「はああああ。おいこらじいさん。どういうことか説明しろ」
俺と真琴、そしてニーナさんと子猫、3人と1匹は俺の部屋でくつろぎながらもお互い顔を付け合わせていた。
良く判らないがどうやら俺の行動は満点だったらしく、消えるはずのニーナさんは実体を与えられ、なぜか俺の従姉弟として「木崎新菜(にいな)」として存在するようになっていた。
しかも何故か同じ会社の職員としてだ。
当然俺の免許証とかは元通りになっていた。
そしてこの子猫。
どうやらあの爺さんの転生した姿らしい。
「にゃあん♡」
くうっ、可愛い。
真琴はすでにメロメロだ。
はっ、ダメだ、騙されるもんかっ!!
「くっ、この、どうせしゃべれるんだろうが!?ちゃんと話せ!!」
子猫、もといじいさんは真琴の胸に飛につく。
何故かいやらしく手を真琴の胸に押し付け顔をうずめる。
「うん♡……もう、この子、エッチだね……おっぱい欲しいのかな?」
そしてなぜか真琴に、以前の細かい記憶が無くなっていた。
ニーナだったこととかは覚えているものの、爺さんの事が解らなくなっていた。
「こ、このっ、真琴から離れろ、ああ、くそっ、そんなに触るなよな!?」
此方をちらと見ていやらしい笑みを浮かべる子猫。
絶対に確信犯だ。
しかし天罰が下る。
真琴がひょいっと子猫を持ち上げ、お腹の下の方を見る。
「あっ、この子男の子だね。おちんちん付いてる。ふふっ、ちっちゃくて可愛い♡」
男にとって「ちっちゃくて」はまさに滅びの言葉だ。
明らかにしょんぼりする子猫。
いい気味だ。
そしてよろよろと真琴から離れ俺に向き合う子猫。
どうやら何かを言うらしい。
突然俺の頭にあの人を喰ったような爺さんの声が聞こえる。
『ふん、この童貞野郎が。邪魔をするでないわ。せっかく柔らかいおっぱいを堪能しようとしたのに。しょうがないからニーナのおっぱいにするかの』
「はあっ?」
『おうそうじゃ。飯は高級な奴で頼むぞ?どうせ金はあるんじゃろうしの。ふん、しょうがないからそれで我慢してやるわい』
全然かわいくないぞコイツ!?
俺は子猫の首のあたりを摘み顔の前で睨み付けた。
「いいから、説明してくれ。……あんた神様やめたのか?」
『……ふん、お主に関係なかろうが』
「うぐっ、そうだけどさ……なあ、まだ何か俺にできる事とかあるのか?」
もちろん今回の件、この爺さんには世話になったと思う。
いろいろ言いたいこともあるし、ニーナさんに対するあの言葉は許せない。
でも……
この爺さんのおかげで俺は生き返ったし真琴とも会えた。
出来ることがあれば俺は力になりたい。
『……全く…‥お人よしめ。……取り敢えず何もありゃせんわい。好きに生きるがよいぞ』
「……」
『本当じゃ。少しは信じろ。……わしはしばらく業を払う必要があってこの姿じゃよ。お主らには関係ない事じゃ。……すまないがニーナだけは養ってほしいがの。この子はこの世界の人間じゃないのじゃから。頼む』
伝わる想いで俺はある程度今の状況と背景を理解できた。
だから俺はこう言うしかない。
「分かったよ。まかせろ。……ニーナさんにも、もう目的とか使命とかないんだな?」
『ああ。……そうじゃ、お主ニーナも彼女にすればいいじゃろ。この娘エロいぞ?』
「ぐふっ、お、おい、そ、そんなこと……ここは日本だぞ?無理だろ!?」
やばい。
ニーナさんの美しい体がフラッシュバックした。
凄くエロい。
何故か分からないはずの真琴の周囲の気温が下がった気がする。
背筋に嫌な汗がしたたり落ちる。
「ねえ、誠?……その、良いよ?えっとね、昨日スッゴク気持ちよかったから……誠ならエッチいことしても良いよ♡」
