そんな休日を四人で過ごし、明日からまた学校が始まる。
国光先生はまた李雄先生を
追いかけ回すのだろうか……?
そんな不安を抱えながら迎えた月曜日の
全校集会で新任の先生が紹介された。
名前は薄野和基。
この時は、仲良くなるとは思いもしなかった。
産休の保健医の代わりに来た薄野先生は
まぁ俗に言う『イケメン』で女子達は一発で虜になった。
あの国光先生も……
これで李雄先生へのストーカーが収まればいいけど……
当人の李雄先生は勿論俺や龍也や桜香も
国光先生の行動には疲れた。
そんなある日、龍也が生徒を庇い怪我をして保健室に行った。
それを聞いた俺は学校だと言う事も忘れ保健室へ走った……
そして、保健室のドアを思いっ切り開けた。
薄野先生が居るのも忘れて……
バン!!
「おや、新庄君いらっしゃい」
薄野先生が至って普通な事にびっくりした。
「そんなに慌ててどぉしたの?」
龍也が心配で急いで来たとは言えないし……
俺達の関係を知られる訳にも行かない……
どぉ説明しようか悩んで居ると龍也が言った。
「私の心配をして来てくれたんですよ」
ぁ!! ぉぃ!!
龍也!?
そんな事言ったら変に思われるだろう!?
「九重先生の心配ですか」
ほら、疑問に
思われてるじゃん。
「失礼ですけどお二人の関係は?」
ゃっぱそぉなるよな……
「恋人ですよ」
言っちゃったよ……
薄野先生引いてないかなぁ?
「あぁ、成る程」
ぇ? 薄野先生?
何故納得してるんだ?
「驚かないんですか?」
流石に、龍也も不思議に思ったみたいだ。
「新庄君が保健室のドアを開けた時の慌て方は
教師と生徒の域を超えてると思ったんですよ」
俺はよっぽど慌ててたらしい……
「薄野先生は同性愛を気持ち悪いと思わないんですか?」
龍也の質問は尤もだ。
「別に偏見はないですよ恋愛なんて個人の自由ですし」
今時珍しい答えが聞けたなぁ。
「そぉ言って頂けると嬉しいです」
龍也が綺麗に笑った。
「俺も嬉しいです」
素直な感想だ。
三人で話してると開けっ放しのドアから
桜香と李雄先生が入って来た。
「大丈夫ですか?」
「途軒君に栢山先生心配して来てくれたんですか?」
「えぇ、生徒達が『九重先生が
怪我したらしい』
って言ってたので」
李雄先生が答えてくれた。
「四人は仲がいいんですね」
黙って俺達の会話を聞いてた薄野先生が
楽しそうに言った。
「ぁっ、もしかして栢山先生と途軒君も
恋人同士だったりします?」
ぇっ!?
薄野先生の勘がいいのか、二人が
わかりやすいのかは判らないけどあってる……
「よく分かりましたね」
桜香が感心したように言った。
「ゃっぱり」
薄野先生もあってたのが
嬉しかったのか声が弾んでる。
「入口に立ってないで中に入って下さい」
と言って手招きをした。
幸いだったのは保健室近くの廊下に誰も居なかったことだ。
「ぇぇと、じゃぁお邪魔します」
李雄先生が後ろ手で
ドアを閉めて桜香と一緒に入って来た。
李雄先生と桜香はベッドの上に並んで座った。
「こぉして話すのは初めてですね」
二人が座って薄野先生が口を開いた。
そぉ言えば薄野先生とまともに話すのは初めてかもしれない。
「そぉ言えばそぉですね」
桜香が答えた後、色んな話しをした。
俺達四人の馴れ初めや国光先生のこと。
龍也と桜香が料理上手なこと等。
結局、五時間目はサボった。
龍也と李雄先生はこの時間は授業が無かったらしい。
教師が三人も居るのに誰も咎めないんだから笑えるよな。
流石に、六時間目まではサボれないけど……
なんせ、李雄先生の授業だからだ。
五時間目の終わりのチャイムが鳴った。
「六時間目は俺の授業だから
このまま一緒に教室に行くか」
李雄先生の言葉で俺と桜香は椅子から立った。
「じゃぁ、私はまだ薄野先生とお話してましょう」
ぇ……?
