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第34話

昼食後、蓮は一人で屋上に残った。他の三人は既に教室に戻っている。


彼は手のひらを空に向かって広げた。すると、指先から淡い光が漏れ出した。


「やはり...強まっている」


蓮はつぶやいた。天音の力が日に日に増していることを感じ取れる。それは素晴らしいことでもあり、危険なことでもある。


「このままじゃ...」


彼の思考は、背後から聞こえた声で中断された。


「何してるの?」


振り返ると、美羽が立っていた。彼女はドアの陰から出てきたところだ。


「美羽...」


「手、光ってたよね?」


蓮は一瞬動揺したが、すぐに平静を取り戻した。


「見えたの?」


「うん。天音先輩の周りの光と同じ...」


美羽は蓮に近づいた。彼女の目は好奇心で輝いている。


「教えて。あの光、何なの? 天音先輩と望月くんと...これ全部繋がってるよね?」


蓮はため息をついた。


「鋭いね、君は」


「だって! 最近おかしいもん。空が変色して、天音先輩が光り始めて、朝霧くんがソワソワして...」


美羽の勢いに、蓮は少し押され気味だ。


「それに、」


美羽は真剣な表情になった。


「前に朝霧くんと天音先輩が不良に絡まれたって言ってたけど、本当は違うでしょ?」


「...」


「私、友達だよ? 心配してるの」


蓮は少し考え込んだ後、空を見上げた。


「美羽...君は天音先輩や晴翔くんのことが好きなんだね」


「え?」


唐突な言葉に、美羽は少し戸惑った。


「もちろん好きだよ。友達だもん」


「そう...」


蓮は優しく微笑んだ。


「じゃあ、少しだけ話そうか。でも、全ては言えないよ。それは彼らが決めることだから」


美羽は頷いた。


「分かった。でも、危険なことなら教えて。協力したいから」


蓮は静かに説明を始めた。


「天音先輩には...特別な力があるんだ。それが、君が見ている光」


「特別な力...超能力みたいな?」


「そうとも言えるかな。でも、まだ彼女自身もよく分かっていない」


「朝霧くんも知ってるの?」


「うん。彼は天音先輩を守ろうとしている」


美羽はしばらく考え込んだ。


「あの時の不良って...」


「本当は別の何かだったんだ。詳しくは言えないけど」


「危険なの?」


蓮は真剣な表情になった。


「うん。だから僕たちは天音先輩を守っている」


「私も手伝う!」


美羽は迷わず言った。


「私も天音先輩のこと、大事だから!」


蓮は少し驚いたように美羽を見つめ、やがて微笑んだ。


「ありがとう。でも、まずは彼らの了解が必要だよ」


「分かった。言わない方がいいなら、黙ってるね。でも...」


美羽は決意を込めた表情で言った。


「もし何かあったら、絶対に助ける!」


蓮はその強い意志に感心したような表情を浮かべた。


「美羽...君は素直だね」


「え?」


「心がまっすぐで...素晴らしいよ」


美羽は少し照れたように頬を赤くした。


「そ、そんなことないよ...」


「いや、本当だよ」


蓮は真剣な表情で言った。


「だからこそ、君の力も必要になるかもしれない」


「私の力?」


「うん。純粋な心は、時に最強の武器になる」


美羽には蓮の言葉の深い意味は分からなかったが、なぜか心が温かくなるのを感じた。


「分かった! 任せて!」


二人は微笑み合い、教室へと戻る準備をした。美羽の中に、新たな決意が芽生えていた。


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