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第58話 アリア救出作戦



深夜、王都にあるアルスランド公爵邸の一室では、ミラたちが集まり最終的な作戦会議を行っていた。テーブルの上には詳細な地図が広げられ、救出作戦に必要な情報が全て共有されていた。


「ハンゾウからの情報によると、アリアちゃんはこの廃屋に囚われているようです。この場所は高い壁に囲まれ、周囲には見張りが配置されています。しかし、彼らがどれほど守りを固めようと、私たちは必ずアリアちゃんを救い出します!」

ミラの強い決意に、全員が頷き応えた。



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分担と役割の確認


「まず、作戦の概要を説明します」

ミラは地図を指しながら続けた。

「第一騎士団とノイエシュタイト重装機動騎士団の皆さんには、外周の敵勢力を殲滅していただきます。敵の逃亡を防ぐために、冒険者パーティーには周囲の確保と逃げる者の捕縛をお願いします。シノビの皆さんは、アジト内部の証拠品を押収し、関係者を洗い出してください。そして、アリアちゃんの救出はカゲの部隊と私が手配したエージェントにお任せします。」


ヒルデガルトが剣を握りしめて力強く応じた。

「ノイエシュタイトの騎士団は全力で戦うわ。誰一人逃がさない。」


セシリアも冷静に、

「冒険者パーティーは既に待機しています。逃げる者は全て捕らえます。」


クラリスがシノビたちを見渡しながら静かに言った。

「アジト内部の情報を全て手に入れます。証拠品は全て押収し、犯行の全容を明らかにするわ。」


それぞれの役割が明確になり、全員が自らの使命を胸に刻んだ。



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キャナルの懇願


カゲやシノビが突入の準備を進めている中、キャナルが駆け寄ってきた。

「待ってください!私も、私も連れて行ってください!」

彼女の声には切実な思いが込められていた。


ミラはキャナルを正面から見つめ、冷静に言った。

「キャナル様、あなたの気持ちはわかります。でも、キャナル様が怪我をしたらアリアちゃんが悲しみます。それは避けなければなりません。」


「でも、ミラ様…アリアが心配で…」

キャナルの目には涙が浮かび、声が震えていた。


ミラは優しく語りかけるように言った。

「ご理解ください。アリアちゃんは必ず私たちが救い出します。そのためにも、キャナル様はここで待機してください。」


キャナルは何度も首を振り、涙ながらに訴えた。

「それでも、行かなきゃ…アリアを助けに行かないと…!」


ミラは深く息を吸い込み、キャナルの肩に手を置いて短く謝罪した。

「申し訳ありません。これ以上議論している時間はありません。」



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アリシアの足止め


ミラが他の仲間と共に行動を開始すると、キャナルはその場で焦燥感に駆られた。

「待って、一人でも行く!」

彼女が走り出そうとした瞬間、アリシアが後ろから羽交い締めにした。


「アリシア様?なんで…離してください!アリアを助けに行かないと!」

キャナルはもがきながら叫んだ。アリシアは冷静に言った。

「私の役割は、キャナル様をアジトに突入させない足止め役です。」


「お願いです、離して!」

キャナルは必死に抗ったが、アリシアの腕は鋼鉄のように動かなかった。


「ダメです。救出は、信頼できる仲間たちに任せておけば安心ですよ。」

毅然とした態度でアリシアはキャナルを抑え続けた。


「それでも、行きたい!」

キャナルの叫びに、アリシアは淡々と答えた。

「無駄です。私は捕縛術が得意なんです。」


さらにキャナルが暴れると、アリシアはわずかに力を込めた。

「暴れないでください。締めちゃいますよ。」


「え?あっ…」

キャナルはそのまま失神してしまった。


アリシアは焦った様子で呟いた。

「あら、力を入れすぎちゃったかしら…。でも、これで大人しくなっていただけるなら良しとしましょう。」


彼女はキャナルをそっと椅子に横たえ、作戦の成功を祈りながら他の仲間たちの無事を願った。



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決戦の準備


一方、ミラを中心とした救出隊はそれぞれの持ち場に向かい、準備を整えていた。

「時間がないわ。皆、それぞれの役割を果たしてください。」

ミラの指示に従い、ヒルデガルトは騎士団を率いてアジト周辺を包囲。セシリアは冒険者パーティーと共に逃亡者を追跡するため待機。クラリスのシノビたちはアジト内部の調査と証拠品押収に全力を注いでいた。


そして、アリア救出のための突入部隊が静かに動き始めた。


夜の闇の中で、彼らの影が徐々にアジトを包囲していく――アリア救出のための戦いが、今まさに始まろうとしていた。




夜の闇が広がる中、誘拐団のアジトでは異様な緊張感が漂っていた。周囲には王国第一騎士団とノイエシュタイト重装機動騎士団が包囲を固め、刻一刻と迫る脅威に、誘拐団の首領ダリウスは苛立ちを隠せなかった。



