「お腹すいたでしょ? 何か作るよ」
晴翔が台所に向かった。
「私が作るよ」
天音が弟を制した。
「大丈夫? 無理しないで」
「うん、動いた方がいいの。考えすぎないように...」
晴翔は理解したように頷いた。
「じゃあ、手伝うよ」
兄妹は一緒に夕食の準備を始めた。いつもの日常の光景。しかし、二人の心の中は複雑な思いで一杯だ。
「ねえ、晴翔...」
天音が野菜を切りながら言った。
「うん?」
「私のせいで...みんなを危険な目に遭わせてる...」
「だから、自分を責めないでってば」
晴翔はお湯を沸かしながら答えた。
「みんな自分の意志でついてきてるんだよ」
「でも...」
「みんな、お姉ちゃんのことを心配してるんだ。特に美羽なんて、すごく熱心じゃない」
「うん...美羽ちゃん、元気をくれるね」
天音は少し微笑んだ。
「それに直人くんも意外だった。あんなに感情的になるなんて...」
「ああ、あいつにしては珍しかったよね」
二人は少し笑った。緊張が少しほぐれる。
「蓮くんも...私のために...」
「蓮は...謎が多いけど、信頼できる奴だと思う」
晴翔は真剣な表情で言った。
「こんな友達がいるんだから、一人で抱え込まなくていいんだよ」
「そうだね...」
天音は包丁を置き、深呼吸した。
「明日、みんなと一緒に考えよう。この力のこと...地震のこと...全部」
「そうだな」
鍋のお湯が沸騰し始めた。湯気が立ち上る。
「あ、お湯が沸いた」
晴翔がパスタを入れようとしたとき、突然強い揺れが襲った。
「うわっ!」
野菜が転がり、調味料の瓶が倒れる。二人は咄嗟に壁につかまった。
「地震...!」
数秒間の強い揺れ。今までの
揺れが収まると、二人は顔を見合わせた。
「これは...」
天音の顔から血の気が引いた。
「私のせい...?」
晴翔は否定したかったが、言葉が出てこない。この状況は、明らかに天音の力と関係がありそうだ。
「とにかく、まずは夕食を済ませよう」
彼は冷静を装った。
「それから、叶絵さんにもう一度連絡してみる」
「うん...」