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第29話

夕食後、晴翔は自室で蓮から教わったことをまとめていた。神の力、予知能力、神狩り組織...現実とは思えない情報の数々。


ノックの音がして、ドアが開いた。天音だ。


「入っていい?」


「うん」


天音は晴翔のベッドの端に腰掛けた。


「今日は大変な一日だったね」


「そうだね...」


「でも、少し前向きになれた気がする」


天音は窓の外を見た。夜空に浮かぶ虹色のもやが、星々を神秘的に照らしている。


「この力を恐れるだけじゃなくて、上手く使えるようになりたいな」


晴翔は姉を見つめた。昨日までの怯えた表情はなく、代わりに決意の色が浮かんでいた。


「蓮くんの言ってたこと、試してみたの」


「え? もう?」


「うん、さっき自分の部屋で...小さな物を浮かせてみたんだ」


天音は嬉しそうに手を広げた。


「上手くいったよ。鉛筆を浮かせて、回転させて...」


「お姉ちゃん...」


晴翔は心配と誇らしさが入り混じった気持ちになった。


「無理しないでね」


「うん、少しずつやるよ。蓮くんも言ってたでしょ? 力を理解することが大事だって」


確かにその通りだ。しかし、叶絵の警告も気になる。どちらが正しいのか。


「そうだね...でも、もし何か異変を感じたら、すぐに言ってね」


「もちろん」


天音は微笑んだ。


「晴翔がいてくれて、本当に良かった」


「俺こそ...お姉ちゃんみたいな姉がいて幸せだよ」


二人は静かに笑い合った。窓の外では、星々が虹色に輝いていた。


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