連休は、それはそれはとても有意義に過ごす事が出来た。
プールで遊んだ次の日は、スプレーマムを栽培するための畑づくりを3人で行って、何故か様子を見に来た佐藤のおばちゃんまで手伝ってくれ、無事1日で植えるまでの準備が整いました。
いつも指導している内容だけど、君島代理が言ったとおり実際にやるのでは大違い。
自分の知識の無さを痛感した1日だった。
5日の子供の日は、ゆっくり遅くまで皆で寝坊して、昨日完成した圃場の周りでバーベキューをやってみた。
今まではこういう事って面倒くさくて興味なかったんだけど、いざやってみるとすごく楽しくて。
やっぱり可愛い真琴と新菜がいる今の状況はすごく特別だと改めて実感したんだよね。
途中暇で俺をツーリングに誘いに来た武夫が乱入したけど、あいつ新菜を見て固まっちゃうし。
うん、高校生には刺激が強かろう。
新菜ノースリーブに短パンだったからな。
何気に目に毒なんだよね。
ついガン見して真琴ににらまれたし。
新菜が可愛すぎるのがいけないと思うけどね。
あっ、あの事故の事は武夫記憶に無いようでした。
改めて神様パワー凄いね。
そして連休最終日は3人で真琴の軽自動車に乗り込みショッピングモールでお買い物をしました。
思い出したように郵便局の通帳がなぜかテーブルに置いてあって、中見たらすごい額が入っていて……考えたら両親の保険金が入っていたんだよね。
しかも何故か残高が増えていたんだけど、一瞬帰ってきた爺さんが「謝礼じゃ」とか言っていたのでそういう事なのだろう。
全然使ってなくて、3人で相談して。
じゃあせっかくだから夏物の服とかいろいろ買おうってことになってちょっと散財をば。
3人分とはいえ1日で50万円近く使ってちょっと怖かったのは秘密です。
※※※※※
午後8時過ぎ。
連休を堪能した俺たちは明日からの仕事と一番重要なラストミッションについて3人と1匹で話し合いを行っていた。
どうやら爺さん直近の問題は解決したようだ。
大きく伸びをしたかと思えば一目散に新菜の胸に飛び込みいやらしく顔をうずめた。
「ったく。このエロジジイめ」
『ふん。盛りの着いたサルには言われたくないの。お前嬉しいからって毎日とか!?少しは加減せい』
「うぐっ」
実は結ばれてから毎日俺は真琴と…
だ、だってさ、そ、その、真琴、凄く可愛くて……うう。
「ねえ、それよりどうするの?話し合いするんでしょ」
胸に子猫を抱いた新菜が声をかけてきた。
そうだ、顔を赤らめている場合ではない。
いよいよラストミッションが4日後に迫っている。
俺は大きく深呼吸してから分かっていることの共有を始めた。
「なあ新菜、いや、ニーナさん。ニーナさんはさ、もし元の世界に戻れるならどうする?」
「!?……どうするって、なに?……私邪魔なのかな」
いきなり涙目になるニーナさん。
思わず俺と真琴が挙動不審になってしまう。
「い、いや、そういう事じゃないんだよ!?次のミッションはさ、回収なんだ。そして多分というか俺たち3人でしかできない事なんだよ」
「……うん」
「それでさ、多分問題なくクリアーできそうなんだけど、その報酬でいくつかの道が選べるんだ」
これは新たな創造神オルガさんが約束してくれたことだ。
さやかさんも言っていたので間違いない事だと思う。
新菜が選べる選択肢は4つ。
1つ目は今のまま新菜として俺たちと暮らしていく。
特に神様特典とかはないけど、どうやら俺たち3人その後病気とかに罹りにくくなるらしい。
お金は一生困らないくらいには貰えるそうだけどね。
