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第29話 武器とスキル

土曜日、荒野での俺と一之瀬さんの採掘は、最終的に話題も出尽くして、しりとりを永遠として終わった。

そして肝心な報酬は、俺は23万で総重量が115kg、この時点で俺が受けた依頼の分は達成したことになる。

一之瀬さんは26万で総重量が121kgだった、この日だけで半分以上は達成したわけだな。


そして日曜日、俺たちはまたひたすらに採掘をし続け、早めに切り上げた15時頃には一之瀬さんの依頼も達成した。


俺と一之瀬さんは売却所から出て、大通りに向かって歩いていく。


「いやぁ~、だいぶ頑張ったね。いくらぐらい稼げた?」


「100万ちょっとかしらね…鈴木くんは?」


「俺も同じぐらい…てかパーティー登録してるんだから同じか」


「……確かにそうね。ダメだわ、頭が働いてない」


「ハハ!疲れたね〜。一応、俺は先週稼いだ分も入れたら120万ぐらいにはなるのかな?スキルスクロールと武器、どっちから見に行く?」


「そうね…まずは武器を見に行きましょう」


「オッケー」


俺たちは歩いて、スキルスクロール販売所の隣にある武器屋に向かった。

そこもまたガラス張りの大きな建物で、入口には数人の警備員がいる。


建物の中に足を踏み入れると、ひんやりとした空気と、金属の匂いが鼻をかすめた。天井から下がるLEDの光が、整然と並べられた武器たちを照らしている。


そしてスキルスクロール販売所と同じように、監視カメラがいたるところにあり、中でも警備員が複数人いる。

ここも武器がEランクからAランクで分けられており、その中でもダンジョンからドロップした武器と素材から作られた武器なんかで分かれているようだ。


「ギリギリDランクでも買えそうだけど、スキルスクロールも買いたいもんね」


「そうね。Eランクの武器を見に行きましょう」


俺たちはEランク武器のコーナーへと向かった。そこは他のランクに比べて人が多く、俺たちと同じくらいの探索者たちが熱心に品定めをしている姿が目立った。

そしてEランクの武器はガラスケースに入っていなく、自由に試していいみたいだ。


「私は斧を見てくるわね」


「オッケー」


一之瀬さんは斧のエリアへと向かっていった。

俺も剣のエリアへと向かう。そこでは様々な種類の剣が置いてあった。

片手剣、両手剣、湾曲したサーベルに、刺突に特化したレイピアまで、それぞれに素材名や特徴が丁寧に記載された札が下げられている。

今までは短剣を使ってきたわけだが、サーベルなんかも良いなと思えてくる。

そこに置いてあったサーベルは聖鉄製のようで、軽量+頑丈、なおかつアンデッド系の魔物に少しだけ効力が上がるそうだ。


他にもゴブリンからドロップする錆びた剣を鍛え直した物や、重鋼玉で作られた威力重視の大剣なんかもあり、見ていてなかなか楽しい。


そんな風に悩んでいると、一之瀬さんがこちらにやってきた。


「ん、早いね。決まったの?」


「ええ、もう買ったわ」


「か、買ったのか…早すぎない?」


「というか、すぐに良さそうなのが見つかったのよね。重鋼玉の斧なのだけれど」


「はーなるほど、たしかに戦士だったら最適な武器かもなぁ。いくらぐらいした?」


「35万ね。結構いい重さしてたから、これからは盾をなくして斧だけでやってみようかと思うわ。

そっちはまだ迷ってるの?」


「うん、今までは短剣メインだったけど、今回で変えてみようかなと思ってて。このサーベルが気になってるんだよね」


俺は聖鉄製のサーベルを指差す。


「聖鉄製ねぇ…盗賊のあなたとも相性が良さそうじゃない」


「そうそう、軽いからね。しかも見た目も好きなんだよな〜」


俺はうっとりとサーベルを眺める。

細身の刃は聖鉄特有の白色に、ほんのりと青みがかった光沢がある。柄の部分も装飾が控えめだ。


手に取ってみると、重さは今まで使っていた短剣よりも少しだけ重い。振ってみると重心のバランスが絶妙で、腕に自然と馴染んでくる。


「やっぱこれだな。値段は30万か」


