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第40話 神様パワーと田舎の日常

「なに?誠が弁当作ってるの?えらーい。うん、今は男の子も料理位できないとだね」


俺達は小会議室で弁当を広げ、話し合いを始めたところだ。

君島代理の弁当は……うん、凄いね。

なんかでっかいジャーみたいなやつだ。

ホカホカと湯気を立てている。


「で、誠。あんたさ、私に言う事無いかな?」

「えっ?」


君島代理はなぜか怪しい色の瞳で俺を見つめてきた。


うー、どうしよう。

君島代理は……

だって普通の人だよね?


俺のここ最近の話……やばいでしょ?


「あー、うん、そのね、私ちょっとおかしいっていうか。……あんたさ、先週女の子じゃなかったっけ?」

「っ!?」


えっ?

どういう事?

神様、俺どうしよう!?


君島代理はモグモグと大きく食べてごくんと飲みこんで次は新菜をじっと見る。


「新菜さ、あんたも……いなかったよね?」

「っ!?」


挙動不審になる新菜。

おーい、それ串だよ?

食べられないぞ!?


大きくため息をついて天井を見上げる代理。

そしてなぜか頷いた。


「やっぱりそうだよね。……あのね、20年くらい前にもこういう事あったんだよね」

「「えっ」」

「俊樹君」

「「っ!?」」


君島代理はお茶を一気に流し込む。

そして大きく息を吐いた。


「はあああああ―――――まったく。なんか知らないけど大きな力が働いている。そうよね?」


うう、君島代理の目つきが怖い。


嘘つきたくないけど……

でもこんな話……

どうすれば…


そんなタイミングで小会議室のドアが開く。

俺と新菜は固まってしまう。


菊野原次長がコンビニのレジ袋片手に、にこやかに入ってきた。


「さゆり先輩、俺も混ざっていいかな」

「混ざるもなにも私が呼んだでしょうが。早く来なさい。10分遅刻よ」

「はは、相変わらずですね先輩は」



※※※※※



結果的に君島代理はやはりこの世界での強者だったらしい。

魂がメチャクチャ強いそうです。


もちろん物理的とかではなく、モブではなく主役クラスの運命ホルダーの様で、本来ならこんな田舎の職員ではなく、ガチで世界を動かすレベルの人の様だった。


あの後何故かやってきたさやかさんと新しい創造神が教えてくれました。

君島代理目を白黒させていたけど、凄い人は違うね。

何故か全部納得して、これからの事について考え始めていたよ。


俺の上司の二人マジで凄すぎだわ。


「ん?私普通のおばさんよ?まあ仕事好きだから全力でやるけどね。新菜?あんた仕込んであげるからね。……楽しみにしてなさい」


そんなこと言ってた。


はは、俺男で良かったわ。

新菜マジで涙目だったもんな。


でもやっぱり神様パワーとかすごいチートだね。

たぶん体感で数時間話し合いしていたはずなのに気が付いたら5分しか経過してないとか。


後、新菜に不都合な設定はかなり消してもらいました。

告白や襲い掛かったことはすべて夢落ち状態にしてくれたようです。


なのでまあ、勘違いする様な近すぎるスキンシップとか避ければとりあえずは問題ないようです。


何はともあれ君島代理が仲間になったのはマジで心強い。

俺達の仕事の不安が大きく解消されたのだった。



※※※※※



午後は二人別れてそれぞれの業務をこなした。

新菜も特に問題なく、明日の出張の書類とか段取りの連絡とかしっかりこなせていた。


まあ少し心配で俺はこっそり明日行く市場の担当者には連絡したけどね。


「大丈夫だよ?でもまた新菜ちゃんが来るのマジで嬉しい」


とか言ってやがったし。

くそ、手出すなよな!?

まあ次長が一緒だ。

大丈夫だろう。


そんなこんなで業務が終わり俺たちは二人軽トラックで帰宅した。

憂鬱だが今夜も消防の練習がある。

そして家からの参加者はなんと3人全部だった。


普通1名ですよね?

