校庭の円は完全な幾何学的形状を保っていた。草が丁寧に編み込まれたような不思議な模様が浮かび上がり、円の中心には何もない空間が広がっていた。
「これって...」
「みんな下がって! 危険かもしれないから近づかないで!」
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「うん...でも、これ...」
天音は小さな声で言った。
「昨日の夜、夢の中で見たの」
晴翔は息を飲んだ。
「夢で...見た?」
「うん。空から地面を見下ろして...円を描くように飛んだの」
晴翔は周囲を見回した。誰も彼らの会話に耳を傾けていない。みんな奇妙な円形の模様に夢中だ。
「お姉ちゃん、今日は帰ろう。このままいても...」
「そうだね...」
二人が静かに校庭を離れようとしたとき、突然、校内放送が鳴り響いた。
『緊急連絡です。ただいま気象庁から
放送が終わると、生徒たちの間に歓声と困惑が入り混じった反応が広がった。
「やったー! 午後休みだ!」 「でも、原因不明の現象って怖くない?」 「UFOの仕業じゃない?」
様々な憶測が飛び交う中、晴翔は天音の手を取った。
「行こう」
「うん...」
天音はふらつく足取りで、晴翔に支えられながら校門へと向かった。美羽も心配そうに二人の後を追いかけてきた。
「先輩、本当に大丈夫ですか? 送っていきましょうか?」
「ありがとう、美羽ちゃん。でも、晴翔がいるから...」
「そうですか...」
美羽は少し不満そうな顔をしたが、すぐに明るい笑顔に戻した。
「じゃあ、また明日ですね! お大事に!」
美羽が手を振って別れると、姉弟は静かに帰路についた。