登校途中、二人は静かに歩いていた。通りがかる人々が空を見上げ、スマホで写真を撮っている。虹色の
「みんな、慣れてきてるみたいだね」
天音が空を見上げながら言った。
「そうだね。人間って順応性があるんだな」
「でも、これって私のせいなんだよね...」
「気にしないで。誰も困ってるわけじゃないし、むしろ綺麗だって言ってる人も多いよ」
天音は小さく微笑んだ。
「そっか...」
二人が校門に近づくと、見慣れた元気な声が聞こえてきた。
「おはよーっ!」
「天音先輩、朝霧くん、おはようございます!」
「おはよう、美羽ちゃん」
「よう」
美羽は二人の顔を交互に見た。
「なんか今日、二人とも雰囲気違いますね! 特に天音先輩、なんだか輝いてる!」
天音は少し驚いた表情になった。
「そ、そう?」
「うん! なんていうか...自信があるというか...」
美羽は言葉を探しながら続けた。
「あ! 恋でもしてるんですか?」
「え!? そ、そんなことないよ!」
天音が慌てて否定すると、美羽はくすくす笑った。
「冗談ですよ〜。でも本当に素敵ですね、今日の先輩」
三人で校門をくぐると、校庭で騒ぎが起きていた。
「どうしたんだろう?」
人だかりができている。中心には
「あれ、望月くんじゃない」
美羽が首を傾げた。
「昨日、彼のおかげで助かったんだ」
晴翔が小声で天音に言った。蓮との会話は美羽には伏せておきたかった。
「行ってみよう」
三人が近づくと、蓮は話をやめ、晴翔たちの方を向いた。
「来たね、
蓮の声は柔らかいが、どこか
「おはよう、望月」
晴翔が声をかけると、蓮はふわりと微笑んだ。
「大丈夫だった? 昨日のこと」
「ああ...助かったよ。ありがとう」
「なに? 何があったの?」
美羽が不思議そうに尋ねる。
「ちょっとした
蓮は軽く答え、天音に視線を移した。
「君こそ大丈夫?
天音は少し緊張した様子で頷いた。
「はい...ありがとうございます」
蓮は周囲をさっと見回し、小声で言った。
「放課後、話があるんだ。屋上で待ってるよ」
そして、彼は人混みの中に消えていった。残されたのは困惑する三人だ。
「あの...何があったんですか? 昨日」
美羽が真剣な表情で尋ねた。
「実は...」
晴翔は言葉につまった。全てを話すわけにはいかない。
「ちょっと不良に絡まれて、望月が助けてくれたんだ」
「え!? 大丈夫だったんですか? どうして言ってくれなかったんですか!?」
美羽の声が大きくなる。心配してくれるのはありがたいが、これ以上質問されるのは困る。
「大したことなかったから。それより、授業始まるよ」
晴翔は話題を変え、教室へと向かった。美羽は納得していない様子だったが、それ以上追求はしなかった。
「また後でね、お姉ちゃん」
天音に別れを告げ、晴翔は自分のクラスへと向かった。教室に入ると、
「よう」
「ああ、朝霧」
直人は本から顔を上げ、眼鏡を上げた。
「昨日はすまなかった。急に話を切り上げて」
「いや...こっちこそ、隠し事をして悪かった」
直人はしばらく晴翔を観察し、静かに言った。
「朝霧...君は何か抱え込んでいるだろう。無理に話す必要はないが、手伝えることがあれば言ってくれ」
その申し出に、晴翔は心動かされた。
「...ありがとう」
教室の後ろのドアが開き、蓮が入ってきた。彼は晴翔と目を合わせ、かすかに頷いた。
チャイムが鳴り、授業が始まった。