地球ではないどこかの異世界。
ニーナさん、えっとニーナ・ルアナ・フィラリール姫はどうやらもともとは地球で暮らしていたらしい。
つまり転生者だ。
確かにあのじいさんも彼女を『転生者』って言っていたけどあの時のタイミングじゃ分かんないよね?
異世界から地球に来た転生者だと思うじゃん。
何気に性格悪いよなあのじいさん。
でも、そうだよね。
だって異世界しか知らないならドラッグストアの事とかストレッチの事なんて知らないはずだ。
うう、俺やっぱり頭悪いよな。
でもまあ過ぎたことは仕方ないしあの時は決まり事分かっていなかったからもしかしたら危なかったかもしれない。
迂闊にたどり着いてニーナさん消えちゃったかもだもんな。
で、転生した彼女はその時どうやらお爺さんと賭けをしたみたいだ。
もちろん俺の推測。
彼女、それは核心だろうから一言も自分からは言わなかった。
でもなんかなにも力貰えなくてすごく苦労したんだって。
対価は教えてくれたよ?
その国の滅亡を防ぐこと。
あのさ。
神様それはないんじゃない?
地球で平和に暮らしていた女の子に、しかもよくあるチートとか一切あげないでとか……
なんだよその無理ゲー。
しかもなんだかその世界は今の地球より数百年くらい科学とかが遅れていて、薬とか全然なかったらしい。
まあ魔法のある世界らしいから、殆どそういうもので代用していて全然そういう科学みたいなことが進歩しなかったんだろうね。
ニーナさんも苦労して、異世界にいた時は魔法使えるようになったんだって。
もちろん転生した今は使えない。
なんか世界の摂理とかが違うらしい。
まあいきなり魔法とか使えたら大騒ぎになっちゃうもんな。
ちょっと憧れるけど。
『ファイヤーボール!!』とか言って手から火が出せるとカッコいいよね。
何はともあれニーナ姫はそんな中、人々を救うためすごく勉強して、抗生物質みたいなのを発見して王国の多くの人を感染症から守ったそうだ。
ふわー。
凄いねニーナさん。
もしかしたら地球にいたとき天才だったのかな。
俺じゃ絶対無理だ。
そもそもそういう考えになるビジョンが浮かばないもんな。
『必死だっただけだよ。そういうのに詳しい賢者さんが居て、国で保護したの。それで一緒に研究とかしたんだよね』
なんかすごく謙遜するし。
お姫様で偉いはずなのにこの子はとても優しいし心が奇麗な人だ。
ああ、なんか知るたびに惹かれる気がする。
でもなんだろ。
俺がそういうこと言うとニーナさんなんか悲しそうな雰囲気になるんだよね。
うーん。
分からん。
俺が好きになると困るのかな……
それか実は俺の事嫌いとか……
それは地味にショックだな。
『あのね、私まことのこと嫌いじゃ……』
「っ!?ストップ、警告があああああああああ、うあああ、い、痛いっ」
ぐうっ、痛っ、ぐうううう、なんだ?
好きとか嫌いとかだめなのか?
うう、頭割れそう…
俺はしばらくうずくまってしまった。
5分くらいしてやっと痛みが落ち着いた。
ふう、落ち着いた。
気を付けよう。
で、ニーナさんそれはもう凄く頑張って次は国のはずれに大規模な壁を作った。
結果的にそれが大活躍して魔物の氾濫を防いだんだけど……
やっぱりお金が凄くかかって、貴族から反感を得たらしくて。
どの国にも権力があっても悪い人はいるから、クーデターみたいなので王様と王妃様が殺されちゃったんだって。
それでそのあとは神様に俺が見せられた状況に繋がっていって、凌辱はされずに済んだけど結局殺されそうになって……
それでまた神様に呼ばれたらしい。
「ねえニーナさん」
『ん?』
「何年いたの?その異世界に」
『……今考えた。警告無い?』
「うん」
『5年いた。転生したとき17歳だったから……私今22歳なんだ』
「っ!?……俺と同じ?……えっ……」
えっ?
まって。
俺同じ条件の子……知ってる。
でも……
もし違っていたら……
「ねえ、ニーナさん」
俺はあえて続きを口にしないで頭の中で考えた。
たぶん伝わっているはずだ。
『……』
返事も警告もない。
俺はもしかして大きな思い違いをしていたかもしれない。
もしかしてニーナさんの姿って……
異世界に転生した姿なんじゃないか?
俺は名前と彼女の見た目できっと外国の女の子だと思っていた。
でも、もし……
「ねえ、もしかしてニーナさん、地球にいた時って……今の姿じゃなかった?」
『……考えたよ?警告無いかな』
「ない。じゃあ……」
『うん、私転生前と今の姿違うよ』
俺は大きくため息をついた。
そしてない頭をフル回転させて推測にたどり着く。
でも、これはまだ聞いちゃいけない気がした。
だって……
きっとこれ間違いなく核心だ。
そしてかなり俺に都合のいい考え方になっている。
違ったときのダメージが大きすぎる。
そして聞いてしまえば違った場合俺もう今までと同じ対応できなくなる。
もっと確信が欲しい。
ダメだ。
冷静に判断できなくなっている。
俺はニーナさんに提案した。
「ごめんね。俺から振った話だけどさ、今日は終わりにしようか」
『……うん。まこと沢山頭痛くなっちゃったから賛成かな』
「ありがとう。ごめんね……あっ」
『ん?』
俺は一つ思い出した。
えっとこの流れとは関係ない事だけどね。
せっかくなのでニーナさんに聞いておかなくちゃね。
「ねえ、明日沙紀先輩と出かけるんだけど…断れないかな?」
『ん?いけば良くない?お洒落の勉強になるよ?』
「ん―そうかな。なんか嫌な予感するんだよね」
ふう。
なんか胡麻化したみたいになっちゃったけど、取り敢えず話題が変わってよかった。
まあ、そうか。
約束しちゃったしね。
うう、でもあの爬虫類みたいな笑い方恐いんだよね。
そのあと俺たちは少し話したけど、結構いい時間になっていたのでシャワーとストレッチをこなして眠りについた。
うう、明日ちょっと憂鬱だ。