「それにするの?」


「そうだね。これにする」


俺は呼び出しボタンを押すと、スタッフがやってきて、ダンジョンポイントで聖鉄のサーベルを購入した。

俺と一之瀬さんは武器屋から出る。


「次はスキルスクロールね」


「うん。めっちゃ真隣だけど」


俺と一之瀬さんは隣にあるスキルスクロール販売所へと入ると、一之瀬さんは近接攻撃スキルの方へと向かった。俺は自己強化のエリアへ行く。


ガラスケースの中に入るEランクのスキルスクロールを眺めていると、お目当てのものが見つかった。

それは"気配遮断"だ、値段も変わらず21万、まだ残っていたようで良かった。

俺は呼び出しボタンを押した。そして気配遮断を購入して、スキルスクロールを使用し、無事気配遮断を獲得した。


俺は一之瀬さんがいる近接攻撃の方へ行くと、そこには1つのスキルスクロールの前で悩んでいる一之瀬さんがいた。

一之瀬さんも俺に気が付く。


「あら、今度は鈴木くんのほうが早いのね」


「うん、というか決まってたようなもんだし。気配遮断を買ったんだ」


「あぁ、前回諦めたやつ」


「そうそう。一之瀬さんは何悩んでるの?」


「このスキルを買おうか悩んでるんだけど、これ買ったら他のは買えなそうなのよね」


俺は気になってそのスキルスクロールの説明を見てみる。


《ビーストクロー 52万円》

【分類:任意発動】【射程:2m程度】

気力を消費して、自身の手から斬撃を放つ。

ステータスの力によって威力が増減。


「な、なんだこれ。気力を消費するのに、力で威力が変わるんだ」


「そう、面白いでしょう?調べた感じ、最近発見されたスキルみたいなのよね」


「え、なにそれ。めちゃくちゃ良いじゃん、買いじゃない?」


「うーん…他にも回避系のスキルとか、補助系も気になってたから…一つに絞るってなると、つい慎重になっちゃうのよね」


一之瀬さんは腕を組んでスキルスクロールをじっと見つめている。


「まぁでも、結局は攻め手を増やしたほうが火力でゴリ押せる場面も多いだろうしなぁ」


俺がそう呟くと、一之瀬さんはくすっと笑った。


「そうね。戦士だと、どうしても正面からの殴り合いになっちゃうし」


「うん。それと、斧を振りながら片手で斬撃を放つ一之瀬さん、めちゃくちゃ格好良さそうだけど」


「フフッ、何よそれ。まぁ、配信映えも大事か……よし、これにしましょう」


一之瀬さんも呼び出しボタンを押して、スキルスクロールを購入して、ビーストクローを獲得した。

一之瀬さんは満足気な顔をしている。


「鈴木くんは他に何を買うの?」


「あとは斬撃強化だね。超一般的な近接スキル」


「なるほど」


俺と一之瀬さんは近接攻撃のエリアで探し回り、斬撃強化を見つけ出した。


《斬撃強化 25万円》

【分類:任意発動】

自身が持つ剣などの斬撃を強化する。

一度斬撃が命中すると効果が切れる。


「これだね」


俺は例のごとく呼び出しボタンを押し、スキルスクロールを購入して斬撃強化を獲得した。

スキルスクロールを購入し終えた俺たちは店から出て、並んで歩く。


「いやぁ~、この2日の稼ぎでスキルと武器が買えて最高だね」


「ええ。頑張った甲斐があったわ」


駅に向かって2人で歩く。一之瀬さんもどこか嬉しそうだ。

すると、一之瀬さんが少し気恥ずかしそうにこちらを見る。


「……その、誘ってくれてありがとね」


「いやいや! こちらこそ"来てくれてありがとう"だよ!

一之瀬さんがいてくれたおかげで、1人でやってるときよりも楽しかったよ、ホントに」


「フフッ、それなら良かったわ」


2人で談笑しながら歩いていると、あっという間に駅に着いてしまった。


「それじゃ、また明日学園で」


「うん。またね」


お互いに手を振り合って別れる。俺はバスに乗らずに、歩いて家に向かった。

採掘で疲れているはずだったが、一之瀬さんと友達らしいことが出来ていることが嬉しく、ご機嫌な俺の足取りは軽かった。

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