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第30話

翌朝、晴翔が目を覚ますと、すでに天音は起きていた。昨日と同じように朝食の準備をしている音が聞こえる。


「お姉ちゃん、おはよう」


「あ、晴翔。おはよう!」


天音は元気よく応えた。テーブルには朝食が並んでいる。


「今日も作ってくれたんだ」


「うん。昨日、喜んでくれたから」


二人は朝食を取りながら、今日の予定を確認した。


「今日も一緒に登下校しよう」


「うん。それと...放課後、少し練習したいな、この力」


天音は決意を込めて言った。


「蓮くんに教わったことを試してみたいの」


晴翔は少し迷ったが、姉の成長を応援したいという気持ちが勝った。


「分かった。でも、人目につかない場所でね」


「もちろん!」


朝の準備を終え、二人は家を出た。虹色の空は相変わらずだが、もう周囲の人々は慣れたように見える。スマホで写真を撮る人も少なくなっていた。


「みんな、すっかり慣れちゃったね」


天音が空を見上げながら言った。


「人間って順応性があるからね」


「私も...少しずつ慣れてきたかも」


天音は自分の手を見つめた。


「この力を持って生きていくってことに」


晴翔は姉の成長を感じた。最初の混乱と恐怖から、少しずつ前に進んでいる。


「一歩一歩だね」


「うん!」


二人が校門に近づくと、いつものように美羽が駆け寄ってきた。


「おはよー!」


「おはよう、美羽ちゃん」


三人で校内に入ると、蓮が待っていた。


「やぁ、おはよう」


「おはよう、蓮くん」


蓮は二人に近づき、小声で尋ねた。


「昨日、会った?」


晴翔は頷いた。


「ああ。君の言った通り、アルバという男に」


「何かあった?」


「いや、話をしただけだ。でも、明らかに俺たちのこと、特にお姉ちゃんのことを知っていた」


蓮は思案顔で頷いた。


「そう...でも攻撃はなかったんだね」


「うん」


「それは良かった」


美羽が好奇心いっぱいの表情で三人を見ていた。


「何の話してるんですか? 私も混ぜてよ〜」


晴翔は咄嗟に言い訳を考えた。


「あ、いや...今度のテスト対策の話で...」


「えー、それなら私も入れてよ! 特に数学、全然分かんないんだから!」


四人は笑いながら教室へと向かった。


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