第1章:王城でのパーティー開催決定
ミラは父であるアルスランド公爵の執務室を訪れていた。
「お呼びでしょうか、お父様。」
アルスランド公爵は厳かな表情で頷き、重々しい声で切り出した。
「ウム、今回予定しているパーティーを王城で開催するよう、国王陛下から要請があった。」
ミラの表情が驚きに変わる。
「え?ですが、今回のパーティーはアルスランド公爵家としてではなく、私、ミラ・アルスランド伯爵としての開催です。伯爵主催のパーティーを王城で行うなど、異例すぎませんか?」
公爵は深く息をつきながら答えた。
「確かに異例すぎる。だが、この申し出、お前に拒否権があると思うか?」
ミラは一瞬考え込むも、うなだれて答えた。
「……ございません。」
「では、速やかに準備と調整を進めるのだ。」
「わかりました。明日王城に上がり、関係者様と調整してまいります。」
ミラは頭を下げ、退室した。
このパーティーは、ミラが伯爵に叙爵されてから初めての公式行事である。本来は公爵邸で開催される予定だったが、誘拐事件への謝罪と感謝の意を込めて王城で行われることとなった。
この異例の状況に、ミラは改めて自分の行動の影響の大きさを痛感していた。
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第2章:王城での準備
翌日、ミラは早朝から王城へ向かい、パーティーの準備に取り掛かった。
広大なホールに足を踏み入れた瞬間、その壮麗さと威圧感に圧倒される。
「ここで開催することになるとは……本当に異例ね。」
宮廷スタッフたちと打ち合わせを進めながら、装飾や食事、音楽の手配を決めていく。
「これでみんなに謝罪と感謝の意を伝えられるなら……きちんと準備を整えなければ。」
ミラは自分に言い聞かせるように呟きながら、次々と決定を下していった。
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第3章:国王陛下への挨拶
パーティー開催に先立ち、ミラは国王陛下に挨拶に伺った。
「この度、ご心配をおかけしまして申し訳ございません。また、会場をご提供いただき、心より感謝申し上げます。」
深々と頭を下げるミラに、国王は静かに近寄り、彼女の手を取った。
「そなたが無事で何よりだ。謝罪する必要など一つもない。むしろ国家の要人たるそなたを危険な目にさらした我らの方が詫びねばならぬ。許しておくれ。」
その言葉にミラは恐縮し、平静を保ちながら答えた。
「もったいないお言葉です。今回の件は、私の油断と驕りが原因でございます。」
内心では、『やめてください、すべて私が悪いんですー!』と叫びたかったが、なんとか耐えた。
国王の言葉に少しだけ心が軽くなりつつも、自分の責任を再認識したミラは、感謝の気持ちを込めて深く頭を下げた。
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第4章:パーティー当日
ついにパーティー当日を迎えた。ミラは入口に立ち、招待客一人一人を迎えた。
「ハインツ様、本日はご多忙の中、足をお運びいただきありがとうございます。」
一介の騎士に過ぎない自分の名前を覚えられていることに、ハインツは驚きと感激の表情を浮かべた。
「ミラ様、私の名前まで覚えてくださっているとは……光栄です。」
「皆様のお力添えがあってこそ、今ここに立てているのです。」
ミラは他の招待客にも同様に心を込めた挨拶を続け、彼女の誠実さに感動する声が次々と上がった。
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第5章:感謝と謝罪の宴
パーティーが始まり、ミラは中央に立ち、挨拶を始めた。
「この度、私の不始末により多くの方々にご迷惑をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。そして、私を救出するために尽力してくださった全ての方々に感謝申し上げます。」
その言葉に、会場は温かい拍手で包まれた。
「皆様への感謝を言葉だけでは伝えきれません。そこで、本日は私の一番得意な楽器を演奏させていただきます。」
ミラが取り出したのは、銀色に輝くフルートだった。
深い息を吸い込むと、透明感のある音色がホール全体を包み込んだ。人々はその美しい音色に心を奪われ、息を呑んで耳を傾けた。
演奏が終わると、会場はしばし静寂に包まれ、その後、盛大な拍手が響き渡った。
「ありがとうございます。これからも皆様のご支援に感謝しながら、精一杯努めてまいります。」
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エピローグ:反省と新たな決意
自宅に戻ったミラは、ベッドに倒れ込んで深い息を吐いた。
「やり遂げた……!」
そこにエルザが静かに入ってきた。
「お嬢様、今日の気持ちを忘れずに、これからも慎重に行動してください。」
「分かってるわ、本当に反省してるもの。」
「間違っても、面白がって誘拐されるような真似はしないでください。」
「しないってば!」
ミラとエルザの軽妙なやり取りの中に温かさが溢れ、ミラの決意はさらに固まった。
「これからも皆に支えられながら、しっかりと前を向いて歩んでいこう。」