夕方、
「朝霧くん…」
理子はスマホを握りしめていた。アルバから受け取ったカードの番号を入力するかどうか、ずっと迷っていた。
(彼が危険な目に…)
理子は天井を見つめながら、晴翔のことを思い出していた。いつも姉のそばにいる彼。特に最近は、学校でも離れることがない。
その光景を見るたびに、彼女の胸は締め付けられる思いだった。
「天音さんと朝霧くん…特別な関係なのかしら…」
彼女は小さく呟いた。兄妹以上の何かを、二人の間に感じていた。
そして、あの不思議な光。天音の周りに漂う神秘的な輝き。あれが晴翔を危険に晒しているのではないか。
「決めた…」
理子はスマホのダイヤルボタンを押した。短い呼び出し音の後、電話が繋がった。
『もしもし?』
知っている声だった。アルバだ。
「千早です。あの…お話を聞きたいと思って」
『おや、連絡くれたんだね。嬉しいよ』
アルバの声は明るく、親しげだ。
『どこで会う?』
「今から…大丈夫ですか?」
『もちろん。駅前の喫茶店でどう?』
「分かりました…」
電話を切った理子は、鏡の前に立ち、自分の表情を確かめた。決意に満ちた目が、自分自身を見つめ返している。