叶絵が去った後、リビングには重い沈黙が流れた。
「神...だって?」
天音が呟いた。彼女の声は信じられないという感情に満ちていた。
「お姉ちゃん...」
「冗談じゃないよ、そんなの...」
天音は急に立ち上がり、窓に向かって歩いた。外では、空の異変が続いていた。虹色の
「でも、これを見ると...」
天音は自分の手を見つめた。
「本当に私のせいなのかな...」
晴翔は姉の隣に立った。
「どう思う? 信じる? あの人の話」
天音はしばらく考え込んでから、小さく頷いた。
「信じたくないけど...ここ数日の出来事を考えると...」
彼女は手を伸ばし、空に向けて掌を開いた。すると、驚くべきことに、彼女の指先から小さな光の粒子が舞い上がった。まるで美しい火花のように。
「わっ!」
天音は慌てて手を引っ込めた。光の粒子はすぐに消えたが、二人の心に残した衝撃は大きかった。
「やっぱり...本当なんだ」
天音は震える声で言った。
「神様...私が?」
晴翔は姉の肩に手を置いた。
「どんな状況でも、お姉ちゃんはお姉ちゃんだよ。それだけは変わらない」
「でも、普通じゃなくなっちゃった...」
「普通って何? そもそも、完全に普通な人なんていないよ」
晴翔は明るく振る舞おうとした。
「それに、考えてみれば超能力って憧れる人も多いんじゃない?」
「でも、あの人が言ってたよ。私の力は危険だって...」
天音の表情が曇った。
「力をコントロールできなくなったら...世界に災厄をもたらすって...」
晴翔は叶絵が置いていった装置を見つめた。銀色の小さな箱。
「大丈夫だよ。俺がついてるから」
「本当に?」
「当たり前じゃん。お姉ちゃんのそばにいるのが弟の仕事だし」
ほんの少し、天音の表情が和らいだ。
「ありがとう...」
「それより、お腹すいたでしょ? 何か作ろうか」
「うん...」
晴翔は明るく振る舞いながらも、心の中では不安が渦巻いていた。神? 旧神? 神狩り? 信じがたい話だが、姉の能力は現実に目の前で起きている。