夜明けの光が差し込む中、王城にミラ、ヒルデガルト、クラリス、セシリア、アリシア、キャナル、そしてアリアが招集された。
アリシアは初めての登城に緊張しっぱなしで、その様子は誰の目にも明らかだった。
「ど、どうしましょう、セシリア様。私、王城に上がるの初めてで、しかも国王陛下に拝謁するなんて…!」
アリシアは声を震わせて訴えた。
セシリアは彼女を落ち着かせるように微笑みながら答える。
「落ち着いて、アリシア様。拝謁といっても、これは非公式なものだから、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。国王陛下はとても寛大な方だから。」
しかし、セシリア自身も二度目の登城で内心は緊張を隠しきれていない。
「そ、そうかもしれないけど…」とアリシアが不安げに続ける。
「でも、非公式ってことは、逆に距離が近いんじゃ…?」
その言葉に、セシリアも思わず手を握り返しながら応じる。
「そ、そうかもね…」
二人は互いに顔を見合わせ、手を取り合って同時に叫んだ。
「どうしましょう!!!」
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国王への報告
王城の広間で、ミラたちは国王の前に整列し、ひざまずいた。
国王は一同を見渡し、まずクラリスに向かって声をかけた。
「クラリス嬢、アーバンフェイム諜報機関の調査結果を報告してくれるか?」
クラリスは一歩前に出て、冷静な声で報告を始めた。
「はい。ダリウスの動機は個人的な復讐心によるものでした。彼はアリア嬢を利用し、ブランシュール家を破滅させる計画を立てていました。また、この事件には多くの協力者が関与しており、特に貴族の中からも関与者が多数判明しております。」
彼女が読み上げたリストには、名の知れた貴族たちの名前が並んでいた。
「陛下、ここに挙げた方々は裏付けが取れた者たちです。それ以外にも現在調査中の者が十数名おります。」
国王は重々しく頷き、深刻な表情で口を開いた。
「今回の事件にはアリア嬢の能力が大きく関係している。これから話すことは、この場限りのことで他言無用である。」
一同は緊張感を増しながら、静かに同意した。
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アリアの能力の真実
国王は言葉を選びながら語り始めた。
「アリア嬢が持つスキルは『知識の井戸』というものだ。この能力は、あらゆる世界から知識を汲み上げ、それを自分のものとして利用できる。そして、その知識を実体化し、物質として再現することすら可能だ。」
その言葉に、ヒルデガルトが驚きの声を上げる。
「物質を再現…ですか?」
国王は頷き、具体例を挙げた。
「例えば、この世界では治療不可能な病でも、異世界で治療可能な薬品を再現することができる。だが、それだけではない。核兵器、細菌兵器、化学兵器といった危険なものも作り出すことが可能だ。」
「核?細菌?化学?」
ヒルデガルト、クラリス、セシリア、アリシアはその単語に困惑した表情を浮かべたが、ミラだけは違った。
「そのすべてがどれほど恐ろしいものか、理解できます。彼女の能力の存在そのものが、非常に大きなリスクです。」
国王は深々とうなずき、重い口調で言葉を続けた。
「そうだ。アリア嬢の能力は国の宝であると同時に、最大の脅威でもある。彼女を守るため、そしてこの能力が悪用されないようにするためには、我々全員が協力しなければならない。」
ヒルデガルトが力強く答えた。
「陛下、ご安心ください。私たちが全力でアリア嬢をお守りします。」
セシリアも続けた。
「どんな敵が来ようと、この能力を悪用させるわけにはいきません。」
クラリスも冷静に宣言する。
「この国の未来のために、私たちの全てをかけてアリア様をお守りします。」
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和やかなひととき
国王が感謝の言葉を述べた後、場の空気が少しだけ和らいだ。
セシリアがキャナルに向かって軽く頭を下げた。
「キャナル様、今までの過保護はアリア様の能力を守るためだったのですね。私、誤解していました。申し訳ありません。」
すると、アリアが真剣な顔で即答した。
「あれはただのシスコン。正直、かなり迷惑。」
「アリア~!!」
キャナルは抗議の声を上げたが、場の全員が吹き出してしまった。
その瞬間、緊張に包まれていた部屋の空気は一気に和らぎ、笑顔が広がった。
ミラはその光景を見つめながら、心の中で誓った。
「アリアちゃんの未来を守るため、私たち全員で力を尽くすわ。」
アリアを中心に広がる新たな絆が、彼女たちの新たな冒険の幕開けを予感させていた。