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第42話

放課後、五人は予定通り中央階段に集合した。そこへ、千早ちはや理子りこが近づいてきた。


「あら、天音」


「あ、理子ちゃん」


天音は少し驚いた様子で応えた。


「どうしたの?」


「いえ...朝霧くんを探してたの」


理子は晴翔を見た。彼女の表情には何か言い表せない感情が浮かんでいる。


「朝霧くん、ちょっといいかしら?」


「え? 今ちょっと...」


晴翔は困惑した表情を見せた。


「大事な話があるの」


理子の声には強い意志が感じられた。


「あの...」


天音が困ったように兄を見た。晴翔は少し考え、頷いた。


「分かった。少しだけなら」


「晴翔...」


「大丈夫だよ、お姉ちゃん。すぐ戻るから」


「...うん」


晴翔は理子と少し離れた場所へ移動した。残された四人は気まずそうに立っていた。


「天音先輩、千早さんって...?」


美羽が小声で尋ねた。


「私のクラスメイト。真面目で優秀な子」


「晴翔くんと...何か関係あるの?」


「さあ...」


天音も首を傾げた。


一方、少し離れた場所では——


「それで、何の話?」


晴翔が尋ねると、理子はまっすぐに彼を見つめた。


「朝霧くん、最近変わったことが多いわね」


「え?」


「空の色が変わり、校庭に奇妙な模様が現れ...そして、あなたのお姉さんの周りに時々光が見える」


晴翔は息を飲んだ。理子にも見えているのか。


「何が言いたいんだ?」


「あなたたち、何かを隠してるでしょう?」


理子の鋭い目が、晴翔を見据えている。


「私...朝霧くんのこと、前から気にかけてたの」


彼女の頬がうっすらと赤くなった。


「だから、何か危険なことに関わってるなら...心配だわ」


晴翔は困惑した表情を浮かべた。彼女の気持ちが予想外だったのだ。


「理子さん...」


「私にも話して。力になれるかもしれないわ」


真剣な眼差しに、晴翔は迷った。どこまで話すべきか...


「ごめん、今は話せないんだ」


「どうして? 信用できないから?」


「そうじゃない。ただ...危険かもしれないんだ」


理子はしばらく黙っていたが、やがて決意を固めたように言った。


「分かったわ。でも、何かあったら必ず言って。私...朝霧くんのこと...」


彼女は言葉を飲み込み、小さく頭を下げた。


「ごめんなさい、迷惑だったわね」


そう言うと、理子は急いで立ち去った。


晴翔は複雑な表情で彼女の背中を見送った後、仲間たちの元へ戻った。


「何の話だったの?」


天音が心配そうに尋ねた。


「いや...なんでもない」


晴翔は曖昧に答えた。理子の気持ちをどう受け止めればいいのか、まだ整理できていない。


「それより、これから何処へ行く?」


蓮が話題を変えた。


「人目につかない場所が必要だ」


「じゃあ、河川敷の下はどう?」


美羽が提案した。


「あ、でも、そこはアルバが...」


「違う場所にしよう」


晴翔が即答した。


「学校の裏手、使われていない倉庫はどうだろう」


直人が提案した。


「誰も来ないはずだ」


「それがいいね」


五人は学校の裏手へと向かった。その頃、校門の前には黒いスーツを着た女性が立っていた。


叶絵かなえだ。彼女の鋭い目は、学校の敷地を監視している。


「来るかしら...アルバ」


彼女の手には、何か特殊な装置が握られていた。


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