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第8話 焼き鳥

大扉に向かって歩いていると、道中に治癒の花を4つ見つけて摘み取った。

そして大扉に到着してくぐり抜けると、また同じ探索者協会のスタッフが出迎えた。

再び探索者カードを渡すと、スタッフの男性が探索者カードを端末に通しながら、にこやかに声をかけてきた。


「お疲れ様です。順調に探索できましたか?」


「まぁ平原だけですけど、それなりに」


俺は軽く頷いて返す。


「良いことです。これからも頑張ってくださいね」


「ありがとうございます」


探索者カードを受け取り、ダンジョン入口を離れていく。そしてダンジョンドローンをオフにしてリュックにしまうと、俺はドロップ品の買取所へと向かった。

そこは大きな倉庫のような場所で、中に入ると、十数台のベルトコンベアと、タッチパネルが取り付けられた端末台がある大部屋にきた。

人がいる様子がない、完全にセルフなのか?


俺は受付台の前まで行ってタッチパネルを操作してみると、取扱説明というのがあったので見てみる。


「えーっと…まず探索者カードを入れて、現金かダンジョンポイントで受け取るかを選ぶ。

そして台の横に置いてある板にダンジョンの物を置いてベルトコンベアの上に置いて、ベルトコンベアにあるボタンを押す…依頼の物がある場合は自動で納品扱いとなる…

あれ、それだけか」


せっかくだし、ダンジョンポイントで受け取ってみよう。ダンジョンポイントは探索者専用のスマホから確認できるみたいだな。

俺は探索者カードを端末台に挿入すると、タッチパネルを操作してダンジョンポイントでの受け取りを選択する。

すると『売却するものをベルトコンベアの上に置いてください』と表示された。


「ゴブリンの魔石はダンジョンドローンのためにとっておくかな」


そう呟きながら俺は黒い板を何枚かベルトコンベアの上に乗せて、手に入れた物を板の上に乗せていった。

そしてベルトコンベアにあるボタンを押すと、ベルトコンベアが稼働して運んでいった。

少し待っていると、タッチパネルに精算された物たちが表示された。


ーーーーーーーー

『スライムの魔石 』×1 

100円

『マッスルピッグの魔石』 ×1

500円

『マッスルピッグの肉 8kg』 ×1

12000円

『マッスルピッグの皮 』×1

1300円

『ゴブリンの錆びた剣』 ×3

2400円

『ゴブリンの鉄槍』 ×1

10000円

『治癒の花』 ×11

3300円


『売却費用』

−296円


合計29304円

ーーーーーーーー


「おぉ……結構いくんだな」


思わず声が漏れた。

スライムの魔石はともかく、マッスルピッグの肉が思った以上に高く売れている。それに鉄槍もかなりの値段だ。

これがほんの3時間の稼ぎと考えれば十分だろう。

タッチパネルに表示されている【確定】ボタンを押すと、機械が軽く振動してダンジョンポイントが加算されたことを知らせるメッセージが流れる。


「うーん、探索者になった感じがしますな」


そんな自己満足を呟きながら、探索者カードを機械から抜き取った。

探索者専用のスマホから確認してみると、無事29304ポイントが加算されていた。

調べてみると、ポイントは探索者関連の店や対応している店舗で使えるようだ。

探索者協会で現金として受け取ることもできるみたいだから、結構便利だな。


端末台を離れ、出口に向かう。外に出ると、まだ昼前だが探索者たちが続々と行き交っていて活気づいていた。

俺はどこかで軽く飯でも食べることにした。


近くの屋台が並んでいる場所に足を運ぶと、香ばしい匂いが漂ってきた。

焼き鳥、たこ焼き、ホットドッグ…小腹を満たすにはちょうどいいものばかりだ。

俺は一番空いていそうな焼き鳥屋台に向かった。屋台の親父が、手際よく串を炙りながら声をかけてくる。


「おう兄ちゃん。探索帰りか?」


「そうですね。焼き鳥、三本ください」


「へいよっ!」


ジュウッといい音を立てながら、肉の脂が炭火に滴る。

出来上がるのを待っていると、俺はそこでこの焼き鳥が1本2000円だということに気が付いて目をひん剥いた。

説明を見てみると、どうやら職業が料理人の方のようで、作った料理に疲労回復の効果が乗っているらしい。


(まぁ、疲れてる俺にはちょうど良いか…)


そう考えて無理矢理自分を納得させる。ただ次からは値段を見てから買うと心に決めた。

焼き鳥三本を受け取ると、探索者スマホで決済して近くにあったベンチに腰を下ろした。


焼き鳥を一本手に取り、恐る恐るかぶりつく。

途端に、口の中いっぱいに濃厚な旨味が広がった。肉は柔らかく、噛むたびにじゅわっと肉汁が溢れ出す。

炭火の香ばしさと、絶妙な塩加減が食欲を刺激して、あっという間に一本目を平らげていた。


「…うまっ。これが2000円の味か」


思わず呟きながら、二本目に手を伸ばす。

不思議なことに、体の芯に溜まっていた重だるさがすっと消えていく。

疲労回復の効果ってこういう感じで効くんだな。


二本、三本と一気に食べきった頃には、体が軽くなったような感覚すら覚えた。

ティッシュで唇を拭いながら、俺はベンチでくつろぐ。


「この後どうするかなぁ」


そう思ってゆっくりしていると、俺はふと依頼のことを思い出して探索者専用のスマホを開いて依頼を確認してみた。

初心者向けの納品依頼でもあればいいけど…


スマホの画面をスクロールしていく。どうやら探索者のクラスによって受けられる依頼が決まっているようで、G級では受けられる依頼も少ないな。


そして目に留まったのは【治癒の花 納品依頼】だった。

要求数は10個、報酬は5000円分のダンジョンポイント、期限は3日以内だった。


「うわぁ、タイミング悪…もう売っちゃったよ」


ダンジョンに入る前に依頼も確認したほうが良いんだな。

俺は治癒の花の納品依頼を受けて、ダンジョン入口に向けて歩き出した。

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