連休前日の金曜日の午後4時過ぎ。
新菜は無事勤めを果たし、なんと昨年より2倍の契約と、単価15円アップを勝ち取り、無事会社へと帰還した。
これには次長も驚いたらしい。
「新菜はやばい。もう市場の連中メロメロだぞ?……誠、しっかり責任取ってやれよ?」
とか言われたし。
新菜お前何したんだ?
「流石新菜ね。これで私も少しは楽が出来そうだわ」
うわあ、君島代理が素直に称賛している!?
後が怖いのはなぜなのだろうか。
なにはともあれ無事市場対策が終わった。
連休明けからはいよいよ花木類の出荷が始まる。
今年度もいよいよ本格的に始動し始めた感じだ。
あっ、因みに俺例のスプレーマムは栽培することにしました。
なんか真琴がすごく興味持ったんだよね。
ゆくゆくは二人、いや3人で農業もいいかも、とか言っていたしね。
あと、俺たち今朝仕事に行く前に入籍しました。
晴れて同姓同名カップルの誕生です。
式は一応仕事が落ち着く11月以降に行う事にしました。
新菜もすごく喜んでくれて
「早く赤ちゃん作りなよ。私面倒見るよ」
とか言ってくれた。
あと数日後には変わるかもだけどね。
素直に嬉しかった。
まあ式は秋の予定だから、新郎妊婦にならない様にしないとね。
キレイなドレスに身を包む真琴を俺も見たい。
だから計画的にする予定です。
※※※※※
「じゃじゃーん。生八つ橋。チョコと抹茶だよっ!」
無事業務を終え3人仲良く夕ご飯を食べた後、新菜が大阪のお土産を自慢げに披露してくれた。
チョイスが渋い。
まあ生チョコはいいかもだけどね。
「あのね、市場で出してくれて、食べたらスッゴク美味しくて気に入ったんだよね。ねえ、食べてみてよ」
「うん。……!?おいしい」
「でしょ!本当は後たこ焼き味とかもあったんだけどさ、次長が「やめておけ」とか言うから抹茶にしたんだ」
流石次長。
感謝です。
今日、本当は消防があったんだけど『中丁場(なかちょうば)』と呼ばれる飲み会だったので、新婚を理由にお断りしていた。
班長に「せめて新菜だけでも」とか言われたけど、普通にダメでしょ。
アイツらの中に可愛くてスタイルの凄い新菜なんて。
危なすぎる。
大体女性は殆ど参加しないしね。
そんなわけで俺たちは、まったりと過ごせていた。
「ん?ケータイ鳴ってる……はい、新菜です……沙紀さん?どうしたんですか?……ええ、はい……えっ?凄い……ええ、はい。……えっ、誠も?……あー、奥様、ああ、真琴ね。……あー、じゃあ後で返事しますね。…はい。……おやすみなさい」
「ふう。ねえ誠、明日って何か用事とかあるのかな」
「ん?特にないよ。ああ、遊びに行こうかなって思っていたけど。……さっきの電話、沙紀先輩?」
「うん。なんかね、新しくできたリゾートホテルの屋内プールの利用券貰ったんだって。それで一緒に行こうって誘われた」
えっ?
あのホテルの?
プレミアチケットじゃん。
俺達の村から1時間くらい離れた場所に国内でも有数の観光地があるんだけど、そこに昨年末にリゾートホテルが出来ていたんだよね。
芸能人とかも来るような高級のホテルで、確かやたらお洒落な室内プールがあるはずだけど……
確かネットとかで2年待ちとか言われていた。
「知り合いが予約していたらしいんだけど、都合悪くなったらしくて。なんか明日までみたい」
流石沙紀先輩。
そういう物のチェックとか半端ないね。
「うわー、それ凄い所らしいよ?いいなあ、俺も一回くらい行ってみたかったな」
「うん、じゃあ行くって返事するね」
「えっ?」
「4枚あるんだって。沙紀さんと私と真琴、それから誠で4人じゃん」
「まじで」
「うん。マジ」
どうやらそういう事らしい。
俺は柄にもなくテンションが上がっていくのを感じていた。
※※※※※
「へえー誠、運転上手じゃん。いつも軽トラだから乗用車とか下手かと思ってた」
俺は沙紀先輩の車に女性3人を乗せカーナビを頼りに何とかリゾートホテルの駐車場まで来ることが出来ていた。
「ねえ沙紀さん。私水着とかないけど」
「言ったでしょ?ここのレンタルスッゴクお洒落なんだから。私持ってるけど今日は借りるつもりだもん」
「えっ?俺持ってきたけど」
「男なんかどうでも良いの。はあ、新菜の水着姿とか……まじ最高過ぎでしょ♡真琴ちゃんも可愛いから似合うよね。……何で誠?……もったいない」
「ははは、は」
うーむ。
場違い感が半端ないのだが。
でもなんか沙紀先輩、前よりだいぶ優しいな。
「誠、鍵持っていてくれる?帰りとか男の方が早いでしょ?準備」
「そうですね。分かりました俺持っておきますね」
「うん。サンキュ」
うん。
やっぱり前と違う。
これはオシャレ効果かもしれないね。
自慢じゃないけど俺今結構いけてるっぽい。
取り敢えず男女で別れ、女性陣はレンタルコーナーへと消えていった。
俺は自前があるので更衣室へ。
凄いホテルだね。
内装とかすごく洒落ている。
そんなことを思いながらも俺は着替えて鏡を見た。
以前とは別人の俺がそこにいた。
意外と筋肉質で、お腹とか少し割れている。
この半月くらい欠かさずストレッチはしていた。
その効果かもしれない。
着替えを終えた俺はプールサイドの椅子に座り女性陣を待つことにした。
流石に予約制だけあって利用している人は程よい人数だ。
何気に美男美女率が高い。
「お待たせ。へー誠いいじゃん。あんた鍛えてるの?」
そんなに待たないうちに沙紀先輩が俺に声をかけてきた。
俺は振り返り思わず固まってしまう。
凄い美女が3人、すっごい水着で美しいプロポーションをさらけ出していた。
真琴は赤いビキニに黄緑色のパレオを腰に巻いていて、凄く可愛い。
新菜は……お前それどういうつもりだ?
