翌朝、晴翔が目を覚ますと、すでに天音は起きていた。昨日と同じように朝食の準備をしている音が聞こえる。
「お姉ちゃん、おはよう」
「あ、晴翔。おはよう!」
天音は元気よく応えた。テーブルには朝食が並んでいる。
「今日も作ってくれたんだ」
「うん。昨日、喜んでくれたから」
二人は朝食を取りながら、今日の予定を確認した。
「今日も一緒に登下校しよう」
「うん。それと...放課後、少し練習したいな、この力」
天音は決意を込めて言った。
「蓮くんに教わったことを試してみたいの」
晴翔は少し迷ったが、姉の成長を応援したいという気持ちが勝った。
「分かった。でも、人目につかない場所でね」
「もちろん!」
朝の準備を終え、二人は家を出た。虹色の空は相変わらずだが、もう周囲の人々は慣れたように見える。スマホで写真を撮る人も少なくなっていた。
「みんな、すっかり慣れちゃったね」
天音が空を見上げながら言った。
「人間って順応性があるからね」
「私も...少しずつ慣れてきたかも」
天音は自分の手を見つめた。
「この力を持って生きていくってことに」
晴翔は姉の成長を感じた。最初の混乱と恐怖から、少しずつ前に進んでいる。
「一歩一歩だね」
「うん!」
二人が校門に近づくと、いつものように美羽が駆け寄ってきた。
「おはよー!」
「おはよう、美羽ちゃん」
三人で校内に入ると、蓮が待っていた。
「やぁ、おはよう」
「おはよう、蓮くん」
蓮は二人に近づき、小声で尋ねた。
「昨日、会った?」
晴翔は頷いた。
「ああ。君の言った通り、アルバという男に」
「何かあった?」
「いや、話をしただけだ。でも、明らかに俺たちのこと、特にお姉ちゃんのことを知っていた」
蓮は思案顔で頷いた。
「そう...でも攻撃はなかったんだね」
「うん」
「それは良かった」
美羽が好奇心いっぱいの表情で三人を見ていた。
「何の話してるんですか? 私も混ぜてよ〜」
晴翔は咄嗟に言い訳を考えた。
「あ、いや...今度のテスト対策の話で...」
「えー、それなら私も入れてよ! 特に数学、全然分かんないんだから!」
四人は笑いながら教室へと向かった。