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第12話 屈服

「いた……い、痛いぃ……」

 慎也を受け入れよう――。

 そう思い、体の緊張を緩めた隙をつかれた。

 シャツの裾を再び掴まれ、そのまま力任せに上半身からそれを抜き取られる。服を脱がされ、不安定な姿勢のままベッドに倒れると、慎也の左手が星の足首をしっかり掴んでいた。

「やめ――」

 せめてゆっくりやってほしい――。星の気持ちなど、慎也はお構いなしだ。そのまま生木を裂くように星の足を引っ張り、自分の体に星の下腹部を引き寄せた。

 股関節がちぎれそうだ。全身が肉離れをしたかのように痛む。それでも抵抗できないのは、大きな黒目で自分のもっとも恥ずかしい場所を凝視されているからだ。

(見ないで……)

 見られれば見られるほど、星の本能は硬度を増していく。いやだ、やめろと抵抗してみせても、はしたなく反り返った肉棒のせいですべての言葉に説得力がない。

「なんだ、立派なもんじゃないか……」

 唐突に、慎也が言う。

 何が立派なんだ。何を、あなたは見ているんだ――。そんな疑問をひとつも解決してくれないまま、慎也は星の秘孔に中指を滑り込ませた。

「はぁっ、あんっ、あ……っ!」

 何の前触れもなく、慎也の爪がやわらかな肉を切り刻んでいく。

「ふ、あっ、あっ、あああ……っ」

 いくらネコ専とはいえ、こんなことをされるのは2年ぶりだった。ろくにほぐされてもいないそこに指を入れられても、あるのは痛みと違和感だけ。

「痛い、痛いって……」

 なじりながらも、星は腰を浮かせてしまう。そうすることで痛みが多少はやわらぐことを、星は経験から学んでいた。

「今日、慣らしてきた?」

 慎也に問われ、今日立ち寄ったドラッグストアの情景が広がった。コンドームやテンガと同じ棚に並んでいたローション――。今になって、なぜあれを買っておかなかったのか、猛烈な後悔が襲ってきた。

「ならして……ない……」

 そう言いながら、星は慎也のほうを見た。惨めな開脚を強いながら、星の股座をまさぐる慎也の姿は、あまりにシュールだ。ぬぷ、ぬぷ、と淫らな音を立てながら隘路を広げるその姿を見ながら、ひょっとしたらこの部屋のどこかにローションがあるのでは、と星は期待した。

「苦しい?」

 そう聞かれて、なんだか嫌な予感がした。慎也の目には残酷な光が浮かんでいて、星の要求とは別の何かを考えていそうだったから。

「可愛い」

 ほら、またも思ってもみないことを、彼は言う。

「もっと、苦しんで」

 下半身に、焼けるような感覚が走る。

「あっ、いっ、いぃいぃいいいいいいいいっ……」

 歯を食いしばり、意味のない言葉をめちゃくちゃに吐く。

 口から涎がだらだらと零れ、それを吸う余裕すらない。

 隘路を穿つ指は増えていた。恐らく人差し指から薬指までの3本が、根元まで突き刺さっている。

「ふぅっ、うっううううう……」

 直腸の容量などとっくに超えている。それなのに、慎也は星がのたうつ様を楽しむかのように、肉壺を破壊しにきていた。

「割れるっ、われるぅ~~~~~~~~っ!!!!!!!」

 苦しくて、どうにかこの責めから逃れたくて腰を浮かせ、背を反らせた。

 しかし、それがいけなかった。

 慎也は左手で星の太腿を抱え、そのまま下半身を持ち上げた。

「ひっ、ひぃ……っ」

 ろくな抵抗もできないまま、左脚を慎也の肩に担ぎ上げられる姿勢になる。

「うっ、あっ、あああああああ……っ」

 こんなに嫌だと言っているのに、こんなに苦しんでいるのに、内股をぱっくりと開き、自分から局部をさらすような格好をしてしまう。

「いや、みな、いでぇ……」

 しかし、星が悲鳴を絞り出すたびに、指責めは苛烈さを増していく。

 腸壁を擦られ、指のはらでぬらぬらと嬲られる――。

 ぬぷぬぷといやらしい音が絶え間なく鳴り響く。それなのに慎也の指の動きは繊細だった。ピアノの鍵盤を叩くように指を動かされ、遠い昔に開発された部分をとんとんと叩いていく。

「ひっ、ひゃっ、ひゃあああああ……っ」

 通り過ぎたかと思ったらまた訪れる、嵐のような愛撫に星は無意識のうちに腰を揺らしていた。

(だめ、くる……くる……)

 体の、奥の奥にある、小さな熱の塊。

 男の本能をつかさどるそれが、星にもわからないほど深いところで沸き立っているのを感じる。

「だめ、だめぇ……っ」

「だめ? じゃあ、やめる?」

 意地悪く、慎也が問いかけてくる。

 甘く、残酷な声。それは星の耳から脳を貫き、彼の思考という思考をぐちゃぐちゃにする。

「いやぁ、とんとん、とんとん、やめないでぇ……」

 下半身を無理に持ち上げられているせいで、半ば宙づりになったような姿勢で、星は答えた。声を出すと、お腹が痛い。でも、もっと犯されたくて、もっと嬲られたくて、淫らな言葉が口から零れ出す。

「とんとん、欲しい?」

「ほし……い、も、っとぉ……」

「可愛い子」


(可愛い……? 俺が?)


 こんなあられもない痴態を晒して、恥ずかしいところを全部見せて――。そんな自分が「可愛い」なんてこと、あるのだろうか?

 だが、たとえ嘘でも嬉しかった。慎也の意識に、一瞬でも自分が入り込めれば、それだけで犯されがいがあるというものだ。


 そのとき、肉の奥で3本の指がぐる、とうねった。

 弱いところを、ぎゅう、と押し込められ、全身から脂汗が滲み出る。

「ひっ、ぐ、ぐぅぅううううう……」

 どくん、どくん、と欲望が脈打ち、自分ではどうやっても制御できない。

「とんとん好きだろ? とんとん、とんとんとん」

 どうして、慎也は自分の体のことをこんなによく知っているのだろう?

 どうして、自分はこんなにも慎也の手で乱されてしまうのだろう。

「はぁ、うっ、うあ、あぁぁ……っ」

 ふわ、ふわ、と下半身から快楽が押し寄せてくる。

 底なしの官能に支配され、体からどんどん力が抜けていく。なのに、自分の肉棒だけは、燃えるように熱い。犯される屈辱は快楽と絡み合い、壮絶なパワーをともなって星の体を駆け抜けた。

(いく、いく、いく……っ)

 本能の源が、下半身から一気に押し寄せてくる。激しく揺さぶられ、星は一切の抵抗ができない。もう、男の本能に身を委ねるしかなかった。

「あっ、あああああっ、ああああああ~~~~~~~~~っ」

 情けない、恥ずかしい、でも、気持ちよくてどうにかなりそうだ――。

 すべてに屈服した瞬間、星のペニスは勢いよく白濁を吐き出した。

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