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第12話 異常な圧力を吹っ飛ばせ

 休職中のプロジェクトマネージャー村井の自宅前に、黒スーツの大柄の男。オレンジ色のネクタイをつけており、ニタニタした顔つきだがその表情は怒りに満ちている。

「俺が渡した本はどうなった?」といきなり村井の胸ぐらを掴んできた。


「待て! お前……何者だ?」とシンゲン。

「あのような義に反する書物を与えるとは言語道断!」とケンシン。

 すると大柄の男が2人の侍を見て言う。

「まぁ、腹は立つが俺の本の消滅は想定内だ。俺の目的はスーツ侍、お前たちだ! ボスに言われてんだよ。お前らを倒すようにってな! 外で勝負だ!」


 シンゲンとケンシンが男を追う。男は宙に浮き、黒いスーツにオレンジのマントを翻した姿に早変わりした。

「ハッハッハ! 俺はミスター・ハイプレッシャー。ブラック企業団の幹部さ。プレッシャーは成長に必須。企業ってのは業績向上のためなら構成員を操作することだって許されるのだ! 休職している奴など組織に不要」


「少しのプレッシャーは成長に貢献するとも言われておる。だが度を超えた圧力は能率を下げるのみ! 紅の技術戦士、スーツ侍・シンゲン! プロジェクト管理を邪魔をする者は排除する!」

 そう言ってシンゲンが風林火山と書かれた盾を構える。


「ほう。技術戦士か。ではこれはどうかな? モチベーション・メガホン!」

 大きなメガホンでキーンという音を鳴らして侍たちを混乱させる。さらに『やればできる……やらねばならぬ』という声が聞こえてくる。


「風林火山シールドよ!」シンゲンが盾でどうにか遮ろうとしているがあまりにも喧しい音が響き苦しそうである。

「私が浄化してみせよう……白の人事戦士、スーツ侍・ケンシン! 越後の龍の力よ……義魂ぎこん解放!」

 ケンシンの刀から放たれたパワーにより、メガホンからの騒音が少し収まる。


「フッ……やるな……それならこれはどうだ? プレッシャーバーンズ! 燃え尽きるぐらい働くのが正義!」

 ハイプレッシャーの手から炎が放出される。再びシンゲンが盾を使いながら必殺技を放った。

「甲斐の虎よ……我に力を! 風林火山・合理ロジカル調整アジャスト!」


 シンゲンの盾から強風が舞い上がり炎を打ち消していく。

「一生懸命になることは良きことだが、燃え尽きてしまっては意味がない……第一に各人の様子を見ること! その上で業務は進捗してゆくものだ!」


 プレッシャーバーンズの力が弱まってゆき、ミスター・ハイプレッシャーが悔しそうにしている。

「こいつら……仕方ない。今日は見逃してやる!」

 そう言って彼は姿を消した。


「……ブラック企業団幹部と言っておったな」とシンゲンが呟く。

「それにボスに我々を倒すように言われているとも……」とケンシン。ブラック企業団幹部が言うボスとは一体何者だろうか。



 ※※※



「これでブラック企業団幹部が2人、姿を見せましたね。ミスター・KPI、そしてミスター・ハイプレッシャー。さらに組織のブラック化だけでなく、スーツ侍の討伐も目標に掲げている」

 映像を見ながら黒田が整理していく。


「幹部はなかなか強い……俺たちを混乱させたり直接攻撃する力も持っておる」と武田。

「しかも働く者の弱った心に入ってくるような、狡猾的なやり方だ」と上杉。

「俺も社長の怒号のような攻撃を受けてさぁ」と豊臣。

「おい、それなら耐性をつけてやろうか?」と社長の織田に言われ「いやぁぁ、結構ですー!」と徳川の後ろに隠れる豊臣。


「今までのパターンを考えると……幹部は4人ぐらいいるような気がするな」と徳川が考える。

「何故4人だと?」と織田。

「KPIもハイプレッシャーも何となくだが……管理職や業績面といった要素がある。だが組織が成立するには一般職や管理面に強いメンバーだって必要なはず」


 徳川の静かなる分析に皆が頷く。

「確かにそうですね……4人の幹部に1人のボス。スーツ侍と同じような体制かもしれません」と黒田。

「ますます気になるな……目的は異なるが俺たちと似たようなチームかもしれぬということだな」と武田。



 ※※※



「ミスター・KPI、ミスター・ハイプレッシャー……これはどういうことだ?」

 ブラック企業団のボスが2人を鬼の形相で睨みつける。

「誠に申し訳ございません。作戦を練り直して次こそは」とKPIが言うが、「いつまでも次があるとは思うなよ」とボスが冷たく言い放つ。この組織こそブラック化しているかのよう。


「スーツ侍ですが……複数人一緒に現れることもあるようです」とミスター・ハイプレッシャーがこの空気感を変えようと話し出す。

「フフ……何人だろうが関係ない。我らブラック企業団にかなう者などおらぬ」とボスの低い声が気味悪く響く。


 すると「ボス」と呼ぶ女性の声。

 そこにいるのはミス・タイムクラッシャーと彼女にそっくりな女性であった。タイム・クラッシャーが青いマントを身につけているのに対し、もう1人は赤いマントを羽織っている。

「「あたし達は2人でひとつ。このタイム姉妹にお任せを!」」


 最強かつ最低な時間管理、とも言われた双子のタイム姉妹がブラック企業化……そしてスーツ侍を狙いにゆく。

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