跡を辿ると、戦国当時の筆跡と告示していることがその証拠になるかと」


「それは考古学ではなく、ただの筆跡鑑定の結果では?」


「だからですよ。一見関係のないこの2つが結びつくのです。今の現代人が戦国当時の筆跡を真似することは困難極まりありません」


「無論、専門家である私めでもあそこまで再現することは厳しいでしょう」


「……それと別で、どうやって住民票の筆跡を調べたんですか?」


「まぁまぁ、余計な詮索はそこまでにしませんか? 主題から逸れていますよ」


 会議はゴタゴタで、決してまとまっているとは言いがたかった。

様々な策略で情報を抜き取ろうとする研究者の数々。

そして、また新たな事実も判明する。


「……。新たな情報です。十河一存を名乗る女性が陸上自衛隊に所属していると噂が」


「それはおかしいですねぇ……。十河一存は男性のはずです。上杉謙信のように女性説は出ていませんよ?」


 ある学者がメールより仕入れた情報で、実休が聞いた噂の話が舞い込んできたのだ。

なお、謙信女性説とは、1に女性との肉体関係を絶ったこと、1に戦の際は顔を覆っていたということ。

そして、1にトイレなどを使って1人になることが多かったこと。

根拠としては薄く、どちらかというとIFのような扱いを受けるのだが……、誰も真実を知らないためにこのような説が生まれたのだろう。


「末裔という可能性も今考えましたが、これに関しては断言は出来ませんね……」


「平家落人伝説のように、もしかしたらの可能性はあるでしょうね。2010年代までは十河家の血があることを確認できていますし」


 こうも続く武将出現疑惑。

謎の完全な解明は未だ困難な様子。

しかし、それと別でこんな話も……?


「ところで、三好家なる存在についてですが、これを機に少しばかり評価を改めても良いのでは無いでしょうか?」


「確かに、戦国最初の天下人として呼ばれる彼が、信長らより知られてないのは変な話」


「しかしながら、日本の福王と呼ばれる彼を評価するにしにくいのです」


「三好政権設立から崩壊までが短く、また三好政権の影響力が芳しくないこともあり、評価が難しいのです」


「だが、教科書によっては長慶の記載があるのもまた事実。いずれ、義務教育課程に加わるのが筋でしょう」


 長慶自体も偉大な人物だが、歴史に置いての影響力が信長や秀吉、家康に比べて少ない上に家がすぐに滅亡したことが響いて情報があまりにも少ないことが評価するに出来ない原因である。


「ならば、もし本物の三好長慶が出現したのであれば、この現代でどれほど適応し、のし上がってくるかで評価してはみませんか?」


「神話学的観点からみるとぉ〜。これは神の啓示と言えるかもしれなーいでーす。神が我々に試練をお与えになるために、異世界から呼び出しているのかもしれないでーす」


 まるで試すような口ぶりだが、学者としても史実武将の動きを知れるいい機会なのだろう。

だが、今後の動向次第で再評価の可能性を見出すための観察を続けるのだろう。


____そして、長慶は進展を迎えることだろう。

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