「次も授業ないので」
笑顔で爆弾を投下された。
俺は内心焦りまくりだ。
「授業ないならゆっくりしてって下さい」
薄野先生にまで爆弾投下された……
保健室を三人で出た後、俺は凹んで居た。
「透、元気出して」
桜香に励まされた。
「放課後、また会えるだろう?」
李雄先生まで……
「出来るだけ早く授業終わらせるからそれまでの辛抱だ」
きっと李雄先生のことだから本当に早く
終わらせてくれるんだろうけどやっぱり、心配だ。
しかし、俺の心配など関係なく授業は始まる。
李雄先生や桜香が後で授業内容を教えてくれるから
聞いてなくてもまぁ問題はない。
ということで六時間目は半分放棄することにした。
そして、宣言通り李雄先生は
通常より十五分も早く終わらせてくれた。
「大事な用事があるから今日は早めに終わらす」
李雄先生がそぉ言うと教室のあちこちから
不満げな声が聞こえて来た。
主に女子が不満げだ。
李雄先生と龍也は校内で俺達と
歳が近いことから男女問わず人気者だ。
時々、俺達の恋人なのになんて桜香と話してたりする。
さてと、保健室に行くとするか。
桜香に声を掛けて二人で保健室に向かった。
こっそり出て行く俺達を李雄先生は笑顔で見送ってくれた。
本来ならまだ授業中の為静かな
廊下を桜香と二人で歩いて保健に向かう。
俺達の教室は三階っ保健室は一階。
その距離がもどかしい。
心なしか足が早くなってたらしい。
「そんなに慌てなくても大丈夫だよ」
桜香に指摘された。
冷静で居たつもりだが体は正直みたいだ。
「悪い、歩くの早かったか?」
歩調を桜香に合わせながら訊いてみる。
「何時もよりちょっとだけね」
ぁはは……
苦笑いしか出てこない。
「桜香は薄野先生のことどぉ思う?」
「先生としてはいいと思うけど
多分、人をからかって楽しむタイプっぽいよね」
「透はどぉ思う?」
ぅ~ん……
正直、よく分からない。
読めないっつーか……
「読めないタイプ?」
「ぁぁ、成る程、確かに何考えてるか読めないタイプかもね」
あっさりと肯定する桜香に少しビックリした。
話してる内に保健室に着いた。
ガラガラ
何も言わずにドアを開けた。
「ぉゃ、早かったね」
薄野先生は今がまだ授業中なのに普通に俺達を迎えた入れた。
「途軒君、まだ授業中のはずでは?」
龍也は少し焦った様子で桜香に聞いた。
「栢山先生が心配性の透の為に
他のクラスより早めに終わらせたんですよ」
ニコニコしながら、楽しそうに桜香が答えると
ホッとしたような苦笑いのような顔をした。
「まぁ、立ち話も疲れるだろうから
取り合えず二人共座ったら?」
言われた通り、桜香と並んで
ベッドに座ったら薄野先生がココアを渡して来た。
「有難うございます」と
お礼を言って、二人分ココアを受け取り一口含んだ。
ガラガラ
保健室のドアが開いて李雄先生が入って来た。
「ぉゃ、いらっしゃい
栢山先生も座ったらどぉですか?」
何処からか椅子を持って来て
李雄先生に座るように促した。
「あ、はい、ありがとうございます」
校内で屋上以外の所で四人揃うのは中々ない。
職員室は他の教師が沢山居るし、
教官室は他の生徒も出入りするから
校内でゆっくり四人で集まれるのは屋上くらいだった。
あそこも人目を気にしながらだけど……
椅子を極力俺達の方に寄せて座った李雄先生。
「栢山先生も何か飲みますか?」
こぉして気が利く所も薄野先生が
人気の理由の一つなのかもしれない。
「コーヒー・紅茶・ココアに緑茶・ほうじ茶・煎茶。
何でもありますよ?」
どれだけ品揃えいいんだ……
「それは凄いですね」
俺達の思ってる事を龍也が代弁した。
「じゃぁ……紅茶で……」
李雄先生も迷ったみたいだ。
俺達の時は何も聞かずにココアを出されたから
気にしなかったが、此処まで揃ってるって凄いよな……
本当に保健室か……?
「薄野先生ってお茶好きなんですか?」
ぅぉ!?
桜香直球だなぁ
「学生時代に嵌まってしまってね」
おどけたように肩を竦めながら薄野先生は答えた。
ぃゃ、幾ら嵌まったからって
職場にまでわざわざ持ち込むってある意味凄いな。
「今度、紅茶の美味しいいれ方教えて下さい」
また桜香は……
「ok、いいよ」
薄野先生まで……
「ありがとうございます」
李雄先生は何も言わないけどいいんだろうか?
龍也も何も言わないしまぁいいか……
保健室でそんな話しをしたのが一ヶ月前。
今はというと恒例となった
龍也ん家に集まる
(一人住んでるけど)時に
薄野先生も加わるようになった。