どうやら、僕は夢を見ているらしかった。
それが夢であることは、ちゃんと分かっていた。
吹雪いている。
けど、不思議なことに寒くはなかった。
僕は俯いて座り込んでいる。
顔を上げるとカラスが居た。
『不可色……』
『……』
その名前で、カラスが呼ぶとは珍しい。
いや、そうか。これは夢だった。
でも、一応否定しようとしたが。
口が開けない。自分の身体を自分で動かせない。
『不可色が、何をどれだけ無くしても、捨てても、僕はずっと不可色のそばに居るからさ』
『……』
あぁ。
そうか。
夢っていうのは、記憶だったんだっけな。
『だからさ、また一から探せばいいよ、集めればいいよ、ううん、僕が居るから百からだね、ぬるま湯でしょ』
『……』
何か。
言えよ、僕。
『約束するよ、必ず、僕の最後まで不可色のそばに居るから』
『……』
そんな約束はしない方がいい。
させない方がいい。
そういった約束は、必ず、報いを受ける。
選択を間違わせる。
最後まで、付き合わせるのか。
お前が、一番知ってるだろ。
けど、僕の身体は今、僕のものじゃない。
カラスに手を伸ばして、小指を交わして。
過去は変えられない。
そもそもこれは夢だ、関係ない。
夢だ。