「はあ?何言ってんのニーナ!?だめだよ?誠は私のなのっ!!」
「えー、いいじゃん。あんただって最初から認識してたじゃん、私居たの」
「ぐうっ、そ、それは……そ、その……」
やっぱりニーナさん、いたんだね。
だって真琴転生して5年だもんな。
それまで居たニーナさんは死んだりしていない。
つまり俺と同じく憑依した状態だったんだ。
真琴がなぜか居心地悪そうな顔を俺に向け謝ってきた。
「あの、誠、ごめんなさい。その、黙っていて……」
「えっ?いいよべつに。怒ってないしね。……それよりもニーナさん消えなくてよかったよ。俺の先生だもんな」
「……もう、この人たらし。……でも、負けないからね。私絶対に誠の一番になるんだから」
おう、嬉しすぎる。
はあ、でも色々と考えなくちゃだな。
このじいさん最後の力を振り絞り、色々とそういう事にしたみたいだ。
まずニーナさんは俺の従姉弟で4年前から、つまり俺と同時に同じ職場に勤め始めた同僚。
何気に大和の代わりのポジションだ。
ああ、別に大和居ないとかじゃなくてだけどね。
アイツは別の支所でちゃんと働いていることになっているらしい。
そんなわけでニーナさんは俺と同じ家で暮らしていることになっており、何故か沙紀さんとめっちゃ仲がいい設定だ。
それから真琴は、何故かこの4月から役場の臨時職員として勤めていることになっていて俺の許嫁状態。
つまり婚約者だ。
俺の友達で、この4月に俺の家に居候しながら働き始めたことになっていた。
職員票にしっかりと顔写真が写ってた。
相変わらず爺さん芸が細かい。
それで現状、同じ役場の正樹さんがしつこく言い寄っている設定だとか。
こりゃ早く結婚しなくちゃだね。
ちらりと真琴を見て思わず俺は顔が赤くなってしまう。
ごくりとつばを飲み込む。
け、結婚!?
うう、嬉しいけど、俺たちまだ全然付き合ってない。
もちろん、その、エッチだって……してない。
コホン。
あと俺はここ数週間の努力が評価されたようで。
何故か高校生の時よりもさらに痩せて、かなりお洒落になっていた。
臭くないしね。
タバコもない。
貯金額もちゃんとそういうふうになっていた。
「ふう、じゃあ取り敢えず寝るか。明日仕事だしね。真琴、仕事とか大丈夫な感じ?お前高校2年だったけど」
「うん。なんかわかんないけど何をするのか理解できているよ?車もあるし免許も。きっと転生特典とかなのかな」
「あー、そうだね。……その、真琴さ、今俺達、婚約者じゃん?」
「う、うん。……うあ、そ、その……」
「い、い、一緒に、ね、ね、寝ようか?」
俺はなぜか過去に用意していた新品のゴムの箱を視界の隅でとらえていた。
行けるかもっ!!
「ねえ、私どこで寝ればいいの?一人は寂しい」
赤くなり見つめ合う俺たちにジト目を向けニーナさんが問いかけてきた。
うぐっ、すっかり忘れていた。
「……私も一緒が良いんだけど?……ねえ♡ま・こ・と♡……良いよね?」
「ひうっ、で、でも、ほ、ほら、俺たち一応設定上従姉弟じゃん?大人だしさ。客間空いてるよ?」
さらに深まるジト目。
そして明らかだけどウソ泣きを始めるニーナさん。
「えーん、酷い。さんざん体を弄んだくせに、捨てるのね?私のおっぱいに興奮してたくせに。あそこいっぱいいじったくせに」
「ぐうっ、いやっ、そ、それは……」
「もうお嫁いけなーい。責任取れ―」
カオスだ。
結局今日はもう遅いので3人で寝ることにした。
何気に大きいベッドで良かったけど……
ねえ、ニーナさん?
異世界ってそういう事なの!?