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第十三話 素体完成

 屋敷からポーシェさまや使用人達も出てきて大騒ぎになりました。

 ドラゴンに何もされてないことを説明して、ポーシェさま以外は元の仕事に戻ってもらいます。


 わたくしの身体に張り付いているスライム。  

 彼か彼女かは不明ですが、精神感応にて意思のやり取りが出来ることに気がつきました。


「すごいねレイテアちゃん。ドラゴンから精神感応を授かるとはね。御伽噺の登場人物みたいじゃないか」


 ポーシェさまも、夢の中でのやり取りをお話ししたところ、たいそう驚いておられました。


(スライムさん、ドラゴンさんがあなたの為に前脚をくださいました。それを取り込んで空腹を癒してください。そして人形ひとがたゴーレムの筋肉組織となって欲しいのです)


 瞬時に私わたくしの身体から離れ、ドラゴンの前脚へ飛び移った“考えるスライム”さん。

 今は手のひらに乗る大きさですが、はてどうなるのでしょう。


 翌朝。

 お父さま、お母さまには話していたので騒ぎにはなりませんでしたが、工房の前には人だかりができていました。

 すっかり大きくなったスライムさんを囲んでいます。


 ドラゴンさんの前脚はなくなっていて、代わりに大人が四人がかりで持ち上がるかどうかの大きさになったスライムさん。


『レイテアちゃん、ガードのおやっさんとこへ運ぼう。道中でレイテアちゃんの身体構造を教えてそれを模倣してもらうんだ。感覚器官もね。逆に内臓や心臓などの循環器系は省略だ』

(おじさまの方が詳しいのでは?)

『あ! そうか。俺も意思疎通できるかな』


 試してみたところ、おじさまもスライムさんと意思のやり取りが出来ました。

 おじさまが詳しくスライムさんに教えています。


(おじさまって医師さまに見せてもらった本よりも詳しい図が頭にあるんですね)

『あーあれだ。大学生の時までマンガ、こっちで言う絵物語を描いててな。人体を正確に描くためにその手の本を買って模写したからだよ』

(だからお詳しいのですね。絵師もやっていたのですか)

『単なる趣味さ。まっ後々になって色々と役に立ったけどな。自分の身体がどういう作りをしてるかを知るのは大事なことなんだよ』



 お父さまに公爵軍より騎士を手配していただき、荷車にスライムさんを乗せて出発です。

 私カシアとポーシェさまも一緒です。

 ガードさんからは骨格は完成したとの連絡は受けていますので、ポーシェさま、カシアと一緒に馬車で向かいます。

 心踊るのが止められません。


「お嬢様、ある程度のことは教えてくださいましたが、カシアにはまだよくわかりません」

「見ればすぐわかるよ、カシアちゃん」


 ポーシェさまは笑顔でカシアと話しています。

 わたくし達は幼少の頃よりポーシェさまに可愛いがっていただきましたね。


 工房へ着くとすぐに大きな建物へ案内されました。


「お嬢様、こちらへ。描いてもらった図の通りに出来たと思いまさぁ」


 ガードさんが指さす方に巨大な骨格がありました。人骨というものは怖い話に出てきたりして不気味だと思っていましたが……今目の前にあるものは……なんでしょうか……美しい造形だと感じました。


 美しく感じた要素のひとつ、ハルミヤという金属の放つ淡い青色の光沢。他の金属とは全く趣きが違います。


 ガードさんにスライムさんの説明をしますと、


「正直どうやるのかさっぱりわからなかったが、なるほどスライムねぇ」


 としきりに感心してます。

 騎士達がスライムさんを運び、ハルミヤ製の骨格へ乗せるとたちどころに広がり、全体を覆いつつ、これぞれの部位を形成し始めました。


『あっ、レイテアちゃん! 人払いするか大きな布持ってきてもらって!』

(おじさま、なぜですか?)

『このままだと全裸のレイテアちゃんが! どーんと!』

(服も再現するように伝えていますから)

『……それならセーフか。その服ならパンツも見えないだろうし』


 終わったようです。

 わたくし達の前には巨人が寝ています。

 服も完全に再現して。


「お、お嬢さま?!」

「とてもゴーレムには見えない!」

「こりゃたまげた。こんなスライムがいたなんて」


 ポーシェさまもガードさん、工房の職人さん達、騎士達も驚きを隠せません。


『お? 髪の毛は金色だな』

わたくしを模倣したはずなのに)

『あ! あれか? ドラゴンの前脚を食べたから? 真っ白だっただろ?』

わたくしの髪の色とドラゴンさんの白を混ぜたのでしょうか)

『多分そうだよ。顔は……レイテアちゃんそのものだね』


 その後はおじさまの考案した鎧の意匠をわたくしがガードさんに伝えます。


「まるで女騎士みたいな感じですな。ハルミヤならすぐに加工出来ますんで、三日後には仕上げます」

「色は白でお願いします」

「塗装には時間かかりますんで、じゃ五日後で」

「よろしくお願いしますわ」


『レイテアちゃん、コックピットは俺に任せてもらえるか?』

(こっくぴっと……とは?)

『操縦席のこと。レイテアちゃんが乗り込む場所さ。前に言ったろう? レイテアちゃん自身がゴーレムの中に入って思い通りに動かすんだ』

(はい! 覚えています)

『まさにレイテアちゃんとこのゴーレムが一体化するのさ』


 まさに御伽噺に登場くる戦女神みたいです。

 おじさまの世界ではそのようなゴーレムがたくさんの物語に登場するそうです。


 おじさまがスライムさんに教えています。

 まぁ胸が開いて、そこへわたくしが入るのですね。


『“考えるスライム”、こいつはとんでもない生物だ。古代の超文明の遺産とかじゃないよな』

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