放課後、五人は予定通り中央階段に集合した。そこへ、
「あら、天音」
「あ、理子ちゃん」
天音は少し驚いた様子で応えた。
「どうしたの?」
「いえ...朝霧くんを探してたの」
理子は晴翔を見た。彼女の表情には何か言い表せない感情が浮かんでいる。
「朝霧くん、ちょっといいかしら?」
「え? 今ちょっと...」
晴翔は困惑した表情を見せた。
「大事な話があるの」
理子の声には強い意志が感じられた。
「あの...」
天音が困ったように兄を見た。晴翔は少し考え、頷いた。
「分かった。少しだけなら」
「晴翔...」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。すぐ戻るから」
「...うん」
晴翔は理子と少し離れた場所へ移動した。残された四人は気まずそうに立っていた。
「天音先輩、千早さんって...?」
美羽が小声で尋ねた。
「私のクラスメイト。真面目で優秀な子」
「晴翔くんと...何か関係あるの?」
「さあ...」
天音も首を傾げた。
一方、少し離れた場所では——
「それで、何の話?」
晴翔が尋ねると、理子はまっすぐに彼を見つめた。
「朝霧くん、最近変わったことが多いわね」
「え?」
「空の色が変わり、校庭に奇妙な模様が現れ...そして、あなたのお姉さんの周りに時々光が見える」
晴翔は息を飲んだ。理子にも見えているのか。
「何が言いたいんだ?」
「あなたたち、何かを隠してるでしょう?」
理子の鋭い目が、晴翔を見据えている。
「私...朝霧くんのこと、前から気にかけてたの」
彼女の頬がうっすらと赤くなった。
「だから、何か危険なことに関わってるなら...心配だわ」
晴翔は困惑した表情を浮かべた。彼女の気持ちが予想外だったのだ。
「理子さん...」
「私にも話して。力になれるかもしれないわ」
真剣な眼差しに、晴翔は迷った。どこまで話すべきか...
「ごめん、今は話せないんだ」
「どうして? 信用できないから?」
「そうじゃない。ただ...危険かもしれないんだ」
理子はしばらく黙っていたが、やがて決意を固めたように言った。
「分かったわ。でも、何かあったら必ず言って。私...朝霧くんのこと...」
彼女は言葉を飲み込み、小さく頭を下げた。
「ごめんなさい、迷惑だったわね」
そう言うと、理子は急いで立ち去った。
晴翔は複雑な表情で彼女の背中を見送った後、仲間たちの元へ戻った。
「何の話だったの?」
天音が心配そうに尋ねた。
「いや...なんでもない」
晴翔は曖昧に答えた。理子の気持ちをどう受け止めればいいのか、まだ整理できていない。
「それより、これから何処へ行く?」
蓮が話題を変えた。
「人目につかない場所が必要だ」
「じゃあ、河川敷の下はどう?」
美羽が提案した。
「あ、でも、そこはアルバが...」
「違う場所にしよう」
晴翔が即答した。
「学校の裏手、使われていない倉庫はどうだろう」
直人が提案した。
「誰も来ないはずだ」
「それがいいね」
五人は学校の裏手へと向かった。その頃、校門の前には黒いスーツを着た女性が立っていた。
「来るかしら...アルバ」
彼女の手には、何か特殊な装置が握られていた。