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第51話

一方、妙典みょうでんの町の中心部では、地震の被害調査が行われていた。小さな亀裂が入った建物や、落下した看板などが目立つ。


幸い、大きな被害や人的被害はなかったが、住民たちの不安は高まっている。特に、空の異変と地震の関連性を疑う声も出始めていた。


「あの空のせいじゃないか?」 「政府は何か隠してるんじゃないのか?」 「宇宙人の仕業だ!」


様々な憶測が飛び交う中、ある場所では別の動きがあった。


町はずれの古い神社。そこの境内けいだいでは、黒いスーツを着た数人の男女が集まっていた。彼らの胸には、天秤てんびんのマークが付いている。


「叶絵は?」


一人の男が尋ねた。


「朝霧家に行ったそうです」


女性が答えた。


「彼女は観察派の意見を支持しているようですね」


「まったく...新たな神を放置するなど、愚の骨頂だ」


男は苛立ちを隠さなかった。


「排除すべきだ。特に今回のケースは危険度が高い」


「でも、組織内での意見対立も深刻です」


女性は心配そうに言った。


「完全抹殺派と観察派での内部分裂は避けたいところですが...」


「それより、イシュタリアの動きが心配だ」


別の男が口を開いた。


「旧神の覚醒は、我々の予測より早い」


「アルバの関与も確認されています」


女性が報告した。


「彼は明らかにイシュタリアの手先です」


「対応策は?」


「叶絵の報告を待ちましょう」


女性は空を見上げた。


「まだ時間はあります。『神』の完全覚醒までは...」


彼らの会話は、微震びしんによって中断された。地面が再び揺れ始めたのだ。


「また来たか...」


男が眉をひそめた。


「これが続くようなら、一般市民への影響も避けられないな」


「早く決断すべきです」


女性は真剣な表情で言った。


「天音さんを保護するか、排除するか...」


神社の鳥居とりいの上では、一羽のカラスが彼らの会話を聞いているかのように止まっていた。そのカラスの目は、妙に人間的な知性を宿しているように見えた。


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