一方、2年3組の教室では、天音が窓際で物思いにふけっていた。彼女の机の上には、小さなノートが開かれている。そこには彼女の夢の記録が書かれていた。
(昨日の夢...また空を飛んだ...)
彼女は自分の能力について考え始めていた。恐怖は少しずつ薄れ、代わりに好奇心と責任感が芽生えてきている。
「天音」
呼びかけられて顔を上げると、同じクラスの
「あ、理子ちゃん」
「授業始まるよ」
「うん、ありがとう」
理子は天音のノートに目をやった。
「何を書いてるの?」
「え?」
天音は慌ててノートを閉じた。
「ちょっと...日記みたいなもの」
「そう...」
理子は少し不満そうな表情を浮かべた。
「最近、朝霧くんとよく一緒にいるわね」
「え? ああ、うん...」
「弟さんだっけ?」
「そうだよ。晴翔は私の弟」
理子は何か言いたげな表情をしていたが、言葉を飲み込んだ。
「そう。気にしないで」
そう言って、理子は自分の席に戻った。天音は少し首を傾げた。
(理子ちゃん、何だったんだろう...)
教室の後ろのドアが開き、担任の先生が入ってきた。授業が始まる。
天音はそっとノートをしまい、教科書を開いた。しかし、彼女の心の中は別のことで一杯だった。
(この力...どうすれば上手く付き合っていけるんだろう...)
空を見上げると、虹色の
(私の思いが、世界を変えているなんて...)
そんなことを考えているうちに、彼女の周りの空気が微かに揺らめいた。机の上の鉛筆が、ほんの少しだけ浮き上がる。
「!」
天音は慌てて鉛筆を押さえた。幸い、誰も気づいていないようだ。
(危なかった...集中しないと)
彼女は深呼吸して、授業に意識を戻そうとした。でも、その顔には小さな笑みが浮かんでいた。
(少しずつ、コントロールできるようになってきたかも)
教室の窓から差し込む光が、天音の姿を優しく包み込んでいた。まるで、彼女の新たな一歩を祝福するかのように。