家に着くと、珍しく両親が揃って帰宅していた。
「ただいま」
「おかえり、晴翔、天音」
「今日は珍しいね、母さん早いの」
「ええ、今日は特別にね。あの空の影響で早めに帰ってくるよう言われたの」
純子は窓の外の虹色の空を見た。
「不思議よね、この現象。気象庁も原因不明って言ってるそうだけど」
晴翔と天音は顔を見合わせた。両親には何も話していない。
「あ、お父さんは?」
「リビングでテレビ見てるわよ」
リビングに行くと、
「おお、晴翔、天音。おかえり」
「ただいま、お父さん」
誠司はニュースを見ていた。画面では
『...気象庁は引き続き原因を調査中ですが、健康への影響はないと発表しています。また、この現象は
晴翔は緊張した。限定的な現象だということは、ますます天音との関連が疑われる。
「不思議だな、この現象」
誠司は空を見上げた。
「でも、きれいじゃないか。神秘的で」
「そうだね...」
晴翔は曖昧に答えた。
「お前たち、最近変わったことはないか?」
突然の質問に、晴翔は驚いた。
「へ? 何が?」
「いや、なんとなくだが...特に天音、何か雰囲気が違うような気がするんだ」
天音は焦った様子で答えた。
「そ、そんなことないよ、お父さん。いつも通りだよ」
誠司はしばらく天音を見つめ、やがて笑った。
「そうか。父親の勘違いかな」
晴翔は冷や汗をかいた。父は鋭い。何か感じ取っているのかもしれない。
「晴翔、天音、ご飯できたわよ〜」
純子の声が台所から聞こえた。
「行こう」
四人家族での夕食。久しぶりのことだった。普通の家族の、普通の時間。しかし、晴翔と天音の心は複雑だった。この日常が、いつまで続くのだろうか。