黒いとても面積の小さいビキニとか!?
やばすぎるだろ!?
うっ、沙紀先輩、着やせする方なのですね。
胸のボリュームがえげつない。
可愛らしいピンクのビキニに包まれた胸がプルンと揺れる。
「うあ、凄い。美人が3人もいる」
「!?……誠、いいよ、それ。ふふっ、嬉しいじゃない」
何故か顔を赤らめる沙紀先輩。
俺の腹筋をそっとさする。
「ひうっ」
「ふふっ、誠可愛い♡」
相変わらず蛇のような笑みを浮かべる沙紀先輩。
でも水着効果なのだろう。
可愛く見えるから不思議だ。
「さあ、泳ぐわよ!新菜、いこっ!」
「はい」
茫然と見送る俺。
そして何故か冷気を纏った真琴がボソッと俺に吐き捨てた。
「エッチ。……沙紀さんおっぱいおっきいね」
「うぐっ、な、何言ってるのかな?……俺は真琴一筋だよ?」
「ふんだ」
あう、ま、真琴?
俺を捨てないでー
※※※※※
いやー、何気に俺リア充みたいなことしてるよね。
可愛い奥さんと可愛い従姉弟。
それに職場の先輩で凄いプロポーションで美人の沙紀さん。
美女3人とお洒落なホテルの室内プールで遊ぶとか……
うん、あり得ないね。
予約制できっとそれなりの人たちしか来れないみたいで、むやみに新菜に声をかけてくるような人も居なくて俺たちは快適に遊ぶ事が出来た。
まあほとんどの男が際どい水着姿の新菜をガン見してはいたけどね。
うん、お前次の機会があったらワンピースタイプにしなさい。
「えいっ、誠、それっ」
「ぷわっ、この、真琴、それっ」
「あはははっ」
「ははは」
うわー、傍から見たら俺たち絶対にバカップルだわ。
沙紀さんが呆れたような顔で見てるし。
でも、やばい。
めっちゃ楽しい。
うう、真琴可愛すぎる。
「ふう、ねえ、誠……ちょっと疲れた」
プールの中で俺にそっと体を寄せる真琴。
肌の感触に俺は興奮してしまう。
「う、うん、少し休憩しようか」
「うん。……連れて行って♡」
「お、おう」
真琴がするりと俺に抱き着いてくる。
柔らかい感触に俺は顔が上気してしまう。
ぐうっ、俺のあそこ大丈夫だよね!?
あう、やばい、真琴の感触が……
イチャイチャ全開の俺たちのところに何故かふくれっ面をした新菜が近づいて来た。
そしてジト目で俺たちを睨み付ける。
「むうっ、ズルい二人。私も誠といちゃいちゃしたいのっ!!」
そしておもむろに俺に飛びついてくる新菜。
そしてギュッと抱き着いて来た。
「お、おい、おまっ、胸が、こ、こら!?」
「私もぎゅーってしてよね♡」
やばいだろ!?
新菜おかしいスタイルしてるんだからさ、うあ、めっちゃ柔らかい……ひうっ!?
「誠?……後で相談しよっか」
顔が笑っているけど目がまじな真琴に告げられた俺。
これは浮かれた天罰なのだろうか。
そのあと15分くらい切々と言い含められました。
うん、ごめんなさい。
僕は真琴一筋ですよ?
本当です。
※※※※※
なにはともあれ最高の思い出が出来た一日でした。
沙紀先輩、ありがとうございました。