学院内での生活が始まってからしばらく経った頃、第1王子アルフォルス、第2王子ハロルド、第3王子アレスターの三人は、一人の謎の少女「ヴィーナ」に強い興味を抱くようになっていた。彼女の気高い美しさと堂々たる態度は、彼らの心を掴んで離さなかった。
「ヴィーナ……一体何者なんだ?」
アルフォルスは、ヴィーナの正体を知りたくてたまらず、学院のあらゆる場所で彼女を探し始めた。中庭や廊下、どこを歩いても彼女の姿を見つけることができなかった。
一方、ハロルドもまた、図書館やカフェテリアなど、人が集まる場所で彼女を探したが、ヴィーナの姿はどこにもなかった。
「ヴィーナ……その名前を口にするたび、胸が高鳴る。もう一度会いたい……」
アレスターは、友人たちにヴィーナのことを聞いて回り、情報を集めようと必死だった。
「彼女にもう一度会いたい……なぜ私たちをあそこまで非難したのか、その理由を知りたい」
しかし、誰も彼女の正体を知っている者はいなかった。
三人の王子たちは、どうしてもヴィーナの正体を突き止めたい一心で、ついには大胆な計画を立てることにした。
「名簿に彼女の名前が載っていれば……」
三人は学院の職員室に忍び込み、学生名簿を盗み見るという作戦を企てた。夜遅く、こっそりと学院の職員室に潜入し、引き出しを探し始めた。
しかし、暗闇の中での作業は思ったよりも困難で、ついに名簿を取り落としてしまう。床に散乱した名簿を拾うことさえできず、慌ててその場を立ち去るしかなかった。結局、彼らの計画は失敗に終わった。
翌日、中庭で休憩をとっていたアルフォルス、ハロルド、アレスターは、偶然ミラと出会った。昨夜の失敗の記憶が鮮明に残る三人は、できるだけ平静を装っていたが、ミラが話しかけてくる。
「昨夜、職員室に忍び込んだ不埒者がいたらしいですわ」
ミラの言葉に、三人は一瞬息を呑んだが、すぐに冷静を装った。
「へ、へー、そいつはけしからんな!」
アルフォルスがぎこちなく答える。
ミラは続けて言った。「どうやら、学生名簿を盗み見しようとしたらしいですわ。とても恐ろしいことですわよね」
ミラの表情はどこか微笑んでいるように見えたが、王子たちはその意味に気づかなかった。彼女が必死に笑いをこらえているとは思いもよらず、むしろミラが賊に怯えていると思い込んだ。
「ホー?どうしてそれがわかったのだ?」
ハロルドが不安を隠しつつ尋ねた。
「名簿が引き出しから落ちて散乱していたそうですわ。証拠を残すなんて間抜けな賊ですわね」
ミラは笑顔で答えた。
「ほ、ほ、本当に間抜けなやつだ……」
アレスターが汗を拭いながら同意する。
その場にいた三人は、それぞれに動揺していたが、ミラはその反応を楽しむかのように微笑みながら告げた。
「ところで、殿下、ご存知ですか?学院の生徒名簿は、申請さえすれば誰でも閲覧可能なのですわ」
「え?」
アルフォルスが驚く。
「ええ?」
ハロルドも目を見開いた。
「えーっ!」
アレスターが叫んだ。
ミラはクスクスと笑い出しながら、「ご自分たちの立場を考えて、行動なさってくださいませ」と一言残して、その場を立ち去った。
ミラが去った後、王子たちは自分たちの行動が露見していたことに気づき、無力感に襲われた。
「まさか……あのミラに気づかれていたとは……」
アルフォルスは悔しそうに呟いた。
「ヴィーナの正体を突き止めたいのに、ますます遠ざかっている気がする……」
ハロルドも肩を落とした。
「だが、もっと知りたいんだ。あのヴィーナという少女の正体を……」
アレスターもまた、彼女への興味をさらに募らせていた。
彼らの探求はまだ始まったばかりだった。ヴィーナの正体を知りたいという欲求はますます強くなり、三人はこれからも様々な手段で彼女に迫ろうと考えていた。
こうして、学院生活は新たな波乱を迎えつつあった。