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包囲網の開始


「ボス、大変です!」

息を切らしながら部下が駆け込んできた。

「何事だ?」

冷静さを装うダリウスの声に、部下は焦燥を滲ませて答えた。

「アジトが王国第一騎士団とノイエシュタイトの騎士団に包囲されています!」


ダリウスは目を鋭く光らせた。

「何だと…?なぜノイエシュタイトまで出てきている?それにしても動きが早すぎる。誰がこんな短時間で包囲網を敷ける?」


しかし、ダリウスは知らなかった。その時すでにアジト内部には、アーバンフェイム諜報機関の特捜部隊シノビ、直属部隊カゲ、さらに褐色の影と呼ばれるエージェント、ヴィーナが侵入していたのだ。



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内部の制圧


シノビとカゲの部隊は、暗闇を味方に迅速な動きで敵を制圧していった。

「影の如く、静かに動け。目標を確実に仕留めるのだ。」

ハンゾウの指示でシノビたちは次々とターゲットを無力化していった。


一方で、カゲのメンバーは無音で現れ、敵を一瞬で制圧。彼らの動きはまるで影そのもので、誘拐団の者たちは対応する間もなく倒されていく。


さらに、ヴィーナがアジト内の深部へと進入していた。疾風のごとく動き、敵を次々と倒していくその姿に、カゲのリーダーであるサイゾウは驚きを隠せなかった。

「あれがミラ様のエージェントか…我らカゲを追い抜くとは、ただ者ではない。」


ヴィーナは目にも止まらぬ速さで敵陣を突破し、アジトの中心へと迫っていた。



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ダリウスの混乱


「いったい何が起きているんだ…?」

ダリウスは焦燥を隠しきれず、部下たちに怒鳴った。しかし誰も答えることができなかった。次々と仲間が倒されていく中、ダリウスの計画は崩壊しつつあった。



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外部の殲滅


外部では、ヒルデガルトが甲冑に身を包み、騎馬に乗り先陣を指揮していた。

「作戦など無用だ!力と数で愚か者たちを押しつぶせ!」

その声が響くと同時に、ノイエシュタイト重装機動騎士団が一斉に動き出し、誘拐団の戦力は次々と壊滅していった。


一方、本陣の天幕ではクラリスが戦況を見守りつつ、押収された証拠品の確認を進めていた。積み上げられた書類を手に取りながら、クラリスは冷静に呟く。

「これで、加担した者を全員洗い出せますわ。例え地の果てに逃げても、逃がしはしません。」


背後ではキャナルとアリシアが引き続き押し問答を繰り広げていた。

「行かせてください!アリアを助けに行かないと!」

「ダメです。」

アリシアの冷静な声にキャナルはもがき続けるが、再び意識を失った。

「また失神しましたわね…。アリシア様、本当に容赦ないですわ。」

クラリスは呟きながら、押収された証拠品に再び目を戻した。



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冒険者たちの封鎖


逃げ出した数名の傭兵たちは、小高い丘の上に立つセシリアの冒険者パーティーに行く手を阻まれた。

「悪いけど、ここから先は通行止めよ。」

冷たい声で冒険者のリーダーが告げると、傭兵たちは顔を青ざめさせた。

「くそっ、何だこの包囲網は!」


丘の上では、セシリアが冒険者たちに檄を飛ばしていた。

「皆様、一人残らず捕らえなさい!私の友人を傷つけた者たちを逃すことは許しませんわ!働きに応じてボーナスもたっぷりお出ししますわよ!おっほほほほ!」


その高笑いを聞いた冒険者の一人が耳打ちする。

「どっちが悪役かわからないわね…。」


執事のバトラーは遠くからため息をつき、ぼそりと呟いた。

「お嬢様、少し控えめに…。」



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騎士団の役割


「なあ団長、俺たちの出番、ないんじゃねぇか?」

ガレスがエドワードにぼやいた。


「まあ、そう言うな。予備戦力も立派な任務だ。」

エドワードは微笑みながら答える。

「それに、いつ何が起こるかわからん。この状況で油断は禁物だ。」


「だが、あの連中が本気を出してる今、俺たちが出る幕はない気がするがな。」

ガレスの呟きにエドワードは同意しつつも、騎士たちの士気を保つよう努めていた。



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決戦の行方


誘拐団の抵抗も虚しく、包囲網は一層強化されていった。アリア救出作戦の成功は目前に迫っていたが、敵の首領ダリウスがまだ捕らえられておらず、緊張感は続いていた。




誘拐団の首領ダリウスは、孤立していた。

