年齢と殺人までの経緯や生い立ちを酌量され懲役5年という殺人罪では非常に軽い懲役で刑務所に収容された龍二。
木工作業場で黙々と角材を整える仕事をしていた。
その作業員の中に一際、とてつもないオーラを放つ男がいた。
まさに危険というオーラをまとった異才の存在。
遠目でその威圧を感じながらもくもくと建築材を機械に通して仕上げ作業に没頭していたが、休憩時間にその男が近寄ってきた。
「お前、まだ若けえな?なにやった?」
男は厳つい風貌とは想像もできない笑顔で話しかける。
この男の凄まじいオーラに、これまで戦場で死線を潜り抜けてきた龍二をも身構えさせていた。
「ここは悪い奴が多いから気をつけなあかんで。」
男は言葉すら発せない龍二に一声かけて看守と雑談を始めた。
私語厳禁の作業場であって、看守も一緒になって談笑する光景に、龍二は驚いていた。
その男が日本全国を網羅する極東一家の大幹部であるとは龍二はまだ知る由もなかった。