アリア救出対策本部:始動
アリアが誘拐された知らせを受け、ミラたちは全力で対応を始めた。
アルスランド公爵邸のミラの部屋が臨時の対策本部として利用され、そこで仲間たちは状況の確認と作戦の立案に取り組んでいた。
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ミラの提案
「今もっとも有効なのは、クラリス様のシノビによる追跡です。追跡はシノビの皆さんにお願いして、私たちはアリアちゃんの居場所が判明次第、即座に救出に動ける準備を整えましょう。」
ミラが提案し、全員が真剣な表情で頷いた。
部屋の中には、地図や目撃情報が記された資料が広げられ、緊張感が漂っていた。その中で、ミラはそれぞれの得意分野を活かした役割を割り振っていく。
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突然の訪問者:シノビのハンゾウ
対策本部の準備が整い始めた時、メイドのエルザが不意に動きを止め、手にしたモップを振り下ろした。何もない空間に向かって放たれたその一撃は、空中で金属音を立て、小刀を持つ黒装束の男を暴き出した。
「曲者!」
エルザが鋭い声で叫ぶ。
現れたのは、クラリスの諜報機関「シノビ」の隊長ハンゾウだった。彼は小刀を下ろしながら低い声で言う。「クラリス様の指示により参上いたしました。」
「エルザ、その方は客人です。」ミラが制止する。
エルザは一瞬戸惑いながらも頭を下げた。「失礼しました。気配を消して侵入されたので、つい…」
『ただのメイドとは思えない…。』ハンゾウは内心でエルザの実力に驚いていた。
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各自の役割
ミラは改めて指示を出した。「今のところシノビによる追跡が最優先ですが、私たちも救出準備を進めます。皆さん、役割分担を確認してください。」
クラリスのシノビ
クラリスは冷静な口調で命じた。「シノビには不審な馬車の追跡を続けさせます。ハンゾウ、進展があればすぐに報告を。」
「御意。」ハンゾウは再び姿を消した。
クラリスはさらに直属部隊「カゲ」の隊長サイゾウを召喚し、追加の追跡指示を出した。
「遠路ご苦労。すぐに活動を開始して、不審者の洗い出しを。」
「御意。」
ヒルデガルドの騎士団
一方、ヒルデガルドはノイエシュタイト重装機動騎士団を招集。「王都の周辺を包囲し、逃亡経路を封鎖する準備を進めます。」
セシリアと冒険者ギルド
セシリアは冒険者ギルドに向かい、ギルドマスターのバイアスに依頼を申し出た。
「現在、Aランク以上の冒険者チームを全て招集してください。」
バイアスは困惑した表情で答えた。「申し訳ありませんが、半数以上が他の依頼に出ており…」
「違約金はこちらで負担します。」セシリアは言葉を遮り、執事バトラーに札束を準備させた。
バイアスはさらに渋るが、セシリアはテーブルに札束を叩きつけながら迫る。「緊急依頼です!私の領地を売り払ってでも協力をお願いしたい!」
その勢いに押されたバイアスは、やむを得ず頷いた。「わかりました、全力で対応いたします。」
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ミラの国王への直談判
王城に到着したミラは、すぐに国王との面会を求めた。
重々しい扉が開き、国王の前に進み出る。
「改まって何事か?」国王が尋ねる。
ミラは跪き、「陛下、友人であるアリア・ブランシュール子爵令嬢が誘拐されました。王国第一騎士団の力をお借りしたいのです。」と切り出した。
「アリアが誘拐されたのか?」国王は驚愕し、目を見開く。
ミラは疑問を抱きながらも尋ねた。「陛下はアリアちゃんをご存じなのですか?」
国王は重い口調で答えた。「うむ、アリア嬢の能力を秘匿させているのは余だ。その力が公になることを避けるため、密かに監視してきた。」
「能力?」ミラは疑問を重ねる。
国王は続けた。「あの力は、この国の未来を大きく左右するものだ。故に外部の者に知られるわけにはいかない。」
ミラは拳を握り締めた。「それならなおさら、早急に救出しなければなりません。」
国王は深く頷き、「王国第一騎士団を全てそなたの指揮下に置こう。だが、一つだけ条件がある。」
「条件とは?」ミラが尋ねる。
「アリア嬢を救出した後、彼女の力をどう扱うべきか、そなたと相談したい。」
ミラは深く息を吸い込み、頭を下げた。「承知しました。必ずアリアちゃんを救い出し、報告いたします。」
「頼むぞ、ミラ。」
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全力の準備が整う
ミラが王城から戻ると、王国第一騎士団、ノイエシュタイト重装機動騎士団、アーバンフェイム諜報機関のシノビ、そして冒険者ギルドの精鋭たちが全て動き出していた。
ミラは改めて全員を前に、力強く言った。「皆さん、これはアリアちゃんを救うだけでなく、この国の未来を守るための戦いです。全員の力を貸してください!」
全員が声を揃えて応える。「はっ!」
こうして、アリア救出作戦が本格的に始動した。