朝の光が窓から差し込む頃、
「神...か」
言葉にすると、いっそう非現実的に感じられる。晴翔はベッドから起き上がり、窓の外を見た。空の異変は続いていた。虹色の
「それにしても、何でお姉ちゃんなんだ...」
天音はいつも通りの女子高生だ。確かに優しくて、思いやりがあって、周りから好かれる存在。でも、「神」に選ばれるほど特別な存在だとは思ってもみなかった。
時計は六時半を指していた。いつもより早い。晴翔は静かに部屋を出て、廊下に立った。隣の部屋からは物音一つしない。天音はまだ眠っているようだ。
「今日は起こさないでおこう」
そっと階段を下り、キッチンへ向かった。今日は自分が朝食を用意しよう。姉を少しでも安心させたかった。
食パンをトーストし、スクランブルエッグを作り、コーヒーを入れる。いつもより丁寧に、愛情を込めて。
「なんだか新婚の夫みたいだな」
自分の考えに苦笑する。こんな状況でも冗談が浮かぶのは、緊張からかもしれない。
朝食の準備が整った頃、階段の上から足音が聞こえた。
「晴翔...?」
眠そうな声で天音が呼んだ。
「おはよう、お姉ちゃん。朝ごはん作ったよ」
天音はパジャマ姿のまま階段を下りてきた。髪は少し乱れていて、目元には疲れの色が見える。
「ありがとう...でも、なんでこんなに早くに?」
「今日は特別だからね」
それ以上の説明は必要なかった。二人とも、昨日の出来事を鮮明に覚えている。
天音はテーブルに座り、コーヒーに手を伸ばした。カップを持ち上げようとした瞬間、彼女の手が震え、コーヒーがテーブルにこぼれた。
「あっ...ごめん」
「大丈夫だよ」
晴翔はすぐにキッチンペーパーを取って拭き始めた。天音の手がまだ震えているのが見える。
「昨日のこと、考えてたの?」
「うん...」
天音は俯いた。
「私、学校行くべきかな...」
「行こう」
晴翔はきっぱりと言った。
「でも...」
「普通の生活を送るって決めたんだろ? だったら、普通に学校に行くべきだよ」
天音は迷いながらも、小さく頷いた。
「そうだね...あの人も言ってたもんね。自覚すればするほど力が強くなるって。だから普通の女子高生として過ごすのが一番」
「そういうこと」
晴翔は姉の前にトーストとスクランブルエッグを置いた。
「食べて。今日はきっと長い一日になるから」