2つ目は新菜が元の異世界に戻り、暮らしていける道。
この道はどうやらゴタゴタが片付いた後で、ニーナ姫は信頼できる部下たちの元いずれ結婚して王国を盤石なものにできるルートらしい。
俺達はもちろん今のまま。
そして記憶がなくなるそうだ。
ある意味一番現実的な選択しなのかもしれない。
寂しいけどね。
3つ目は新菜と俺達の記憶を消して、新たな人生をこの世界で歩めるもの。
俺達も記憶をなくし、新菜は困らないお金と家が与えられ、平凡に暮らしていけるようだ。
まあ見た目とか変わらないらしいのできっとすぐに良い人が見つかるのだろう。
そして最後4つ目。
これはまあ神様チート全開でむしろ俺にとって異様なまでに優遇される道。
何故か今のままだが、俺達だけ法律がおかしくなるようだ。
つまり新菜が望むなら俺と結婚できてしかも問題なく暮らせるらしい。
その代わりにお金とかのプレゼントは無し。
でもすでにある程度のお金がある俺たちにとっては実はお金はあまり選択肢に影響はしない。
実は真琴が一番望んでいる道だったりする。
「ねえ、新菜可哀そうだよ。私ちょっと嫌かもだけど新菜ならいいよ?誠だって……新菜とエッチしたいでしょ」
とか言うし。
まあそんなわけでミッションクリア後には4つの道がある。
本当は言わないはずだったんだけどじいさんに怒られた。
「わしの様な不義理はするな。ちゃんと伝えてお前たち全員で悩むがいい」
まあね。
俺もそう思うよ。
「そっか。私戻ることも選べるんだね。……私さ、あの世界、実は大っ嫌いなんだよね」
「「えっ?」」
「だってさ、生まれたらいきなり王女様で。それに陰謀渦巻いていてもう息をするのも窮屈だった。だから変えたいって思って真琴にも協力してもらってさ。でも結局死んじゃった」
「……うん」
「だからさ、私帰らないよ?……ふふっ、そっか。私誠諦めなくていいんだね。すごく嬉しい。4番目の選択一択だね」
「うあ、そ、その、いいの?お、俺はその、嬉しいけど、さ」
新菜は大きくため息をついて天井を見上げる。
爺さんも飛びのき、なぜか俺の膝に来た。
くうっ、可愛いだと?
「私ね、最初誠見た時『ださっ』って思った」
「ぐふっ」
「ふふ、だって誠太ってるし全然おしゃれとか考えてなくて。でも真琴が羨ましかった」
「……」
「私の国にね、おとぎ話があるんだよね。女の子ならだれもが憧れる純愛の物語」
「えっ、なにそれ、興味あるかも」
「うん。女の子はみんな憧れるよ?だってその主人公、何も力もないしカッコ悪いの。でもね、最後までずっと一人を愛し続けるんだ。何度死んでもね」
「……」
「そしてね、ライバルで凄く美しい魔女が彼を誘惑するの。すっごいいい条件まで付けてさ」
「でも彼言うんだよね。『俺は彼女が良い。他は何もいらない』ってね。……誠みたいなんだよ」
「だから私4番しかないの。誠……好きなの。エッチもして欲しい。赤ちゃんも欲しい」
「うあ……俺、嬉しい。でも待って。……やっぱり一番は真琴なんだよ」
せっかくニーナさんが勇気を出してくれて俺を選んでくれた。
メチャクチャ嬉しい。
でも、だけど……俺はやっぱり真琴が好きだ。
俺は真琴を見つめる。
真琴も俺を見つめてくれた。
突然爺さんである子猫が光を放つ。
みるみる間にじいさんの姿になった。
「「「は?」」」
「わっはっはっは、ああ、愉快じゃ。流石は誠じゃな。文句なし、完全クリアーじゃ」
茫然となる俺たち3人。
おもむろに爺さんは杖を振りかざす。
「やはりわしの目に狂いはなかったようじゃの、さあ、大団円と行こうかの」
俺達は光に包まれた。