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第13話

叶絵が去った後、リビングには重い沈黙が流れた。


「神...だって?」


天音が呟いた。彼女の声は信じられないという感情に満ちていた。


「お姉ちゃん...」


「冗談じゃないよ、そんなの...」


天音は急に立ち上がり、窓に向かって歩いた。外では、空の異変が続いていた。虹色のもやは薄まるどころか、より鮮やかになっているように見える。


「でも、これを見ると...」


天音は自分の手を見つめた。


「本当に私のせいなのかな...」


晴翔は姉の隣に立った。


「どう思う? 信じる? あの人の話」


天音はしばらく考え込んでから、小さく頷いた。


「信じたくないけど...ここ数日の出来事を考えると...」


彼女は手を伸ばし、空に向けて掌を開いた。すると、驚くべきことに、彼女の指先から小さな光の粒子が舞い上がった。まるで美しい火花のように。


「わっ!」


天音は慌てて手を引っ込めた。光の粒子はすぐに消えたが、二人の心に残した衝撃は大きかった。


「やっぱり...本当なんだ」


天音は震える声で言った。


「神様...私が?」


晴翔は姉の肩に手を置いた。


「どんな状況でも、お姉ちゃんはお姉ちゃんだよ。それだけは変わらない」


「でも、普通じゃなくなっちゃった...」


「普通って何? そもそも、完全に普通な人なんていないよ」


晴翔は明るく振る舞おうとした。


「それに、考えてみれば超能力って憧れる人も多いんじゃない?」


「でも、あの人が言ってたよ。私の力は危険だって...」


天音の表情が曇った。


「力をコントロールできなくなったら...世界に災厄をもたらすって...」


晴翔は叶絵が置いていった装置を見つめた。銀色の小さな箱。


「大丈夫だよ。俺がついてるから」


「本当に?」


「当たり前じゃん。お姉ちゃんのそばにいるのが弟の仕事だし」


ほんの少し、天音の表情が和らいだ。


「ありがとう...」


「それより、お腹すいたでしょ? 何か作ろうか」


「うん...」


晴翔は明るく振る舞いながらも、心の中では不安が渦巻いていた。神? 旧神? 神狩り? 信じがたい話だが、姉の能力は現実に目の前で起きている。


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