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第11話 ショッピングモールでの一幕

ドラッグストアからショッピングモールまでは軽トラックで30分くらいかかる。

やたら広い駐車場だけど車が多すぎて俺一周しちゃったよ。


どうにか駐車場確保して軽トラックから降りた時に周りの人にガン見されたけど……

きっとニーナさんが可愛いからだね。

気を付けないと。


日曜日だから家族連れとかでかなり混んでいる。

この辺遊ぶところとかあまりないからな。

ちょっと前にこの街の唯一の映画館、気が付いたらパチンコ店になっちゃってたし。


数年前に新幹線とか駅が出来て急に開けたから人だけはやたら多いんだけどね。

高速道路も開通したし。


そんなことを思いながら俺はショッピングモールへ入っていってお洒落な鞄を見ようと鞄の専門店に入っていった。

よく来るショッピングモールだけど、この店は初めてだ。


「んー、どういうのが良いんだろう?……わからん」


なんだか実用性に欠けるような、洒落ているけど容量の少ない様なものばかりで。

しかもこれ、値段の桁おかしくないか?


10cmくらいしかない鞄……23000円!?


うー、どうしよう。


……あの、ニーナさん?教えてくれますか?


『……ふう。……まあしょうがないよね。まこと女の子と付き合ったことないんだよね』


うっ。

そうだけどなんか改めて言われるとつらい。


『とりあえず無難なデザインが良いよ。使いまわしできるしね』


そう言われて何となく手に取った小さなカバン。

頭の中で『良いよ』って言われた。


……8900円……良いのかな。


俺はそれを持ってレジへと向かう。


「ありがとうございました」


なんか店員さん、俺をやたら見ていたけど?

外国人だと思われたのかな?


美人やっぱりおそるべしだな。



※※※※※



どうにか買い物を済ませ、時計を見ると午後2時を過ぎていた。

せっかく来たから新作ゲームでも見ようかと思ったけど……


改めて店の中覗いたら……子供とおっさんしかいないな。

奇麗で可愛い子なんて一人もいない。


……そもそもゲームなんてやる暇あるのか?

今の俺に。


ぐうう……

「っ!?」


あっ、お腹が可愛く鳴ってしまった。

そう言えば朝食べただけだね。


「うーん。今日は混んでいるからな。……ハンバーガーでも買って車で食べるか」


俺は1階の入り口付近にあるハンバーガーショップへと行く事にした。

移動中もなんだか人の視線を感じる。

今まで男だった時には無い感覚だ。


しかもなんか男はみんな俺の顔と胸ばかり見ている気がする。

ちょっと気持ち悪いな。


あー、でも俺も男だった時、可愛い女の子とすれ違う時、ガン見していた気がするな。

反省しなきゃいけないね。


戻れたらそういう事は控えよう。


そんな決意をしているうちに、俺はハンバーガーショップについた。


「結構並んでいるな。……子供多い」


取り敢えず並び、スマホを見ながら待つことに。

おっ、珍しい。

SNSでメールが来てる。


普段プライベートは俺、あまり人と行動を共にする事はない。

だからメールとかも専ら業務関係だけだ。

別にボッチとかじゃなく、社会人4年目くらいになると大体男はそんなもんだと思う。


まあ、田舎は面倒くさいつながりが多いから、一人の時は自由にしたいんだよね。

消防団活動とか、地区の行事だとか。

仕事柄結構農家のおっちゃんとかと飲む機会も多いしね。


……そう言えば来週から消防団の練習だ。

うう、憂鬱だな。


そんなことを思いながらスマホの画面を見ると、さっきコンビニで会った沙紀先輩からメールが届いていた。


「……『来週の土曜日午前10時駅で待ち合わせ……可愛い服で来てね♡』……はあ?」


脳裏に爬虫類のような笑みを浮かべた先輩の顔が浮かぶ。

鳥肌立っちゃった。


「うう、返事しないとだよな……来週土曜日……都合よくなにも予定がない日だ。しかももし時系列問題ないようになっているなら俺確か『暇だ―』とか言っていた日だよね」


「『はい。わかりました』っと。これでいいかな」


俺はそっけない返事を返しておいた。

ため息つきながら。


そして始まる怒涛のメール攻撃。

やたらかわいい絵文字とかスタンプが山のように押し寄せてきた。


うぐっ、これって女の人普通なのかな?

ちょっと怖いんですけど!?


5通くらいは律義に返事したけど……

それ以降はもう知らんぷりすることにした。

一応「運転中です」と入れておいたけど……


はー、分からん。


なんだかメールのやり取りでお腹いっぱいになった俺はセットメニューだけでいいかなってなっちゃった。

いつもなら2セットとさらに単品で2つくらいハンバーガー買うんだけどね。


まあ、だからちょっと太めだったんだよな。

借り物の体だ。


少しは気を付けて太らない様にしなくちゃね。


……ダイエットとか大変だもんな。


俺は遠い目をしながら軽トラックを止めてある駐車場を目指すのだった。


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