部下たちは次々と戦闘に駆り出され、誰一人戻ってこない。

部屋は不気味なほど静まり返り、ダリウスの苛立った呼吸音だけが響いている。


その時、不意に背後から静かな声が聞こえた。

「あなたが事件の主犯?」

驚きのあまり振り返ると、そこには褐色の美少女が立っていた。彼女の姿はミラとは異なり、冷静さと確固たる決意に満ちていた。


「誰だ、お前は…?」

ダリウスの声は戸惑いと怒りが入り混じっていた。


「ブランシュール家の者か?」

彼女、ヴィーナは冷ややかに答えた。

「アリア嬢を取り戻しに来た。あなたの計画はすでに失敗している。」


ダリウスは冷笑を浮かべながら、ゆっくりと後ずさる。

「たとえここで私が倒れたとしても、ブランシュール家への復讐は止まらない…」


ヴィーナは一歩ずつダリウスに近づいた。

「それはどうかしら。あなたの部下たちはすべて制圧済みよ。これ以上の抵抗は無意味だわ。」


ダリウスの目が鋭く光り、声を張り上げた。

「簡単に屈すると思うな!」


ヴィーナは短くため息をつきながら低く言った。

「あなたの事情なんてどうでもいい。ただ、やらかした罪を償わせるだけ。」


その瞬間、ダリウスは懐から短剣を取り出し、ヴィーナに向かって突進した。

しかし、その動きは一瞬で封じられた。


ヴィーナの一撃がダリウスの手首を捉え、短剣は無力に床へと落ちた。

「これで終わりよ。」

冷徹に告げると、ヴィーナはダリウスを背後で縛り上げ、カゲの一員に引き渡した。



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アリアとの再会


ダリウスを処理した後、ヴィーナはアリアが監禁されている部屋へ急いだ。

アジト内部はすでに完全に制圧され、抵抗する者はいない。


アリアの部屋の扉を開けた瞬間、ヴィーナはミラの姿に戻った。

ベッドの上で拘束されたアリアの姿を見たミラは、息を飲む。

「なんてひどいことを…」

ミラは駆け寄り、アリアの目隠しと猿ぐつわを外した。


「ミ、ミラ様…」

アリアが辛そうに声を絞り出した。


「待って、すぐに自由にするわ。」

ミラは優しく言いながら、アリアの手足を拘束していた縄を解き始めた。


「ミラ様、は、早く…お願い…こんな姿、姉様が見たら、きっと悲しむ…」


ミラは優しく微笑んで答えた。

「大丈夫よ、キャナル様はここには来られないわ。一緒に外に出て、キャナル様に会いましょう。」


拘束を解き終えたミラは、アリアを優しく抱きしめた。

「ごめんなさい、待たせてしまったわ。でも、もう大丈夫よ。」


アリアは涙を浮かべながらミラの胸に顔を埋めた。

「ミラ様…ありがとうございます…」


ミラはアリアを抱きしめながら、安心させるように優しく語りかけた。

「さあ、一緒に帰りましょう。あなたを待っている人たちがたくさんいるのよ。」



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キャナルとの再会


外に出ると、キャナルが待っていた。

アリアを見つけると、彼女は駆け寄り、涙ながらにアリアを抱きしめた。

「アリア!無事で本当によかった…!」


「ごめん、姉様…心配かけてしまって…」

アリアも涙を流しながら、キャナルにしがみついた。


その様子を見守っていたミラは、安心した笑みを浮かべた。

「これで、一つの危機は去ったわね。でも、まだやるべきことは山積みよ。」



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仲間たちとの勝利の喜び


アリアが無事であることが確認されると、ヒルデガルト、クラリス、セシリアが次々に集まってきた。

全員が安堵の表情を浮かべ、アリアの無事を喜んだ。


「アリア様、本当に無事でよかった。」

ヒルデガルトはしっかりとアリアの肩を抱いた。


クラリスは微笑みながら言った。

「私たち全員であなたを守るためにここにいます。安心してください。」


セシリアも豪快に笑いながら、力強い声で応じた。

「私たちの力をもってすれば、この程度の敵は何でもありませんわ!」


アリアは涙を流しながら、皆に感謝の言葉を述べた。

「皆さん、本当にありがとう。私が無事でいられるのは、皆さんのおかげです。」



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次なる展開への伏線


ミラは再び皆を見渡しながら、静かに言った。

「これでひとまず平穏が戻ったけれど、今回の事件の背後にはまだ何かが隠れているわ。私たちはこれからも協力して、真相を明らかにしなければならない。」


仲間たちはその言葉に深く頷き、さらなる決意を新たにした。

アリア救出作戦は成功に終わったが、この物語はまだ終わりではない。未来にはさらなる試練が待ち受けているのだった。







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