ミラは学院で新しい友人たちと楽しく過ごしていたが、王子たちとの間には微妙な関係があった。
ある日、学院での授業後に友人たちと図書館で時間を過ごしていた時、王子たちが現れた。
王子たちは見下すような態度を取りながら自分たちのクラスメイトである下位貴族の男子生徒たちを引き連れていた。
王子たちは大声で下位貴族を馬鹿にするような発言を繰り返し、その場にいる友人たちも不快そうな表情を浮かべていた。
ミラは王子たちの態度に腹を立てつつも、友人たちを守るために静かにしていた。
友人たちの一人が我慢できなくなり、王子たちに向かって
「貴族でも人間として
王子たちは激怒して友人たちとミラに対して敵意をむき出しにした。
ミラは友人たちを守るため王子たちとの間に立ちはだかる壁を感じながらも冷静に対応しようと心に決めた。
実のところ文句を怒涛のように浴びせてやりたかったが、王子相手ではそうもいかない。
そんな日々のある夜、ミラは王子たちの横暴に悩んでいた。
「誰か、バカ王子にお灸を据えてくれないかしら」
王子相手では教師たちも何もの品性が欠けているようでは困りますね」
と言い放った。言えないだろう。
ミラの能力で実力行使なんてやってたら最後、もう普通の生活には戻れないだろう。
「どこから謎の正義の味方でも現れないかしら?現れないわね…」
「君が正義の味方になればいい」
「はい?ゼクスなの?」
「すまない。普段はできるだけ君のプライバシーには干渉しないように思っていたのだが、君があまりにも苦しそうだったので、許してもらえるならある提案をしたい」
「私に正義の味方になれと?仮面でもつけてなんとか仮面ってやるの?恥ずかしいよ」
「仮面など不要だ。別人になればいい」
「別人?」
その日のお昼休みにベンチで友人たちと談笑しているとアルフォルス、ハロルド、アレスター王子たちが現れた。
「邪魔だ。どけ下級ども!」ミラの前までやってくる。
「そんな下級共は、あなたに相応しくない。我々と来たまえ。休み時間のひとときをともに楽しく過ごそうではないか」
ミラは困った表情を浮かべるが、何も答えない。
「殿下、おやめください。ミラ様がお困りです」
「うるさい。関係ないやつは、ひっこんでろ」
「関係ある。僕は、友人だ」
「下級が、うるさい!」
アルフォルス王子が思わず手を上げかける。
「おやめなさい」
王子たちの後ろから凛とした声がかけられた。
振り向くと、キリリッとした容貌の美少女が立っていた。
ミラとは、ベクトルが180度違う美少女だ。
褐色の肌に黒髪のロングポニーテール。
王子たちもが一瞬見惚れる。
学院の制服を着ているが、誰も彼女を知らなかった。
「だれ?」
「知ってる?」
「無謀な」
ざわめきがおこる。
「俺たちに言ってるのか!」
「俺たちを王子と知って言ってるのか?」
「生意気な女め!名と家名を名乗れ」
「ヴィーナ・キュアだ」
「知らんな」
アレスター王子が殴りかかる。
ヴィーナはその腕を払い上げてかわし、腕をつかみ、アレスターを投げ飛ばす。
王子の体がふわりと宙を舞う。
しかし、それは怪我をさせないように手加減された投げであった。
アレスターは尻もちをついた格好で、ゆっくりと地面に落とされていた。
ダメージはないが、ひどくカッコ悪い。
周りから失笑が漏れている。
次にハロルド王子が飛びかかるが、足をかけられ転倒する。ヴィーナはハロルドの襟首をつかんで落下速度を抑えてそっと地面に落とす。四つん這いにさせられる。
これも酷くカッコ悪い。
「くっそー」
そしてアルフォルス王子が殴りかかるが、手をねじりあげられ地面に押し付けられ、地面にキスする格好にさせられる。
「王子というのは、すべての貴族たちの子弟の規範でなければならないはずよ。それにここにいる生徒たちは、将来あなたが国王になったとき、あなたを助け国を支える人材たち。そのことを考えて接するべき。それがわかっていないあなたたちにはお仕置きが必要ね。
お仕置きといえばおしりペンペンです」
ヴィーナは、3人を尻叩きにする。
周りからは失笑ではなく、爆笑が起きていた。
爆笑の中、ヴィーナは去っていった。
その爆笑の渦の中にミラはいなかったが、それに気がつく者はいなかった。
王子たちはあまりのカッコ悪さに退散していく。
王子たちは、あんまりの醜態をさらしてから、すっかりおとなしくなった。
後日、生徒たちや王子たちがヴィーナを探すが、誰も彼女を見つけられなかった。
当然である。
ヴィーナはミラが変身した姿なのだから。
ゼクスからもらった変身能力で姿を変えている。
しかも二人は似ても似つかぬ容貌である。
その正体にたどり着ける者などいないだろう。
「変身能力って便利ね。仮面をつけてやってたら、正体探しみたいなことになりかねない。ヴィーナは素顔さらしていても見つからないもの。これって実在する誰かにも化けられる?」
「もちろんだ」
「おっかない能力ね、悪用し放題じゃない?」
「そうだな。だから、そんな