どうなってるのかな!?



※※※※※



「はーい集合して。そろそろ本番の形で練習するぞー」


俺は一応選手で本番にも出なくてはいけない。

そんなに上手ではないけど取り敢えずどうにか吹くことはできていた。


新菜は同じラッパ班で何故か補欠。

真琴は消火栓班に配属されていた。



※※※※※



「ふうー、しんど。……大会近いからな。通しの吹奏はマジできついや」


小休止になり俺はその場で座り込む。

前はみんなとタバコ吸いに行ったけど今の俺はもう吸わない人だ。


「お疲れ誠。ねえ、私見てるだけだけど良いのかな?なんかずるしてるみたいでちょっと罪悪感あるっていうか……」

「ん?良いんだよ気にしなくてもさ。どうせ来年あたりは新菜だって選手だよ?今のうちに吹けるようにしといた方が良いよ」

「うん。でもこれ難しいよね。全然音でないし」


そんな話をしていると少し離れた場所で大声が響き渡った。

なんだ?


俺は立ち上がりそっちの方へ顔を向けると真琴が赤い顔をしながら俺めがけ走ってくる。

何故か正樹さんも追いかけてくる?


「誠、助けてっ!変態が来る」

「変態?えっ、それって……」

「真琴ちゃーん、ねえ、付き合ってよー」


俺はとりあえず真琴を隠すように正樹さんの前に出る。

正樹さんは俺に気づくと睨み付けてきて大声で威嚇し始めた。


「誠、てめえ、真琴ちゃんを開放しろ!!どうせ何か弱みとか握ってんだろ?じゃなきゃお前みたいなデブ……あれっ?」


俺を見て何故か挙動不審になる正樹さん。

あーうん。

今の俺、全然太ってないからね。


同じラッパ班の加奈ちゃんがまるでゴミを見るような目で正樹さんを見た。


「うわっ、サイテー。私の次は真琴さんとか。頭の中そういう事しか考えてないのかな?」

「えっマジで?加奈、それどういう事?」

「なになに?詳しくっ!」


突然の出来事にラッパ班の女性陣が集結し正樹さんをちらちら見ながら話し始めた。

正樹さんの顔色がだんだん青くなっていく。


「で?正樹さん、俺の婚約者に何か用事ですか?」

「ぐっ、そ、そんなの嘘だろ?今時、婚約者とか……」

「本当です。私誠の事愛しています。だから正樹さんとは付き合えません。もう、今日これ10回以上言いましたよね?」


「「「きゃー♡真琴さんカッコいい♡」」」


うん。

真琴カッコいいわ。

惚れなおしちゃうね。


「…10回以上?正樹さん、あんた頭の中ウジとか湧いてます?とにかくこれ以上真琴にちょっかい出さないでください。村長に言いますよ?」


「く、くそっ。……真琴ちゃん、君は騙されているんだ、なあ、だから俺と…」

「おいこらクソ正樹。てめえ、ホース巻き終わってねえだろうが?さぼって色気づいてんじゃねえぞ!?……あー誠すまん。俺がこいつ見とくわ。とりあえず今日は勘弁してくれ。……おらっ、行くぞこの馬鹿が」


茫然と見送るラッパ班の面々。


突然真琴が俺に抱き着いて来た。

目に涙が浮かんでいる。


「誠、恐かったよー。あの人しつこくて……手とか握ってくるし……」

「なっ!?……真琴、ごめんな?気付かなくて……くそっ、あいつめ……」

「でも……誠、あったかい……好き♡」

「う、うん。俺も大好きだよ……」


俺はそっと真琴を抱きしめた。

可愛い♡


「「「「「ゴホン」」」」」

「「ひうっ」」


「あー誠さ、わりいな。練習始めても良いか?」

「う、うすっ」


やべ。

みんな見てたわ。


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