目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第47話

朝霧あさぎり家に戻った天音と晴翔。家には誰もいない。両親はまだ帰っていないようだ。


「お腹すいたでしょ? 何か作るよ」


晴翔が台所に向かった。


「私が作るよ」


天音が弟を制した。


「大丈夫? 無理しないで」


「うん、動いた方がいいの。考えすぎないように...」


晴翔は理解したように頷いた。


「じゃあ、手伝うよ」


兄妹は一緒に夕食の準備を始めた。いつもの日常の光景。しかし、二人の心の中は複雑な思いで一杯だ。


「ねえ、晴翔...」


天音が野菜を切りながら言った。


「うん?」


「私のせいで...みんなを危険な目に遭わせてる...」


「だから、自分を責めないでってば」


晴翔はお湯を沸かしながら答えた。


「みんな自分の意志でついてきてるんだよ」


「でも...」


「みんな、お姉ちゃんのことを心配してるんだ。特に美羽なんて、すごく熱心じゃない」


「うん...美羽ちゃん、元気をくれるね」


天音は少し微笑んだ。


「それに直人くんも意外だった。あんなに感情的になるなんて...」


「ああ、あいつにしては珍しかったよね」


二人は少し笑った。緊張が少しほぐれる。


「蓮くんも...私のために...」


「蓮は...謎が多いけど、信頼できる奴だと思う」


晴翔は真剣な表情で言った。


「こんな友達がいるんだから、一人で抱え込まなくていいんだよ」


「そうだね...」


天音は包丁を置き、深呼吸した。


「明日、みんなと一緒に考えよう。この力のこと...地震のこと...全部」


「そうだな」


鍋のお湯が沸騰し始めた。湯気が立ち上る。


「あ、お湯が沸いた」


晴翔がパスタを入れようとしたとき、突然強い揺れが襲った。


「うわっ!」


野菜が転がり、調味料の瓶が倒れる。二人は咄嗟に壁につかまった。


「地震...!」


数秒間の強い揺れ。今までの微震びしんとは明らかに違う。


揺れが収まると、二人は顔を見合わせた。


「これは...」


天音の顔から血の気が引いた。


「私のせい...?」


晴翔は否定したかったが、言葉が出てこない。この状況は、明らかに天音の力と関係がありそうだ。


「とにかく、まずは夕食を済ませよう」


彼は冷静を装った。


「それから、叶絵さんにもう一度連絡してみる」


「うん...」


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?