教室に入ると、すでに何人かのクラスメイトが席についていた。窓際の席で本を読んでいる
「よう」
「おはよう、晴翔」
直人は本から目を離さずに挨拶を返した。
「また難しそうな本を読んでるね」
美羽が直人の本を覗き込む。『
「興味ある? 貸してあげるよ」
「えー、遠慮しとくよ! 私には難しすぎる〜」
「そうかな? 晴翔は読んでみない?」
直人が晴翔に本を差し出す。
「今度にするよ。今は小説読んでるし」
「相変わらず、SF小説か?」
「うん、
直人は満足そうに頷いた。
「なるほど。君らしい選択だ」
この何気ない会話も、普段と変わらない日常の一部だった。
チャイムが鳴り、担任の
「では出席を取るぞ」
名前を呼ばれるたび、教室に「はい」という声が響く。
「
「はい」
「
「はーい!」
いつもと変わらない朝。ただ、晴翔の胸の奥に何かが引っかかる感覚があった。朝、天音が話していた夢の話だろうか。
「なんだろう...この違和感」
窓の外を見ると、雲一つない青空が広がっていた。あまりにも鮮やかで、現実離れした青さ。
晴翔は空を見上げたまま、つぶやいた。
「今日は、いつもと少し違う気がする...」
そんな予感は、この後すぐに現実となる。
だが、その時の晴翔には、まだ何も分からなかった。