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第38話

朝日が妙典みょうでんの街を照らし始めた頃、朝霧あさぎり天音あまねは既に目を覚ましていた。彼女は窓辺に立ち、虹色に染まる空を見上げている。


(昨日のアルバの言葉...本当かな)


彼女は自分の手のひらを見つめた。指先から微かな光が漏れている。最近、この力のコントロールが少しずつ上手くなってきた。でも、まだまだ分からないことだらけだ。


「天音、起きてる?」


ドアの向こうから朝霧あさぎり晴翔はるとの声がした。


「うん、起きてるよ」


ドアが開き、晴翔が顔を出した。彼の表情は少し疲れているように見える。


「よく眠れた?」


「まあまあかな」


天音は微笑んだが、その目は少し不安げだ。


「晴翔...昨日のこと、考えてた?」


「ああ、アルバの件か」


晴翔は部屋に入り、椅子に腰掛けた。


「正直、罠な気がするんだ。あいつを信用する理由がない」


「うん...でも...」


天音は窓の外を見た。


「この力、もっと知りたいんだ。蓮くんも言ってたけど、コントロールできないと危険だって」


「それなら蓮に教えてもらえばいいじゃないか。わざわざ敵の言うことを聞く必要はない」


「そうだね...」


天音は少し考え込んだ後、決意を固めたように顔を上げた。


「今日、蓮くんに相談してみる。それで判断するね」


晴翔はほっとした表情を浮かべた。


「そうだな。蓮なら信頼できる...と思う」


「思う?」


「いや、まだ彼のことも完全には分からないけどさ。少なくともアルバよりは信用できる」


天音はクスリと笑った。


「もう、疑り深いんだから」


「だって、お姉ちゃんを守るのが俺の役目だから」


その言葉に、天音の表情が柔らかくなった。


「ありがとう...でも、私も晴翔を守りたいんだ」


彼女の手から、ふわりと光の粒子が舞い上がった。美しい光だが、同時に神秘的な力を感じさせる。


「だから、この力をちゃんと理解したいの」


晴翔は黙って頷いた。姉の決意を、彼は尊重することにした。


「分かった。でも無理はしないでくれよ」


「うん。約束する」


兄妹の間に、静かな理解が流れた。


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