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第48話 『悪夢』

 どうやら、僕は夢を見ているらしかった。

 それが夢であることは、ちゃんと分かっていた。

 吹雪いている。

 けど、不思議なことに寒くはなかった。


 僕は俯いて座り込んでいる。

 顔を上げるとカラスが居た。


『不可色……』

『……』


 その名前で、カラスが呼ぶとは珍しい。

 いや、そうか。これは夢だった。

 でも、一応否定しようとしたが。

 口が開けない。自分の身体を自分で動かせない。


『不可色が、何をどれだけ無くしても、捨てても、僕はずっと不可色のそばに居るからさ』

『……』


 あぁ。

 そうか。

 夢っていうのは、記憶だったんだっけな。


『だからさ、また一から探せばいいよ、集めればいいよ、ううん、僕が居るから百からだね、ぬるま湯でしょ』

『……』


 何か。

 言えよ、僕。


『約束するよ、必ず、僕の最後まで不可色のそばに居るから』

『……』


 そんな約束はしない方がいい。

 させない方がいい。

 そういった約束は、必ず、報いを受ける。

 選択を間違わせる。


 最後まで、付き合わせるのか。

 お前が、一番知ってるだろ。


 けど、僕の身体は今、僕のものじゃない。

 カラスに手を伸ばして、小指を交わして。

 過去は変えられない。

 そもそもこれは夢だ、関係ない。

 夢だ。








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