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第11話 ヴィーナを探せ



学院内での生活が始まってからしばらく経った頃、第1王子アルフォルス、第2王子ハロルド、第3王子アレスターの三人は、一人の謎の少女「ヴィーナ」に強い興味を抱くようになっていた。彼女の気高い美しさと堂々たる態度は、彼らの心を掴んで離さなかった。


「ヴィーナ……一体何者なんだ?」

アルフォルスは、ヴィーナの正体を知りたくてたまらず、学院のあらゆる場所で彼女を探し始めた。中庭や廊下、どこを歩いても彼女の姿を見つけることができなかった。


一方、ハロルドもまた、図書館やカフェテリアなど、人が集まる場所で彼女を探したが、ヴィーナの姿はどこにもなかった。

「ヴィーナ……その名前を口にするたび、胸が高鳴る。もう一度会いたい……」


アレスターは、友人たちにヴィーナのことを聞いて回り、情報を集めようと必死だった。

「彼女にもう一度会いたい……なぜ私たちをあそこまで非難したのか、その理由を知りたい」

しかし、誰も彼女の正体を知っている者はいなかった。


三人の王子たちは、どうしてもヴィーナの正体を突き止めたい一心で、ついには大胆な計画を立てることにした。




「名簿に彼女の名前が載っていれば……」

三人は学院の職員室に忍び込み、学生名簿を盗み見るという作戦を企てた。夜遅く、こっそりと学院の職員室に潜入し、引き出しを探し始めた。


しかし、暗闇の中での作業は思ったよりも困難で、ついに名簿を取り落としてしまう。床に散乱した名簿を拾うことさえできず、慌ててその場を立ち去るしかなかった。結局、彼らの計画は失敗に終わった。




翌日、中庭で休憩をとっていたアルフォルス、ハロルド、アレスターは、偶然ミラと出会った。昨夜の失敗の記憶が鮮明に残る三人は、できるだけ平静を装っていたが、ミラが話しかけてくる。


「昨夜、職員室に忍び込んだ不埒者がいたらしいですわ」

ミラの言葉に、三人は一瞬息を呑んだが、すぐに冷静を装った。


「へ、へー、そいつはけしからんな!」

アルフォルスがぎこちなく答える。


ミラは続けて言った。「どうやら、学生名簿を盗み見しようとしたらしいですわ。とても恐ろしいことですわよね」

ミラの表情はどこか微笑んでいるように見えたが、王子たちはその意味に気づかなかった。彼女が必死に笑いをこらえているとは思いもよらず、むしろミラが賊に怯えていると思い込んだ。


「ホー?どうしてそれがわかったのだ?」

ハロルドが不安を隠しつつ尋ねた。


「名簿が引き出しから落ちて散乱していたそうですわ。証拠を残すなんて間抜けな賊ですわね」

ミラは笑顔で答えた。


「ほ、ほ、本当に間抜けなやつだ……」

アレスターが汗を拭いながら同意する。


その場にいた三人は、それぞれに動揺していたが、ミラはその反応を楽しむかのように微笑みながら告げた。


「ところで、殿下、ご存知ですか?学院の生徒名簿は、申請さえすれば誰でも閲覧可能なのですわ」


「え?」

アルフォルスが驚く。


「ええ?」

ハロルドも目を見開いた。


「えーっ!」

アレスターが叫んだ。


ミラはクスクスと笑い出しながら、「ご自分たちの立場を考えて、行動なさってくださいませ」と一言残して、その場を立ち去った。




ミラが去った後、王子たちは自分たちの行動が露見していたことに気づき、無力感に襲われた。


「まさか……あのミラに気づかれていたとは……」

アルフォルスは悔しそうに呟いた。


「ヴィーナの正体を突き止めたいのに、ますます遠ざかっている気がする……」

ハロルドも肩を落とした。


「だが、もっと知りたいんだ。あのヴィーナという少女の正体を……」

アレスターもまた、彼女への興味をさらに募らせていた。


彼らの探求はまだ始まったばかりだった。ヴィーナの正体を知りたいという欲求はますます強くなり、三人はこれからも様々な手段で彼女に迫ろうと考えていた。


こうして、学院生活は新たな波乱を迎えつつあった。



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