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第39話

妙典南高校みょうでんみなみこうこうでは、教室の中が何やら騒がしかった。生徒たちが窓に集まり、何かを指さしている。


結城ゆうき美羽みうは好奇心いっぱいの表情で、その輪の中に割り込んだ。


「ねえねえ、何見てるの?」


クラスメイトの一人が振り返った。


「ほら、校庭に変なの出来てるよ」


美羽は窓から身を乗り出して見た。校庭には、奇妙な模様が浮かび上がっている。前に出現した円形の模様とは違い、今度は複雑な幾何学模様きかがくもようだ。まるで巨大な万華鏡まんげきょうを見ているかのよう。


「うわぁ...綺麗...」


美羽が感嘆の声を上げると、後ろから冷静な声がした。


「またか」


振り返ると、鴻上こうがみ直人なおとが立っていた。いつもの冷静な表情だが、目はやや真剣さを増している。


「鴻上くん、知ってるの?」


「いや、前回の円と同じ現象だろうと推測しているだけだ」


直人は眼鏡を上げながら言った。


「でも、前回より複雑な形状だな」


美羽は再び校庭を見た。確かに、前回の単純な円とは違い、今回の模様には様々な線や形が織り込まれている。


「これって...誰かが作ったのかな?」


「さあ...」


直人は曖昧に答えた。しかし、その目はすでに何かを察しているようだ。


教室のドアが開き、朝霧あさぎり晴翔はるとが入ってきた。彼の表情は少し緊張しているように見える。


「朝霧くん! 見て見て!」


美羽は興奮気味に晴翔の腕を引っ張った。


「校庭に変な模様ができてるよ!」


晴翔は窓から外を見て、息を飲んだ。


「これは...」


彼の顔から血の気が引いていく。明らかに動揺している。


「朝霧、知ってるのか?」


直人が静かに尋ねた。晴翔は我に返ったように首を振った。


「いや...何だろう、これ」


美羽は疑わしそうに晴翔の顔を見た。彼が何かを隠していることは明らかだ。


「朝霧くん...」


そのとき、教室の後ろのドアが開き、望月もちづきれんが入ってきた。彼も窓の外を見て、一瞬表情を固くした。


「蓮くん!」


美羽が声をかけると、蓮は平静を装って微笑んだ。


「おはよう」


「見て! 校庭に変な模様が!」


「ああ...」


蓮は意味ありげに晴翔と目を合わせた。二人の間に、無言の会話が流れる。


「美羽」


蓮が声をかけた。


「うん?」


「この後、屋上で話そうか。朝霧くんも」


「え?」


美羽は驚いたが、すぐに状況を理解した。


「あ、うん! 直人くんも来る?」


直人は少し考え、頷いた。


「構わないが...何の話だ?」


蓮は微笑むだけで答えなかった。


チャイムが鳴り、生徒たちは席に戻り始めた。しかし、校庭の模様についての噂は、すぐに学校中に広がっていった。


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