「ねえねえ、何見てるの?」
クラスメイトの一人が振り返った。
「ほら、校庭に変なの出来てるよ」
美羽は窓から身を乗り出して見た。校庭には、奇妙な模様が浮かび上がっている。前に出現した円形の模様とは違い、今度は複雑な
「うわぁ...綺麗...」
美羽が感嘆の声を上げると、後ろから冷静な声がした。
「またか」
振り返ると、
「鴻上くん、知ってるの?」
「いや、前回の円と同じ現象だろうと推測しているだけだ」
直人は眼鏡を上げながら言った。
「でも、前回より複雑な形状だな」
美羽は再び校庭を見た。確かに、前回の単純な円とは違い、今回の模様には様々な線や形が織り込まれている。
「これって...誰かが作ったのかな?」
「さあ...」
直人は曖昧に答えた。しかし、その目はすでに何かを察しているようだ。
教室のドアが開き、
「朝霧くん! 見て見て!」
美羽は興奮気味に晴翔の腕を引っ張った。
「校庭に変な模様ができてるよ!」
晴翔は窓から外を見て、息を飲んだ。
「これは...」
彼の顔から血の気が引いていく。明らかに動揺している。
「朝霧、知ってるのか?」
直人が静かに尋ねた。晴翔は我に返ったように首を振った。
「いや...何だろう、これ」
美羽は疑わしそうに晴翔の顔を見た。彼が何かを隠していることは明らかだ。
「朝霧くん...」
そのとき、教室の後ろのドアが開き、
「蓮くん!」
美羽が声をかけると、蓮は平静を装って微笑んだ。
「おはよう」
「見て! 校庭に変な模様が!」
「ああ...」
蓮は意味ありげに晴翔と目を合わせた。二人の間に、無言の会話が流れる。
「美羽」
蓮が声をかけた。
「うん?」
「この後、屋上で話そうか。朝霧くんも」
「え?」
美羽は驚いたが、すぐに状況を理解した。
「あ、うん! 直人くんも来る?」
直人は少し考え、頷いた。
「構わないが...何の話だ?」
蓮は微笑むだけで答えなかった。
チャイムが鳴り、生徒たちは席に戻り始めた。しかし、校庭の模様についての噂は、すぐに学校中に広がっていった。