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第6話 彼らの出会い

 織田、豊臣、武田、徳川、上杉の5人。天下トーイツ・カンパニーはこの5人で設立した。黒田の力によって彼らは転生したが、そのことを知る前の話である。

 転生後はまずこの時代に慣れるために、5人はビジネススクールに通うこととした。そこで導かれるように彼らは出会い、意気投合したのだ。


「やっぱ織田はすげえや! 先見の明がある!」

 ビジネスゲームでいつもトップを取る織田に豊臣は興味深々である。

「フフ……やるべき事を実施するのみ。機会を伺えばそのうち天は俺に味方する」

 その言い方さえ渋くて豊臣はますます憧れる。

「なかなか難しいなこれ。俺、どうして織田に勝てねえんだ?」と武田。


 織田が答える。

「ほう……武田は戦略は完璧に練っておるが実行までが長い。タイミングを図るのだ」

「俺も資金面では問題ないと思うんだけどなぁ」と徳川。

「徳川は慎重だな。時には舵を取り、賭けに出るのも良いぞ」

「自分は向いていないのだろうか……義の心だけでは」と上杉。

「上杉は相手を思うあまり、進撃できておらんな。ただ……売上は安定して上げている。器用だ」


「はぁ〜織田みたいにできればビジネスでも始められるのにな」と豊臣。

 それを聞いた織田が他の4人をジッと見る。鋭い目つきで何かを思いついたように「お前たち」と言った。4人は一斉に振り向く。



「俺たちでビジネスを始めようじゃないか」



 織田のその提案に4人は驚く。

「まず武田シン、お前の戦略構築は完璧なものだ。エンジニアとしてやっていける力がある。プロダクツを開発するのに適しておる」

 武田がなるほどといった顔をしている。彼はプログラミングはお手のもの。エンジニアとして十分な素質を持っているだろう。


「徳川ヤス、お前の慎重で几帳面な性格、会計帳簿をつけるのに向いているのではなかろうか。簿記の勉強もしたと言っておったな?」

 徳川が頷く。自分は表に出るよりは基準や法令などを調べる方が好きだと思っていた。


「上杉ケン、そなたの義の心は人事面では重要な要素だ。それでいて的確に物事を把握して正しく進めておる。人事部長と呼びたいところだ」

 上杉も同意している。義の心は自分が最も大切にしているもの。それを織田に認めてもらえたことに喜びを感じている。


「そして……俺が会社を率いる。会社は1人でも設立可能だが、お前たちのその力が欲しいのだ」

 織田がしっかりと3人の目を見て言う。


「え? 織田ー? 俺のこと忘れてない? 一応ビジネスゲームで受注だけはトップなんだよ。赤字だけどさ」と豊臣が織田にすがりつく。

「は? 利益の取れない者に用などない」

「おだぁぁぁ!」

「フッ……冗談だ。豊臣、お前は俺たちをいつも笑顔にしてくれるムードメーカーだからな。営業に走ってもらおうか」


「そう来たか! はい! この豊臣ヒデ! いつまでも社長について参りますっ!」

 こうして5人は会社を設立するに至る。さらに織田の革新的な能力であっという間に従業員数も増加し、有名企業となる未来が待っている。



 ※※※



 5人で合コンを開いたこともあった。豊臣がどこからか女性陣を呼んできてセッティングしてくれる。

「はーい♪ では今日の出会いに乾杯だっ!」と豊臣。

 大体初見で一番人気は上杉である。優しくて思いやりがあり、なおかつ芯がある。

「上杉さんは休日に何をされているのですか?」

「寺に行って坐禅を組んでいる」


 シーン


「そ……そうなんですね! あ、織田さんってクールでかっこいいです!」

 織田は長身で切れ長の目元をしており、上杉同様に人気がある。

「クールでかっこいいだと? そんなの当たり前だ。俺はその上をゆく」


 シーン


「あ! 俺はねぇ……テーマパークでも映画でも買い物でもどこでも行くよ〜♪」と豊臣。しかしノリが軽すぎて女性陣からは信用されていない。

「わ……私は映画だとラブラブリー・カーチェイスが好きでして」

「その映画、ロマンがあっていいよな」と武田。

「え? 武田さんってこんなロマンチックな恋愛ものを見るの? 意外!」

「あとはサムライ・ミラクル・チョコタイムも好きだ」

「きゃーすごい! 私もです!」


 武田のイカつい見た目とのギャップに女性陣が盛り上がる。それを静観する徳川。お手洗いに行こうとすると、同じタイミングで女性が立つ。

「私は少しあの雰囲気についていけなくて……恥ずかしいです、徳川さん」

「分かるよ。無理しなくていいんだ。俺もあの中では聞き役さ」


 徳川の落ち着いた雰囲気に心惹かれる女性。静かに微笑む彼。この後2人はこっそり抜け出して付き合いを始めることになるが、結局「気が利かない」「普通すぎてつまらない」という理由で徳川は彼女から別れを切り出されるのだった。


 そういうことで、武田だけは彼女がいるが(複数人)、他のメンバーはなかなか恋愛が成就しない(武田も厳密には一人に絞りきれていないので成就とは言いづらい)。よって豊臣がしょっちゅう合コンをセッティングしてくれる。


「よくそんなに次から次へと合コンができるな」と徳川。

「そりゃあね〜『お姉さん綺麗だね! 俺の仲間もツワモノ揃いだよっ♪ 一度乾杯しに行こうぜ!』って俺が言えば大概はね♪ 合コンも一種のコミュニケーションさ! 宴を楽しんで行こうぜい!」と豊臣。

「おかげで彼女とのデートが絶えないぜ」と武田。

「義の心、いつかわかる女性が現れるのだろうか……」と上杉。


 織田はそんな4人に対して言う。

「まずはこの会社を軌道に乗せるところからだ。結果は後でついてくる。女性にかまっている暇があれば精進だ」

 それを聞いた4人は背筋が伸びる思いであった。織田についていく。自分たちに何が待っていようと織田を信じる……!


「はいっ! 承知しました! ところで明後日の合コンなんだけどさー」

「お前……懲りないな」



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