その夜、晴翔は奇妙な夢を見た。
広大な空間に立っている。足元には雲が広がり、頭上には無数の星。重力を感じないまま、彼は虚空に浮かんでいた。
「ここは...」
彼の声が
『選ばれし者の番人よ』
声はあらゆる方向から聞こえてきた。
「誰だ?」
『我らは天秤。均衡を司る存在』
晴翔の周りを光の粒子が舞い始めた。
『汝の姉は新たな神となった。だが、不完全な状態』
「不完全...?」
『力を恐れ、受け入れぬ者は完全なる神とはなれず』
晴翔は混乱した。
「お姉ちゃんが神なんて望んでない! もとの普通の女子高生に戻してくれ!」
光の粒子が渦を巻き、一点に集中していく。
『それは不可能。選定は覆らず』
「でも...」
『されど、道は一つに非ず』
光の渦が人の形を取り始めた。輪郭は定まらないが、威厳ある存在感がある。
『彼女を導くのは汝の役目。神として全てを掌握するか、人として神を超えるか』
「人として神を超える...?」
『道は開かれた。選ぶのは汝ら』
光の形が崩れ始め、晴翔の視界が霞んでいく。
『覚えておけ。彼女の力は愛より生まれた。愛こそが鍵』
「待って! もっと教えて...!」
しかし、光は完全に消え、晴翔の意識も闇に沈んでいった。