目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第58話

夕方、千早ちはや理子りこは自室のベッドに横たわっていた。窓から差し込む夕日と虹色の光が、部屋を幻想的に照らしている。


「朝霧くん…」


理子はスマホを握りしめていた。アルバから受け取ったカードの番号を入力するかどうか、ずっと迷っていた。


(彼が危険な目に…)


理子は天井を見つめながら、晴翔のことを思い出していた。いつも姉のそばにいる彼。特に最近は、学校でも離れることがない。


その光景を見るたびに、彼女の胸は締め付けられる思いだった。


「天音さんと朝霧くん…特別な関係なのかしら…」


彼女は小さく呟いた。兄妹以上の何かを、二人の間に感じていた。


そして、あの不思議な光。天音の周りに漂う神秘的な輝き。あれが晴翔を危険に晒しているのではないか。


「決めた…」


理子はスマホのダイヤルボタンを押した。短い呼び出し音の後、電話が繋がった。


『もしもし?』


知っている声だった。アルバだ。


「千早です。あの…お話を聞きたいと思って」


『おや、連絡くれたんだね。嬉しいよ』


アルバの声は明るく、親しげだ。


『どこで会う?』


「今から…大丈夫ですか?」


『もちろん。駅前の喫茶店でどう?』


「分かりました…」


電話を切った理子は、鏡の前に立ち、自分の表情を確かめた。決意に満ちた目が、自分自身を見つめ返している。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?